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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憤怒の災厄編
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第百三十一話・魔人の炎、ケルベロスの闇



リトは精神世界での修行のことをこと細かく話してくれた。


「リトも色々大変だったんですね……」

「心が折れかかった時、主の言葉を思い出したんですよ、あの時かけてくれた言葉が、私を奮い立たせてくれたんです」


リトは私に笑顔を見せた。


「さあ主 !この私の修行の成果、見せる時が来たようですよ !」


リトはヴェロスの方へ歩いていった。


「イフリート……貴様をずっと待っていたぞ……貴様はメインディッシュ……最後のお楽しみだ」


ヴェロスは冷静ながらも心を踊らせていた。


「あなた、主にこんな怪我を負わせて、ただで済むと思わないで下さいよ」


リトの鋭い眼光がヴェロスを突き刺した。


「イフリートとケルベロス……果たして勝つのはどちらでしょうかね」


ミーデもようやく始まろうとしている大決戦を前に興奮を押さえきれずにいた。


睨み合う両者。無音の中漂う緊張感、誰もが息を飲んだ。


「来い、イフリート……」

「ではお望み通り……」


リトはヴェロスの目にも追えない程のスピードで背後に回った。


「ごきげんよう」

「俺の目にも移動したのが見えんだと…… ?」


ドカアッ


困惑するヴェロスをよそに、リトは長い足で蹴り上げ、宙に浮かした。


「うごおおおお !」

「はぁぁぁぁ !」


飛んでいくヴェロスを先回りし、リトは拳を振り上げ、地面に叩き付けた。


「あがぁぁぁぁぁぁ !」


ヴェロスは後頭部を殴られ、隕石のように地面に落下した。

衝撃で瓦礫が飛び散った。


「くっ……この俺が……速さを凌駕されるとは……」


ヴェロスは頭をおさえながらフラフラと立ち上がった。


「し……信じられません…… !あのヴェロスさんが…… !手も足も出ないとは……」


ミーデも有り得ない光景を目の当たりにし、たじろいでいた。


「そんな……お兄ちゃんが……一方的に負けてるなんて……」

「それが、リトの力さ……」


エルサとルーシーは互いに肩を支え合いながら戦いを見守っていた。


「おのれ……このケルベロスが……貴様なんぞに負けるはずがない !ウオオオオオオオオオ !!!」


ヴェロスは獣のように咆哮し、魔力を解放した。

風圧で辺りの民家が吹き飛んだ。

ヴェロスは紫色に輝く禍々しいオーラを全身に身に纏った。

凄い……。私と戦った時の比じゃない……。

悔しいけど、あの時私は手加減されていたんだ……。


「さあ、本気でやろう……イフリートォ !」


ヴェロスは手招きをし、挑発した。


「そうこなくちゃ、面白くありませんからね」


リトは余裕の表情を浮かべた。


三日月(クレッセント)光刃(スラッシュ) !」


ヴェロスは三日月状の刃を放った。


指撃火炎弾(フィンガーフレイムバレット) !」


バババババ


リトは人差し指を向け、指先から火の弾丸を数発放ち、ヴェロスの放った光刃を相殺した。


「くっ…… !ウオオオオオオオオオ !!!」


ヴェロスは牙を向き、鬼のような形相でリトに襲い掛かった。


指撃熱線(フィンガーヒート) !!!」


リトは指先から一直線に熱線を放った。

ヴェロスは風を切るように紙一重でかわす。


「ウオオオオオオオオオ !!!」


ヴェロスは音速の速さでリトに接近し、腕を大きく振り上げ、切り裂こうとした。


「がら空きですよ !」


ドゴオッ


「がはあっ !?」


リトは隙を突き、ヴェロスの腹にパンチをめり込ませた。

ヴェロスは激痛で動きが固まり、口からは涎を垂らした。


飛翔炎脚(フライブレイズ) !!!」


リトは脚に炎を纏い、ヴェロスを空高く蹴り上げた。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ヴェロスは蹴り飛ばされ、宙を舞った。

