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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憤怒の災厄編
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第百二十話・三人の男



フライ……歪んだ天才科学者によって生み出された人造人間……。

親に捨てられ、人間達から迫害を受けた彼が行き着いた先は魔王軍だった。

フライは同じ苦しみを抱える者達と共に野望を果たすべく暗躍している。


「うおおおおおおおおおお !!!」


俺とマルク、フライの凄まじい殴り合いが始まった。

風圧で岩場は崩れ、土砂が竜巻のように舞う。


「ウオラアア !」


フライはマルクめがけてハンマーを振り下ろした。

マルクは持ち前の素早さでさっと避け、カウンターを決めた。

ハンマーは地面に叩きつけられ、振動で大地が揺れた。


「くっ !」

「どうしたウスノロぉ !」


マルクは素早い身のこなしでフライを翻弄し、ヒレで斬りつけた。

魔力をヒレに集中させたおかげか切れ味が上がり、フライの傷口から血飛沫が飛び散った。


「でりゃあ !」


俺は血の大剣を振り下ろし、フライの背中を斬りつけた。


「くぅ !」


フライの背中から大量の血が吹き出た。


「こいつら……さっきよりも魔力が増しているだと…… !?」


フライの表情から余裕が消えた。

拳を握り、全身に力を込め始めた。


「ぬおおおおおお !」


力任せにハンマーを振り回し、マルクと俺をまとめて叩き、なぎ払った。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁ !!!」」


俺達は滑るように地面を転がった。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !」


フライは止まらず追撃を始めた。

巨大なハンマーを上に掲げた。

その瞬間、いくつもの巨大な岩石が浮遊した。


「受けてみろ、浮遊岩石(フローティングロック)!」


フライの声と共に岩石は浮遊しながらこちらへ飛んできた。


「こんなもの、切り裂いてやる !」

「こけおどしが通用すると思うなよ !」


俺は剣で、マルクはヒレで飛んできた岩石を切り裂り、粉々に砕いた。


「甘いな !」


だがその瞬間、岩石は盛大に爆発した。

俺達二人は爆風に巻き込まれた。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」」


二人は爆風で遠くまで吹っ飛ばされ、地面に叩き落とされた。


「岩石に魔力を込めておいた……迂闊に触れれば爆発する……」


フライはゆっくりと倒れている二人に近付いた。


「格の違いが分かったようだな……俺は人間共に復讐するため、魔王軍幹部に登り詰めるまで過酷な修行に明け暮れた……」


フライはハンマーを大きく振り上げた。


「かつて俺を創った男……グラッケンミライン……そして俺を否定した人間共を皆殺しにしてやる……それが俺の望みだ…… !」


フライは全身に力を込め、豪快にハンマーを振り下ろした。


「終わりだ !!!大地(ガイア)変動(カタストロフィー) !!!」


フライはハンマーを振り下ろし、地面を粉砕した。大地は揺れ、巨大な衝撃波が津波のように地面を這い、二人を襲った。


「くっ…… !」


チュドォォォォォォン !!!


大爆発が起こり、煙が立ち込めた。

フライは息を切らしながら辺りを確認した。


「流石に死んだか……俺の目にはまともに喰らったように見えたが……」


だがフライは悪い予感がした。

手応えを感じなかったからだ。


シュゥン


突然赤く染まった槍が飛んできてフライの胸に突き刺さった。


「ぬっ……これは…… !」


槍が刺さった箇所から血が垂れた。

煙が晴れると息を切らしながら膝をついている俺とマルクの姿があった。

闇霧(ダークスモッグ)で霧になり、先程の大技を防ぐことが出来た。

そして煙を利用し、身を潜めながら隙をうかがい、油断した所を狙い、血で生成した槍、赤槍(レッドランス)を投げつけたのだ。


「諦めの悪いやつらだ……」


フライは力ずくで胸に突き刺さった槍を引っこ抜いた。

槍に触れた手は血で真っ赤に染まった。


「お前達は既に体力を消耗している、もう限界だろ」

「それはお互い様だぜ、お前も大技を繰り出した事で魔力をかなり消耗した、ヘトヘトのはずだぜ」


俺もマルクもフライも長時間戦い続けて疲労がたまっていた。

本当なら今にでも気絶したいくらいだ。

気合いと根性で辛うじて地に足をつけている。


「次で決めてやる…… !」


フライは震える腕でハンマーを持ち上げ、構えをとった。

俺とマルクも満身創痍になりながら拳を強く握り、身構えた。


「勝つのは俺達だ…… !」


三人は最後の力を振り絞り、一斉に走り出した。


「「「うおおおおおおおおおおお !!!」」」


血と汗を撒き散らしながら、大地を蹴り、声を荒げ、男達は走る。

その胸に抱いた願望を果たす為に。

どれだけ体が悲鳴を上げようと、骨が砕けようと、その足を止めるわけには行かない。

痛みを堪え、歯を食い縛り、三人は土砂を巻き起こしながら凄まじい勢いで激突した。


To Be Continued

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