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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
吸血鬼の洋館編
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第十話・魔人vs吸血鬼



私はリリィと申します。

代々この洋館に仕える侍女です。物心ついた時からヴェルザード様のお世話係をしておりました。


しかしご主人様が生まれてすぐにお母様は亡くなられ、お父様は行方不明に……。

お父様を探しに行かれ、町で人間達から迫害を受け、心を閉ざしたご主人様を見るのはとても可哀想で辛いものでした。


そんなある時、救世主が現れたのです !彼女の名は安住若葉。通称ワカバちゃん。あの人の思いやりの心と優しさがあれば、凍りついたご主人様の心を溶かしてくれるに違いない。そう思い、私は一計を案じました。


ご主人様がお庭へ向かうのを見計らい、ワカバちゃんに庭での散歩を勧め、鉢合わせさせる !

二人きりにさせて吊り橋効果で一気に距離を縮めるのです !まさに完璧な作戦です !

私は二人の様子を影から見守っていました。


作戦は成功し、二人の雰囲気は良い感じでした。しかしそんな時、予想外の事が起きました !ご主人様がワカバちゃんに破廉恥なことをしようとしたんです。いやいやいや !いけませんご主人様 !そういうことはまだ早すぎます !

ご主人様の唇がワカバのうなじに触れそうになった次の瞬間、ワカバちゃんのランプから煙が噴射され、気付くとご主人様は吹っ飛ばされ、壁をも貫いてしまいました !


「いてて……何だよ、何が起きたってんだ ?」


ご主人様は仰向けになりながら額を押さえていました。


「貴方、覚悟は出来てるんでしょうねぇ」


ワカバの前に突然姿を現した男。最初に私の前でワカバちゃんを抱き抱えながらやって来たあの男です。まさかワカバちゃんが言っていたリトさんって……この人 !?


「リト !いきなり何してるんですか !」


ワカバちゃんはご主人様の所に駆け寄りました。


「ヴェルザードさん、大丈夫ですか ?」

「ま、まあな……これくらい何ともねぇ……」


リトさんはご主人様に向かって指を指しました。


「この男はトマトまみれの穢れた口で主の首に噛み付こうとしてました。私が阻止しなければ、どうなったいたか……」


リトさんはワカバちゃんの事を主と呼んでいました。


「え……そうなの……?」


ワカバちゃんは割りと引いた顔でご主人様を見つめました。


「いや、ち、違うんだ……!これはその……」


ご主人様はしどろもどろに弁明をしようとしてますが舌が回っていません。


「主、彼の種族名は吸血鬼(ヴァンパイア)です。私と同じ最上位魔族であり、人の血を吸いながら生きる存在です」

吸血鬼(ヴァンパイア)……。あの十字架とかニンニクとか太陽が苦手な ?」


リトさんの言う通り、ご主人様なんと吸血鬼(ヴァンパイア)だったのです。

吸血鬼(ヴァンパイア)は希少な種族でして、(いにしえ)の大戦によってその数を多く減らしてしまいました。生き残った少数が散り散りになって、私達のようにひっそりと暮らしているのです。

因みに私はご主人様に仕えし魔物・使い魔、蝙蝠です。


「隙をついて主の神聖な血を吸おうだなどと……痛い目を見る必要がありますね」


リトさんは指をポキポキ鳴らしながらゆっくりご主人様の所に近づいてきました。


「一応主の命を救ってくれた恩人です。今回は半殺しという形で済ませて差し上げましょう」

「ちっ……こうなったのは不本意だが、売られたケンカは買わないとな……」


ご主人様はペッと唾を吐き、立ち上がりました。


「そ、そんな……何で二人が戦うんですか !」


ワカバちゃんは止めようとしますが、聞く耳を持ちません。


「丁度退屈していた所だ。暴れてやるか」


ご主人様は首をならしながらリトさんに近付きます。


「格の違いを見せて差し上げましょう」


リトさんとご主人様、互いに顔を近づけ、睨み合っています。

ワカバちゃんは不安そうに二人を見ています。


数秒間の沈黙……先に動き出したのはご主人様でした !

