第百二十三話・vsヴェロス、ルーシー
私達はコシュタバワーに乗って憤怒の災厄の襲撃を受けてる町へと駆け付けた。
だがそこで見た光景は想像を絶するものだった。
「ひ……ひどい……」
真っ赤に染まった地面に転がる数え切れない程の冒険者や兵士達の屍……
彼らはたった二人の魔族によって全滅したのだ。
唯一騎士のリーダーらしき男は辛うじて生きていたようだ。
「君、大丈夫か !」
エルサはコシュタバワーから降りるとリーダーの元へ駆け寄り、優しく抱き起こした。
「あ……アンタら……気を付けろ……あの二人は……化け物だ……俺の部下達や……冒険者達……皆殺された……」
リーダーは掠れた声でエルサに訴えた。
「頼む……弟を……あいつらから……守ってくれ……」
リーダーはロケットを握りしめながら呟くと気を失った。
「分かった……ゆっくり休んでいろ……コシュタバワー、彼を安全な所まで運んでくれ」
エルサはコシュタバワーの背中にリーダーを乗せた。
コシュタバワーはゆっくりと遠くに離れていった。
「あれデュークのコシュタバワーじゃん、何でお姉ちゃんになついてんの ?」
ルーシーは不思議そうにコシュタバワーに向かって指を指した。
「恐らくデュークから奪ったんだろう……ということは、あいつは倒されたのか……」
「デュークを倒すなんてやるね、僕達も油断したらやられちゃうかも」
ヴェロスとルーシーはそんな雑談をしていた。
「……君達は……絶対に許さん !」
エルサは鋭い眼光でヴェロスとルーシーを睨み付けた。
「おーこわ」
ルーシーは小馬鹿にしたようにおどけた。
「貴様ら、無限の結束だな」
ヴェロスは私達の方へ近付いてきた。
「俺達の目的は無限の結束全員の抹殺と、イフリート使いの召喚士……貴様を魔界へ連れていくことだ」
ヴェロスは私を睨み付けた。
「それが嫌なら、全力で抵抗するがいい。だが俺達は其処らの魔族とは桁が違うぞ」
「そうかな、君達の仲間、デュラハンは私達が倒したぞ ?君達も同じことになるんじゃないか ?」
エルサは挑発した。
「ほう……口だけは達者のようだな」
「待ってヴェロス !お姉ちゃんは僕の獲物だよ」
ルーシーは凄い気迫でヴェロスを制止した。
「……まあいい、あの騎士はお前に任せる、俺は召喚士を相手にしよう」
「流石お兄ちゃん、分かってるじゃん」
ヴェロスは私の方をじっと見つめた。
私は咄嗟に剣を抜き、身構えた。
「お姉ちゃん、覚悟は出来てるよね ?」
ルーシーはエルサに向かい、剣を突き立てた。
「ルーシー……私は……君を救って見せる……」
エルサは立ち上がると剣を抜き、構えをとった。
私はヴェロスと、エルサはルーシー……2対2の戦いとなった。
正直リトもいないのに勝てる気がしない、だけどここで逃げるわけには行かない。
彼らによって大勢の人達が犠牲になった。これ以上、憤怒の災厄に好き勝手させたくない。
例え敵わなくても、最後まで戦い抜いてやる……。
「はっ !」
「うおお !」
四人は一斉に走り出した。
キィンッ
ルーシーとエルサは互いに剣を振り上げ、ぶつけ合った。金属音が鳴り響き、風圧で瓦礫が舞った。
「お姉ちゃん……ずっとこの日が来るのを待ってたよ……僕の手で、お姉ちゃんを殺すこの日を !」
ルーシーは腕に力を込め、エルサを押していた。
「ルーシー…… !」
エルサは歯を食い縛り、腕に力を入れ踏ん張り、押し返そうとした。
互いに譲らず、二人の力は拮抗していた。
「はっ !」
一方私はヴェロスと対峙していた。
私は剣を振り回し、ヴェロスを斬りつけたがヴェロスは軽快な動きで私の剣をかわし続けた。
素早く動き回り、掠り傷すらつかない。
「どうした、こんなものか、さっきのやつの方がまだ善戦していたぞ」
ヴェロスは涼しい顔で煽ってきた。
「ふんっ !」
ドガッ
ヴェロスは高く足を伸ばし、私を蹴り飛ばした。
「きゃあっ !」
私は蹴り倒され、滑るように地面を転がった。
「いたたっ……」
「小娘、早くイフリートを呼び出せ、いつまで茶番を続ける気だ」
悔しいけどヴェロスは私のことなんて眼中にない。
彼の獲物はリト……。私はただのおまけ。
だけど今リトは召喚出来ない……。絶対に悟られるわけにはいかない……。
「貴方の……相手は……私一人で十分です…… !リトが出るまでもないです…… !」
私はフラフラしながら立ち上がり、虚勢を張った。
「ほう……まあいい、イフリートを召喚したくなるまで、徹底的にいたぶってやるか」
ヴェロスは腰を低く落とし、獣のように構えた。
私は剣を強く握り、再び身構えた。
体の震えが止まらない。息も苦しい。
こいつ……やはりただ者ではない……。実力はあのデュークの比じゃない。
でも私は戦う…… !これ以上傷つく人達を見たくないから……。
私はキッとヴェロスを睨み付けた。
To Be Continued




