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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憤怒の災厄編
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第百三十四話・超魔獣ケルベロス



時は現在に戻り……。


ヴェロスはデビッドに言われるがまま、自らの体に魔獣化のカードを取り込んだ。

そのせいでヴェロスは苦しみもがいていた。


「うがぁぁぁぁぁぁ…… !」


ミーデはその様子を見ながら歓喜していた。


「ククク……これは面白い殺戮ショーが楽しめそうですよ」


私達は、ヴェロスが苦しむ様をただ見てることしか出来なかった。


「お兄ちゃん !お兄ちゃん !」


ルーシーは必死にヴェロスに呼び掛ける。


「ぐぅぅぅ……ウオオオオオオオオオ !!!」


ヴェロスの体に異変が起こった。

目が赤く発光したかと思えば、みるみるうちに巨大化し、50メートル程の巨人となった。


「あれこそが……魔獣としての力を解放した姿……超魔獣ケルベロス…… !」


ウオオオオオオオオオ !!!


超魔獣と化したヴェロスは雲が消し飛ぶ程の雄叫びを上げた。


「そんな……お兄ちゃん……」


ヴェロスの変わり果てた姿を目の当たりにし、ルーシーは絶望し、落胆した。

この姿になってしまえば、もう元には戻れない……ただ死を待つのみだ。


ヴェロスは理性を無くし、がむしゃらに暴れまわった。


グシャァァァン


ヴェロスは大きく腕を振り下ろし、建物を破壊し、砂のように粉砕した。

砕かれた瓦礫が辺り一面に散漫する。

三頭の凶悪な狼の首を持ち、本能のままに暴走する様ははまさに怪獣だ。


「リト……このままじゃ町が……」

「分かっています…… しかし…… !」


リトの体が透け、消えかけていた。

タイムリミットが近づいてるんだ。

ルーシーも傷を負って動けない。私やエルサも魔力をほぼ使い果たしている……。

状況は絶望的だった。


「こうなったら、あの姿になるしか無さそうですね……」


リトはヴェロスを見つめながら言った。

まさか……リトはあの姿になるつもりじゃ……。


「心配いりませんよ……。私はもう自分の闇を恐れたりしません、精神世界で仲直りしてきましたからね」


リトは私を見下ろし、ニコッと笑顔を向けた。


「しかし、早く決着がついたら良いのですが、万が一時間切れになったら元も子もありません。主、恐れ入りますが、魔力を少し分けて頂けませんか ?」

「は、はい 」


私は迷わずリトに手を差し出した。


「そういうことなら、私のも貰ってくれ、いくら残ってるか分からんが……」

「僕のも、限界まで持ってっていいよ」


リトは、私とエルサ、ルーシーから魔力を吸収した。

三人共消耗しており、与えられる魔力は微々たるものだが、それでも少しは長く活動出来るはずだ。

私達は自分達が倒れない程度の魔力をリトに分け与えた。


「皆さん、ご協力、感謝します……では !」


そう言うと、リトは拳を強く握り、大きく息を吸い込んだ。


「ヴェロスさん、あなたは力に溺れ、自分を見失っています !私も以前はそうでした……ですが今は違います !この力は、破壊する為ではなく、大切な人を守るためにあるんです !」


