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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憤怒の災厄編
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第百十一話・首の無い騎士



オーガの里に侵入し、魔法のランプを奪おうと画策した男、デューク。

小脇に抱えられたその首は女性と見紛ごう程美しい顔をしていた。


「グレン !怪我はないかい !」

「ね、姉ちゃん……」


遅れてブラゴが駆け付け、グレンを抱き締めた。


「義母さんはグレンを頼む !この男は私とワカバに任せろ !」

「分かったよ、修行の成果、見せてもらおうじゃないか !」


ブラゴはグレンを抱きながら私達の戦いを見守った。


「二人がかりで私を倒すだと ?愚かな小娘達だ……私は魔王軍幹部・憤怒(サタン)災厄(カラミティ)が一人、死神の化身デュークだぞ !」


デュークは高圧的な態度で無意味にポーズを決めた。

正直痛い……。


「変わった奴だが、油断するなよ、やつはあれでも魔王軍の幹部の一人だぞ」

「分かってます」


私とエルサは近くに寄り、剣を構えた。

修行の成果を見せる時だ。


「はぁぁぁ !」


デュークは力を込め、魔力を高めた。

邪悪な紫色のオーラがデュークの周りから発生した。


「来るぞ !」


カキィン


私とエルサは神速の速さで剣を振るう。

デュークは巨大な鎌を振り回し、応戦する。

ブラゴの下で修行をしたおかげか、二人とも速さが増して、デュークの剣撃を凌いでいた。


「くっ……まるで風そのものだ…… !この私が追い詰められるとは…… !」


「はぁっ !」「はぁぁぁ !!」


ズドォォォン


私とエルサは両側から風を纏った剣で突き、デュークの懐に一撃を決めた。


「ぐわぁぁぁっ !!!」


デュークは体勢を崩し、砂埃を撒き散らしながら倒れ込んだ。


「お……おのれ……小娘共め……死神の化身であるこの私を愚弄しおって……」


よろめきながら、デュークは立ち上がり、鎌を上に掲げた。


「気を抜くな、何か来るぞ !」

「はい !」


私とエルサは悪い予感がし、身構えた。


「こうなったら私の本気を見せてやる !出でよ !我が愛馬 !コシュタバワー !」


デュークの掌に稲妻が落下した。

そして空から魔方陣が発現し、中から首のない黒い馬が召喚された。


コシュタバワーと呼ばれる馬は華麗に地面に着地し、デュークの側に寄った。

首無し騎士デュラハンに首のない馬……。


「こやつは我が相棒……力を貸してくれるな、コシュタバワー」


デュークはコシュタバワーの背中を優しく撫でた。

コシュタバワーはゆっくりと頷いた。


「さぁ、共に不浄なる魂を刈り取ろうぞ !」


デュークはコシュタバワーの背中に跨がった。

コシュタバワーは後ろ足で大地を蹴り、翔ぶように駆け回り、遠くへ行ってしまった。


「ここは狭い、別の場所で戦うぞ !」


デュークは振り返りながら叫んだ。

確かにデュークの言う通りだ。このまま戦えば神聖な祠が崩壊してしまう……。


「ワカバ、あいつを追いかけるぞ、グレンと義母さんは祠に居てくれ !」

「わかったよ」


私とエルサはデュークの後を追い、走り出した。

風の魔力を使うことで通常より速く移動することが出来る。




「ここなら広いだろう」


デュークは修行場にたどり着いた。


「はぁ……はぁ……」


私達は遠い距離を走り回ったせいか体力を消耗し、膝を手に置いた。


「どうした ?そんなに息を切らして……せっかく戦いやすいよう場所を移したというのに、もう限界か ?」


デュークは馬に跨がり、余裕の表情で私達を煽った。


「こ、こいつ…… !」


デュークの卑怯で性格の悪さにエルサは歯ぎしりをした。


「ふん、だが勝負は勝負だ、コシュタバワーよ、蹂躙してやれ」


コシュタバワーは前足を上げ、ヒヒーンと嘶くと私とエルサに向かって突進してきた。

パカラッパカラッと地面を蹴り、足音が響く。


「くっ !」


私とエルサは剣を構え、突進してくるコシュタバワーに向かっていった。