ご主人様は勢いよく拳を振り上げ、リトさんの頬に当てようとしましたが、リトさんはスッとかわすと、長い足をご主人様の顎を蹴り上げました。


「ガハッ !」


ダメージを受け、宙に浮きながらご主人様は吐血をします。


「ハアァァァァ !!!」


間髪入れずにリトさんは連続でパンチをご主人様の腹筋に叩き込みました。

しかしご主人様も負けてはいません。痛みに耐えながらも片手でリトさんの頭を鷲掴みにしました。


「オラァァァァ !!!」


ご主人様はそのままリトさんを壁に叩きつけ、顔を擦り付けながら走り回りました。壁がキレイに削れていきます。


「リトぉ !」


ワカバちゃんはリトさんの身を案じ叫びました。

ご主人様は掴んだ頭を放り投げ、リトさんは台所の方まで吹っ飛んで行きました。

ぶつかった衝撃で蛇口は破壊され、洗い終えた皿やコップの破片が散乱しました。せっかく洗ったのに……。

ご主人様は息を切らしていました。

これだけの攻撃、常人ならばたまったものではありません。


「ど……どうだ……!吸血鬼(ヴァンパイア)の力は……!」


吸血鬼(ヴァンパイア)の力は純粋に高い身体能力で他を圧する比較的シンプルなものです。中にはこうもりや狼、霧に変身する者もおりますが……。


しかし、そんな吸血鬼(ヴァンパイア)の攻撃をまともに受けながら、リトさんはゆっくりと立ち上がりました。ズボンの埃を払ってました。ほぼ無傷のようです。


「成る程……これが吸血鬼(ヴァンパイア)の力ですか……確かに腕力は大したものです。あの小物悪魔なんかとは比べ物になりません。しかし……」


リトさんはご主人様に勢いのかかった回転キックを喰らわせました。


「グホォ !」


ご主人様はまともに顔に受け、膝をついて倒れこみました。


「馬鹿な…… !この吸血鬼(ヴァンパイア)である俺が……無様な……」


ご主人様は悔しそうにしていました。


「反応も鈍い……。貴方の動きはまるで素人です。洗練されていません。高い魔力はあっても体が鈍っていては、吸血鬼(ヴァンパイア)として本来の力は発揮できないでしょう」

「何だと……!」


ご主人様は地に額を擦り付けながら歯軋りをしていました。


「今の貴方では私の相手は務まりません。吸血鬼(ヴァンパイア)の面汚しも良いところです。所詮は引きこもり、大したことありませんでしたね」


リトさんの言葉責めはご主人様のコンプレックスにグサグサ刺さりました。


「フン……お前だって普段はランプの中に閉じ籠っているじゃないか……俺とさほど変わらない……」

「変わらないですって?」


リトさんはご主人様の髪を掴みました。


「私が誰かご存じないようですね…私は古より魔界を蹂躙し、全てを圧倒する炎の魔人……イフリートです !」


イフリート !?伝説の魔人が何故こんな所にいるんですか !?


「イフリート……だと…… ?」

赤色放射(レッドオーラ) !」


リトさんは自らの体から赤く巨大なオーラを放出しました。赤いオーラは禍々しくメラメラと燃え、ご主人様を見下すように威圧しました。


「な……何なんだ……この力は……」


目の前の強大な力を前にして震えるご主人様。戦意を完全に失ってしまったようでした。


「覚えておきなさい。主に手を出すとどうなるのかを !そして、己がいかに世間知らずで見識の狭い情弱だということをねぇ !」


リトさんは叫ぶと、魔力を込めた凸ピンをご主人様の額に当てました。


指撃熱線零距離(フィンガーヒート・ゼロ) !!!」


人差し指で弾かれ、ご主人様はとてつもないスピードで何枚もの壁を貫きながら吹っ飛んで行きました。

常識を覆す圧倒的な強さ……。

リトさんの勝利です。


そして、壮大な二人の激闘と長年の老朽化が原因で吸血鬼の洋館は後に倒壊することになるのでした。


To Be Continued

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