表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憤怒の災厄編
116/400

第百十四話・燃やせ、コロナ



コロナの大切な友達、クロスはアイリの攻撃からコロナを庇い、氷漬けにされてしまった。

たった一人になり、うちひしがれるコロナ……。アイリはゆっくりと彼女に近付く。


「そんなに悲しむ必要はないです、貴方も彼と同じ運命を辿るのですから。それに彼らは死んだわけではありません、彼らの時が止まっただけです、永遠に……」


アイリはおしとやかに微笑んだ。

コロナは涙を浮かべ、キッと睨んだ。


「だったら……私があなたを倒して、クロスを……皆を元に戻す…… !」

「あなたのような子供に何が出来るんですか ?」


アイリはコロナを見下し、侮蔑の目を向けた。

コロナは寒さを堪えながらも立ち上がった。


大地(アース)(リライト)!」


コロナは杖を掲げると地面をコンッと突いた。

オレンジ色の衝撃波が地面を這い、アイリに襲い掛かった。


氷柱(アイスピラー)


対してアイリは鋼鉄のごとく冷たい冷気を放ち、ぶつけ合った。

魔力はアイリの方が高く、撃ち合いで勝ち、コロナをふっ飛ばした。


「きゃああああ !!!」

「何度やっても無駄ですよ、あなたは私には勝てません、諦めてください」


勝ち誇った様子でアイリは言った。


「まだ……まだ…… !」


コロナはふらつきながらも杖にしがみつき、立ち上がった。

だがこの気温の低い環境の中、既に体力に限界が来ていた。体の震えは止まらず、今にも倒れそうだ。


追尾火炎球(ホーミングファイアボール) !」


コロナは複数の火の球を三方向に放った。

アイリの逃げ道を塞ぎ、確実に仕留める為だ。

火の球はまるで生きてるかのように空中を泳ぎながらアイリに向かっていった。


「面白い技ですね」


アイリは面白そうにクスクス笑うと敢えて無防備な体勢を取った。

複数の火の球が取り囲むようにアイリに直撃し、焼き尽くした。


「や、やった !」


だが、煙が晴れるとそこには無傷の彼女の姿があった。


「そ……そんな……」

「いい線は行っていたのですが、残念でしたね……」


火の球からアイリを守ったもの……それは、

マグマでも溶かせない宝石よりも強固な壁……霜幕(フロストベール)でその身を包んでいたからだ。


「う……」


ドサッ


吹雪はますます強く荒れ、気温も更に低くなり、人が耐えられる環境で無くなった。コロナの体力は限界を迎え、その場に倒れてしまった。


「さ……寒い……」


体が震え、涙すらも氷の粒に変わっていく……。

肌は青白く染まり、指一本動かせなくなった……。

待っているのは死……。


「残念ですがここで終わりです、さようなら、お嬢さん」


アイリは放っておいてもコロナは死ぬと判断し、後ろに振り替えると何処かへ去っていこうとした。


「ま……待って……」


コロナは薄れ行く意識の中、必死に震える手を伸ばした。

このまま目を閉じてしまえば、もう助からないだろう……。


「クロス……皆……ごめん……ね……」


コロナは掠れた声で呟くと、静かに瞼を閉じた。




「ここは……」


コロナは気が付くと、何もないモノクロの世界で這いつくばっていた。

うつ伏せになったまま、全く動くことができない。


「そうか……私……死んだのか……」


コロナは自分が死んだことを自覚した。

そして目からとめどなく涙が溢れてきた。

まだまだやりたいことが沢山あった……仲間達ともっと過ごしたかった……そんな未練が次々に思い浮かんでしまった。


その時、コロナの目の前に、一人の大男が立っていた。

男は沈黙しながらコロナを見下ろしていた。


「あなたは……ロウ……」


とうとう寒さのあまり幻覚まで見えたか……コロナはそう思った。

だがロウはしゃがむと、コロナに手を差し伸べた。


「…………ロウ……ごめん……私……」


ロウは不器用ながら、固い表情で微笑んだ。何かを伝えようとしている様子だった。

コロナはそれを感じとり、ロウの大きくゴツゴツした手を掴んだ。


「暖かい……ロウ……ありがとう……」


コロナは絶望から解放されたかのように心の底から安らぎと温もりを感じ、笑顔を浮かべた。




「ん…… ?」


現実の世界、アイリは任務を終え、集落を立ち去ろうとした。

だが異変を感じたのか、アイリは振り返ってみた。


「はぁ……はぁ……」


コロナは歯を食い縛り、大地にしっかりと足をつけ、フラフラになりながらもそこに立っていた。


「まだ立ち上がれるだけの気力が残ってたんですね」


アイリは思わず感心した。


「ロウは……前に私に言っていた……元気に……強く……生きろって……だから……私は生きる…… !」


混濁する意識の中で見えたロウが何なのかはわからない。幽霊なのか、幻なのか……。

それでも、ロウが何を伝えたかったかは分かった気がした。

こっちに来るのはまだ早い、お前はもっと生きなきゃならないと……。


「私はあなたを倒して、皆を救う !」


コロナは凄まじい気迫で杖を大きく掲げた。


「そんな体で何が出来るというんですか ?」


アイリはコロナの気迫に押されながらも嘲笑っていた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


コロナは全身に力を込めた。

彼女の体から太陽のように明るいオーラが発生した。


太陽光蒸発(ソーラーイヴポレイション) !!!」


杖から発せられる太陽のように熱く燃え上がる光が空まで広がり、吹き荒れる吹雪を容易く消し去り、快晴の青空へと上書きしてしまった。

照りつける太陽が集落を多い尽くしていた雪をドロドロに溶かしていく。


「何だ……俺は一体何を…… ?」

「確か雪女に凍らされて、それで……」


太陽の熱によって、凍らされていた人々は氷が溶け、元に戻った。


「あれ……私は……生きてる……皆も元に戻ってる……」


コロナの目の前で凍らされた少女も無事だったようだ。


「う……僕はコロナを庇って……コロナ ?」

「良かった……クロス !」


復活して状況が全く読めないクロスをコロナはぎゅっと抱き締めた。目に涙を浮かべていた。


「そんな……せっかく私が用意した美しい環境が……私の世界が……」


アイリは落胆し、膝をついた。

そして体の変化に気付き、戦慄した。

太陽の熱に当てられ、皮膚が徐々に溶けていった。

雪女は気温の高い環境では急激に弱体化するのだ。


「暑い……誰か……助けてください……」


アイリは途端に弱気になり、命乞いをした。


「散々人々を苦しめておいて、許されるわけがないだろう、コロナ !行くぞ !」

「うん !」


コロナは精神を集中させ、魔力を最大限高めた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


コロナは巨大な炎の塊のような球体を出現させた。

それはマグマのように空中で燃え続けていた。


光冠爆破(コロナダイナマイト) !」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


巨大な炎の塊は無抵抗のアイリを飲み込もうと襲って来た。


「いや……来ないで来ないで来ないで来ないで !!!」


恐怖心で顔が醜く歪みながらアイリは巨大な炎の塊に飲み込まれてしまった。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ドガァァァァァァァァン


彼女の断末魔と共に、炎の塊は大爆発を起こし、鼓膜を粉砕する程の爆音を響かせた。


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