「遅い !」


バァン


体力の消耗もあってか、上手く反応出来ず、私はコシュタバワーの後ろ足で蹴られ、勢いよく地面を転がった。


「ワカバ !貴様ぁ !」


エルサはコシュタバワーの蹴りを避け、跨がっているデュークを狙い、大地を蹴って高く飛び、剣を振り上げた。


死神(ジード)(サイズ)鎌刃(リッパー) !」


デュークの鎌から放たれた波状の光弾がエルサに直撃した。


「きゃあっ !?」


エルサは吹っ飛ばされ、空中を舞いながら地面に叩きつけられた。


「うっ……」

「どうした ?もう終わりか ?さっさとイフリートを召喚しろ !」


倒れる私達を見下ろし、高圧的な態度でデュークは怒鳴った。


「言ったはずです……貴方なんか……私達だけで十分だって……」

「そうだ……ワカバの言う通りだ……。」


二人は膝に手を置き、ふらつきながらも立ち上がった。


「魔王軍幹部であるこの私を……舐めるのも大概にしろぉ !」


憤慨したデュークは手綱を引き、コシュタバワーを走らせた。


ドガッ、バゴォッ


「「きゃああああ !!!」」


コシュタバワーは疲労が溜まった私達を容赦なく蹴り飛ばした。

その巨体で素早く暴れ回り、手がつけられない。


「うぅ……」


デュークは馬から降り、倒れて動けない私

に近付くと足で強く頭を踏みつけた。


「あっ…… !」


デュークはゆっくりと片手の鎌を上に掲げた。


「小娘共、もう遊びは終わりだ。この鎌で貴様達の首を切り落とす !来世は素敵な魔物に生まれ変われることを祈るんだな」


デュークはニヤリと口角をつり上げ、鎌を振り下ろした。


竜巻撃槍(トルネードスティンガー) !」


寸でのところでエルサは槍のような鋭い竜巻を一直線に放ち、光の速さでデュークを貫いた。

彼の自慢の鎧の一部が砕け散った。


「ぐおおおお !私の鎧がぁぁぁぁ !!」


鎧が砕けたことでショックを受け、デュークは慌てふためいた。


「今だ !」


私はその隙を逃さず、デュークの小脇から首を奪い取った。


「き、貴様 !私の首を !」


デュークは大切な首を取られた怒りで我を忘れ、鎌を振り下ろし、私に襲い掛かった。

私は首を抱えながら剣で受け止めた。

拮抗する両者。鎌と剣が擦れ合い、火花が散った。


「くそぉぉぉ !コシュタバワー !」


コシュタバワーは主人の声を聞き、大地を蹴り、駆けつけようとした。


「逃がすか !神月颶風(ムーンハリケーン) !!!」


エルサは巨大なハリケーンを作り出し、コシュタバワーを風の檻の中へと閉じ込めた。

コシュタバワーは暴れ、抜け出そうとしたが、ハリケーンは更に縮まり、抵抗する馬を締め付けた。


「コシュタバワー !……貴様らぁ !図に乗るなぁ !」


取り乱し、デュークは無我夢中で鎌を振り回した。

私はデュークの動きを冷静に見極め、的確に剣でダメージを与えた。


エルサはコシュタバワーを閉じ込めている間は身動きが取れない。

今デュークを討てるのは私だけだ。


「小娘の分際でぇぇぇぇぇぇ !」


怒り狂うデュークは力一杯鎌を振り下ろした。

だが私は寸でのところでかわした。

鎌は地面に深く突き刺さり、簡単に抜けなくなってしまった。


「く、くそぉ !抜けないだとぉ !」


デュークは必死に鎌を抜こうと引っ張るがびくともしなかった。


「今だワカバぁ !」


エルサは声を張り上げた。


神月疾風(ムーンウインドー) !!!」


私は風を纏い、神速の突きを繰り出し、デュークの全身を余すことなく切り刻んだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !」


ズドオオオオオオン !!!


私は力を振り絞り、最後の一突きでデュークの懐を貫いた。


「ぎゃあああああああ !!!」


デュークは悲鳴を上げると、大の字になって崩れ落ちた。

コシュタバワーも主人を倒され、借りてきた猫のように大人しくなった。


「はぁ……はぁ……」


私は手から剣を落とし、満身創痍になって呆然と眺めていた。


To Be Continued

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