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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憤怒の災厄編
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第百二十二話・ヴェロスの怒り



私とエルサはかつてデュークの愛馬だったコシュタバワーに乗って憤怒(サタン)災厄(カラミティ)の二人がいる町へと向かった。


コシュタバワーは風を切りながら走った。徒歩だと一時間かかるがコシュタバワーのおかげで数分で着きそうだ。

それに風が気持ちいい。

けど浮かれてる場合ではない。

これから戦う相手は魔王軍の幹部……。しかも二人……。

他の皆が戦い、そして敗れた……。ヴェルザードでさえも……。

爬虫(レプティル)騎士団(ナイツ)が助けてくれなかったらどうなっていたことか……。


私は時々ランプに語りかけた。でもリトの声は聞こえない……。まだ精神世界から戻って来ないのだ……。

私一人でも頑張るしかない。

それに……敵の中にはエルサの妹もいる。


「あの……エルサさん……」

「何だ ?」


私はエルサの背中にしがみつきながら声をかけた。

エルサはどこか肩に力が入っており、緊張した様子だった。

本当は戦いたくなんてないはずだ……。実の妹を……たった一人の家族と傷つけ合うなんて……。


「……心配ない……妹は……ルーシーは必ず私が救って見せる…… !それが私の責任だからな……」


エルサは改めて己の決意を口にした。


「それに、ワカバが言ってくれたじゃないか、妹が道を間違えたのなら、それを正すのは姉の役目だと」

「ですね……」


私は少しホッとした。

コシュタバワーは更にスピードを上げ、雄叫びを上げながら大地を蹴り走り続けた。




その頃、とある町でヴェロスとルーシーは待ち構えていた多くの冒険者達と兵士達を相手にしていた。

だがどれだけ束になっても、所詮は蟻の群れと恐竜……。力の差は歴然だった。


「皆、撃てぇ !」


魔法使い達は一斉に魔法を放ち、二人を包囲し、攻撃した。


「ここは僕に任せて」


ルーシーは細長い剣を上に掲げ、技を発動させた。


竜巻防御壁(トルネードベール) !」


ヒュオオオオオオオオ


ヴェロスとルーシーを巨大な黒い竜巻が包み込んだ。

二人に向かってる放たれた魔法は竜巻に飲まれ、消えていった。


「そんな……馬鹿な…… !」


ルーシーも姉と同じく、風の魔力を自在に操ることが出来る。

怖じ気づく冒険者達、遠距離からの攻撃は全て通用しない。

騎士のリーダーらしき男は青ざめていた。


「怯むな !やつらを倒せぇぇぇぇ !!!」


騎士のリーダーらしき男が叫ぶと、剣士達が一斉に剣を振り上げ、二人に向かって走り出した。


「眠くなるような動きだな」


ヴェロスはあくびをすると、戦闘の構えをとった。

そして、次の瞬間、ふっと姿を消した。


「消えた…… ?」


ザシュンッ


気付いた時にはもう遅かった。

ヴェロスは肉眼では絶対に追えない程の速さで剣士達の急所を的確に切り裂いた。

剣士達は血を流し、次々に倒れていった。

彼等は決して弱くはない、名のある戦士達だった。

だがヴェロスの前では虫けらと大して変わらない。

たった一撃で屍となり辺り一面に転がった。


「ひぃ……」


魔法使い達は震え上がり、杖を捨てて逃げる者もいた。


「逃がさないよ~」


ルーシーは剣先から小さな風の矢を作り出し、背を向けた者の背中めがけて放った。


ザシュッ


風の矢は後方にいる魔法使い達の背中を貫いた。

魔法使い達は血を吹き出させ、次々と倒れた。

辺り一面は血に染まっていった。


「あっはっは !面白~い !」


ルーシーは倒れる魔法使い達を眺め、子供のように無邪気に腹を抱え、笑っていた。


「くそ…… !たとえ命に変えても、貴様らを討つ !」


圧倒的な数の暴力で二人を追い込んだはずが瞬く間に追い詰められ、残されたのは騎士のリーダーただ一人だけだった。

リーダーはヤケクソに剣を振り上げ、ヴェロスに斬りかかった。


「この !この !」


リーダーがどれだけ剣を振るおうと、ヴェロスにはかすりもしない。

軽快な動きでかわし続ける。

ただただ虚しく体力が削られていく一方だ。


「もう寝てろ」


ズバッ


「がはっ !?」


リーダーは首元を爪で切り裂かれ、仰向けに倒れた。

ヴェロスは返り血を浴び、それを舌で舐めとった。

リーダーの首にかけられていたロケットの鎖が切られ、地面に落ちた。


「ん ?」


ロケットには小さな少年の写真が飾られていた。


「何だ……これは」


ヴェロスはロケットに触れようとした。


「触るな化け物め !それは……私の大切な弟の写真だ…… !」


騎士のリーダーの両親は流行り病で既に亡くなっていた。

彼は残された幼い弟を親代わりに育て、たった一人の家族として、守り続けていたのだ。


「ほう……お前にもいるのか……」


ヴェロスは地面に落ちたロケットを静かに見つめていた。

そして突然リーダーの首を掴み、持ち上げた。


「ぐっ…… !」

「貴様にも味合わせてやるぞ……大切なものを奪われるという地獄を……」


寡黙で冷静だったヴェロスは豹変し、怒りに満ちた表情でリーダーを睨み付けた。

そしてリーダーの目の前で爪を光らせた。


「まずは貴様の弟を殺し、その後で貴様も後を追わせてやる……」

「や、やめて……くれ…… !」


リーダーは戦々恐々とし、涙目になっていた。

何がこの男の逆鱗に触れたかわからない。

ただこのままでは自分だけでなく、罪のない弟まで犠牲になってしまうと……。


「あーあ、ヴェロスまた始まっちゃったよ」


怒るヴェロスの姿を見慣れてるのか、ルーシーは退屈そうにあぐらをかいていた。


「さあ、弟の居場所を吐け」

「嫌だ…… !弟を売るくらいなら……死んでやる…… !」


必死に抵抗するリーダー。

ヴェロスはニヤリと犬歯を剥き出しにし、笑みを浮かべた。


「ならばまずは死なない程度の苦痛を味わえ」


ヴェロスは腕を振り上げ、リーダーの腹に傷をつけようとした。

その時、遠くから放たれた風の弾丸がヴェロスを襲った。


「くっ !」


ヴェロスはリーダーを放り投げ、風の弾丸をかわすと距離を取った。


「この風……もしかしてお姉ちゃん ?」


ルーシーは何かに気付き、風が吹いた方向を見つめた。


「君達の悪行もそこまでだ !」

「ゆ、許しません ……!」


そこには、コシュタバワーに乗って颯爽と現れた二人の少女……。

私とエルサの姿があった。


「ほう……やっと来たか、魔人使いの召喚士(サモナー)……」

「お姉ちゃん……また会えて嬉しいよ」


ヴェロスとルーシーはようやくメインディッシュにありつけたと思い、嬉しそうに胸を弾ませていた。


遂にヴェロスとルーシーと対峙した私達……。

本当の最終決戦が始まろうとしていた。


To Be Continued

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