リトは見逃さず、すぐさま飛び、ヴェロスに追い付いた。


「二度もやられるか !」


ヴェロスは宙を舞いながら体勢を立て直した。


「ほう……やるじゃないですか」

「貴様ぁ !!!」


ガガガガガッ


ヴェロスは重力を物ともせず、リトに殴りかかった。

リトとヴェロスは空中で激しい殴り合いを展開した。


「す……凄い……」


私達は空を見上げ、二人の激闘の様子を眺めていた。

とてもついていけそうにない……私は目の前の光景に圧倒され、言葉を失った。


「はぁぁぁぁ !」


リトは速すぎるヴェロスの怒濤の連撃を全てかわし切った。


「そんな……何故当たらん…… !」

「私は日々進化中ですからねぇ !」


ズゴオッ


リトは炎を纏った拳を振るい、ヴェロスの顔面に強烈なパンチを喰らわせた。


「ゴハアッ !?」


再びヴェロスは隕石のように地面に思い切り叩き付けられた。

アスファルトはもうボロボロで足の踏み場が無いくらいだ。


「ば……馬鹿な……」


リトはゆっくりと地面に着地した。

修行から帰ってきて、リトは更に強くなっていた。

あのヴェロスを子供扱いするなんて……。

パワーもスピードも、以前の比ではない。

憤怒(サタン)災厄(カラミティ)のナンバーワンの強豪も、古代の魔人には敵わないのか……。


「はぁ……はぁ……弟達よ……俺に力を貸してくれ……」


突然、ヴェロスの両肩に埋め込まれた狼の瞳が発光した。


「イフリート…… !貴様は強い……だが俺は負けられない、次で決めさせてもらうぞ !」


埃だらけのヴェロスは足を踏ん張り、魔力を高め出した。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


どうやら、全ての魔力を解放し、必殺技を放つようだ。


三頭魔犬破裂光(トリニティバースト) ォォォォ!」


ヴェロスは三頭の顔から禍々しい破壊光線を吐いた。三つの光線は混ざり合い、巨大な津波となってリトを襲った。


「リト !」

「心配ご無用です !主 !」


そう言うとリトは掌を前に突き出した。


超高熱大砲(ハイフィーバーキャノン) !!!」


チュドォォォォォン


リトの掌から、高出力の極太の赤い熱線が放たれた。


「「ウオオオオオオオオオ !!!」」


ヴェロスとリトの放った光線は凄まじい威力でぶつかり合い、衝撃で大地が抉られ、瓦礫が飛び散った。


「くっ……なんて力だ……余波だけでこの影響力…… !」

「お姉ちゃん、しっかりして !」


エルサとルーシーは互いに抱き合い、耐えていた。

拮抗する両者、だが徐々にヴェロスが押されてきた。


「ぐぬぬ…… !」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


リトの放った熱線がヴェロスの放った光線を飲み込むように這い、ヴェロスを襲った。


「ぐおおおおおおおおおおおあ !!!」


ヴェロスは光線の撃ち合いに敗れ、全身に熱線を浴びてしまった。

町中にヴェロスの断末摩が響き渡った。




「はぁ……はぁ……」


煙は晴れ、全員は目を開けた。

そこには、全身を焼かれ、ボロボロの姿のヴェロスが白目を向いて立っていた。


「お兄ちゃん……」

「がはっ……」


ヴェロスは力尽き、崩れるように倒れた。


「どうやら、私の圧勝のようですね」


リトは勝ち誇り、鼻を擦りながらどや顔を決めた。


「り……リト……」


リトは疲れ果てた私の元に直ぐ様駆け付け、抱き締めた。


「主……本当に申し訳ございませんでした……私がもっと早く戻っていれば、主をこんな目に遭わせずに済んだのに……」

「リトは何も悪くないですよ……私も修行が足りなかったなぁ……なんて」


私はリトの腕の中で涙を浮かべながら微笑んだ。

やっぱりリトの中は温かい……心が落ち着く。


「主……」


リトは微かに私に微笑み返した。


「ぐぅ……俺の敗けだ……さっさと……とどめを刺せ……」


ヴェロスは仰向けになり、掠れた声で呟いた。もう動くことも出来ないだろう……。


「私は構いませんが、命を奪う行為は我が主が許さないと思いますよ」

「リト……」


ヴェロスは片手で顔を覆った。


「何を甘いことを……俺は……多くの者を殺してきた悪党だぞ……挙げ句に妹同然の奴を殺そうとした……救いようがない……屑野郎だ……生かす価値などあるものか……」


ヴェロスは可笑しそうに自嘲した。


「あの……一つ聞いても良いですか…… ?」


私はヴェロスに問いかけた。


「何だ……召喚士(サモナー)の娘……」

「どうして……人々の命を奪うんですか……そんなに人間が憎いんですか…… ?」

「憎い…… ?確かにその通りだ……俺はやつらに……大切なのものを奪われたからな……俺の怒りは……憎しみは……もうずっと昔から止められずにいる……」


ヴェロスは悲しい声で呟いた。

私は胸が締め付けられた。


「何を寝ている、ヴェロスよ」

「この声は……デビッド様……」


突然、デビッドの幻影が目の前に現れた。


「貴様は魔王軍の幹部のリーダーなのだぞ ?無様に敗北しおって、情けないと思わんのか」


デビッドの幻影は倒れているヴェロスに罵倒をした。


「申し訳……御座いません…… 」

憤怒(サタン)災厄(カラミティ)は全員やられた……最後の希望はお前だったのだぞ ?」


デビッドの幻影はカードを召喚した。


「これは……」

「お前なら解るだろう ?このカードの意味が……さぁ、己の命を懸けて、任務を果たしてみせよ」


そのカードを見て、エルサやルーシー、リトの表情は青ざめた。


「そのカードだけは使ってはいけません !」

「そいつは、強大な力と引き換えに命を失う、危険なものだ !」

「お兄ちゃんが死んじゃうよ !」


魔獣化のカード……以前ミノタウロスのロウがこれを使用し、理性を失い、異形の怪物となり破壊の限りを尽くした挙げ句に命を落としたことがある。

同じ過ちが繰り返されようとしているんだ。


「さあヴェロスよ、何を戸惑っている、そのカードを使え !敗者は魔王軍には必要ない !」

「ダメです !破り捨てなさい !」

「お兄ちゃん止めて !」


皆は必死に止めようと呼び掛ける。

ヴェロスはカードを見つめ、葛藤していた。


「俺には……野望がある……それを果たす為に……俺は……くっ !」


ヴェロスは覚悟を決め、カードを己の胸に突き刺した。


「ぐっ…… !ぎゃあああああ !!!」


その瞬間、ヴェロスに異変が起こり、苦しみ出した。

ヴェロスはうずくまり、悶えながら地面を転がった。


「やだ……お兄ちゃん……お兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁん !!!!」


ルーシーの悲痛な叫びが町中に響き渡った。


To Be Continued

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