リトは力を込め、獣のように雄叫びを上げた。


「ウオオオオオオオオオ !!!」


リトの全身の筋肉は膨張し、髪は黒く染まり、目付きはつり上がり、凶悪な姿へと変貌した。

以前ラゴンや鎧魔獣を圧倒した禍々しい闇の姿……魔人形態である。


「なんと……自力であの姿になれるんですか……」


ミーデは驚いている様子だった。


「リト……本当に大丈夫……なんですか…… ?」


私は魔人形態に変身したリトの放つ強大なオーラを肌で感じ、圧倒されていた。

そして不安にもなった。

また暴走し、敵味方の区別がつかず周囲を破壊し尽くすんじゃないかって……。


ブォォォォォォォォ


突然ヴェロスはこちらに近付き、口から破壊光線を放った。


「うっ…… !」


私は思わず目を覆った。


ピシャアンッ


リトは私の前に立ち、片手で光線を弾いた。

光線から私を守ったんだ。


「リト……」


リトは振り向き、優しく微笑み、黙って頷いた。

凶悪な目付きだが、この時は穏やかで仏のように優しい表情に見えた。

それだけで私は確信した。今のリトは、自分の闇を克服したんだと。


ウオオオオオオオオオ


ヴェロスとリトは互いに拳を振りかざし、激突し、衝撃で空気が振動した。

超魔獣ケルベロスとリト魔人形態……。

闇に飲まれた者、闇を抱き締めた者……。

異なる道を選んだ二人の男の最後の戦いが始まった。

私達は固唾を飲んで見守っていた。


ヴェロスは豪快に腕を振り上げ、リトに向かって巨大なパンチを繰り出した。

だがリトは片手で受け止めた。

ヴェロスの腕がピクピクと震える。

リトはヴェロスの巨大な指を掴み、力任せに善方に投げ、50メートルある巨体をいとも容易く地面に叩きつけた。

倒れた衝撃で大地は揺れ、瓦礫が舞った。


「すごい……」


一同は騒然としていた。

魔人形態となったリトの怪力は凄まじく、巨人を投げ飛ばすことなど造作もない。


ウガァァァァァァァァ


ヴェロスは軽快に立ち上がり、巨大で鋭利な爪を振り回し、リトを切り裂こうとした。


ドゴオッ


だが巨人化したことで動きは大振りになり、リトには掠りもしなかった。

逆に隙を突かれ、腹に重い打撃をもらった。


涎を垂らし、悶えるヴェロス。

激昂し、口を大きく開け、リトを噛み砕こうとした。


バゴオッ


リトはヴェロスが口を閉じた瞬間に頬にパンチを喰らわせた。

牙が何本か折れ、頬は風圧でも受けたかのように醜く凹んだ。

ヴェロスはバランスを崩し、建物に激突した。

建物は崩壊し、ヴェロスは瓦礫に埋まった。

リトはダウンしたヴェロスに向けて容赦ない追撃を加える。


カァァァァァァァァ


リトは手から放つ巨大な熱線・超高熱大砲(ハイフィーバーキャノン)をヴェロスに浴びせる。

ヴェロスは全身を焼かれ、苦しそうに呻き声を上げた。


「お兄ちゃん……」


苦しむヴェロスの姿を見て、ルーシーは涙を流した。


「ルーシー……」


悲しむルーシーをエルサは優しく抱き締めた。


グガアアアアアアアア


ヴェロスは体中が黒焦げで既にグロッキー状態だった。

それでも大人しくなる気配はない。

ヴェロスは大地を蹴り、高くジャンプした。

リトはゆっくりと空を見上げた。


「何をするつもりなんですか……」

「恐らく、最後の抵抗だろう……」


エルサの予想は当たった。

ヴェロスは三頭の顔から破壊光線を地上に向けて放った。

ヴェロスの必殺技・三頭魔犬破裂光(トリニティバースト)だ。

天から放たれる光がリトのいる町全体を消し去ろうとした。

リトは大地を蹴り、高く飛び上がり、降り注ぐ光線へと向かっていった。


「ウオオオオオオオオオ !!!」


リトは拳を赤く燃え上がらせ、炎を纏った。

そして光線に飲まれるように中へ飛び込んで行った。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ


リトは光線の中を物ともせずに突きっきり、ヴェロスに接近した。


「ウオオオオオオオオオ !!!」


バゴオオオオオッ


驚愕するヴェロス。リトは灼熱の炎を纏った拳を突き出しながら特攻し、ヴェロスの腹を貫いた。

リトはヴェロスの腹からカードを抜き取り、粉々に砕いた。


ギャアァァァァァァァァ


腹に穴を開けられ、鼓膜が張り裂ける程の断末魔を上げながら、ヴェロスは空中で大爆発を起こし、地上へ落ちて消えていった。


「お兄ちゃん……お兄ちゃぁぁぁぁん !!!」


ルーシーの悲痛な叫びが町全体に響き渡った。


To Be Continued

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