第百十話・グレンvsデューク
魔法のランプを狙い、デュラハンのデュークがオーガの里の祠を襲撃した。
胴体と首が切り離された種族であるデュークは首を小脇に抱えていた。
「お前なんか、俺一人で十分だ !」
グレンは威勢よく叫ぶと力の限り剣を振るい、デュークを斬りつけた。
「若いな、動きが単調すぎるぞ」
デュークはグレンを見下し、涼しい表情でグレンの剣撃を片手の鎌で捌く。
「くそぉ !片手でなめやがってぇ !」
「オーガと言えど、子供の力はこんなものか」
ブゥンッ
デュークは鎌を振り、衝撃波を放った。
「うわぁぁぁぁぁ !」
小柄で軽いグレンは風圧に負け、数十メートル先まで吹き飛ばされた。
「まだ幼い魂を刈り取るなど気が引けるが……まあ良いだろう、我々魔王軍に逆らったのだから」
デュークは鎌を大きく振り上げ、地面に叩きつけられたグレンを切り裂こうとした。
「お……俺は……負け……ない !」
グレンは剣を強く握り、ふらつきながらも立ち上がった。
バチバチ……バチバチ……
グレンの体に変化が起こった。
青白いスパークを身体中に伴わせた。
「何だ…… ?あの変化は…… ?」
グレンの変化に戸惑うデューク。
「行くぞ…… !」
グレンはスパークを身に纏い、剣を構え、デュークに向かって走り出した。
キィン
ぶつかり合うグレンの剣とデュークの鎌。
グレンの剣は雷を纏い、研ぎ澄まされていた。
更に使用者であるグレン自身も身体能力が上がっているのか、動きが加速し出した。
「くっ…… !」
電光石火の如く繰り出されるグレンの怒濤の攻撃の嵐に徐々にデュークは追い詰められていく。
「鬼火花 !」
ザンッ
グレンは剣の先に雷の魔力を一点集中させ、目に見えない速さでデュークの鎧を斬りつけた。
「くっ……貴様ぁ !」
デュークの鎧に傷がつき、切り口から煙が発生した。
彼の着ている鎧は上位魔獣の素材で作られており、そう簡単に傷一つつくことのない頑丈なものだったのだ。
「この私の崇高なる鎧に傷をつけるとは……貴様、地獄に送ってやるぞ !」
激昂したデュークは力を込め、紫色のオーラを発生させた。
「死神の鎌・激震 !!!」
デュークは巨大な鎌を円を描くように大きく振った。
鎌から地面を抉る程の衝撃波が放たれ、グレンは吹っ飛ばされた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ !!!」
ゴシャァァァン
再び地面に叩きつけられたグレン。
身体中のスパークも解け、剣も手から落としてしまった。
グレンは強かったが、デュークの本気には及ばなかった。
「うっ……くっそぉ…… !」
グレンは必死に手を伸ばし、剣を取ろうとするが、デュークが近付き、グレンの眼前で鎌を地面に突き刺した。
「子供だと思って油断したぞ……貴様だな…… ?伝説の神器に選ばれ、デビッド様の召還した鎧魔獣を倒したオーガの戦士は」
デュークはうつ伏せのグレンを見下ろし、問いかけた。
「そ、そうだよ……魔獣は……俺が……倒した……」
「そうか……ならば死んでもらおう」
デュークは恐れた。
グレンに秘められた潜在能力を……。
幼いうちから雷の力を使いこなし、神器に選ばれ、鎧魔獣を倒したという事実。
もしこのまま成長すれば、魔王軍を脅かすだけの逸材になりかねない。
「いずれ我々の脅威になるのなら、幼いうちにその芽を摘み取る必要があるな」
デュークは鎌をグレンの目の前に突き立てた。
グレンは怯むことなくデュークを睨み付けた。
「悪く思うな小僧、これも生存競争だ」
デュークは大きく鎌を振り上げ、グレンにとどめを刺そうとした。
「神月疾風 !」
「回転突撃 !」
今にもグレンにとどめを刺そうとするデュークを、神速の如く二つの疾風が襲った。
「何 !?」
咄嗟に反応し、鎌を盾にして防ぐデュークだったが、抑えきれず吹っ飛ばされた。
「くっ !ようやく真打ち登場というわけだな !」
何とか体勢を立て直したデュークは興奮した様子でニヤリと笑った。
「エルサ……姉ちゃん……ワカバ……姉ちゃん……」
私とエルサはオババから事情を聞き、急いでグレンを救いに駆け付けた。
「グレン、大丈夫 ?」
私はグレンの元に駆け付け、抱き起こした。
「俺……二人が来るまで、頑張って時間稼ぎしたんだぜ……ほんとは勝ちたかったけど……」
「よく頑張ったね、グレン」
私はグレンに向けて微笑んだ。
「君は魔王軍の憤怒の災厄だな !」
エルサは剣をデュークに向けた。
「貴様ら、上質な魂を持っているようだな、これは刈りごたえがありそうだ。だがワカバ !貴様だけは生かして捕らえる !」
私はデュークの目を見つめ、剣を構えた。
「貴様は召還士なのだろう ?イフリートは召還せんのか ?」
デュークは挑発をしてきた。
リトはまだ精神世界から戻ってきてない。
「リトが戦うまでもありません、私とエルサさんだけで十分です !」
「ほう……大きく出たな……」
デュークは若干苛立ちを見せた。
「ワカバ、二人がかりでこいつを倒すぞ」
「はい、エルサさん !」
私はグレンを後ろに下がらせた。
睨み合う両陣営。ピリピリと緊張感が走る。
魔法のランプを賭けた、デュークと私、エルサさんの戦いが始まろうとしていた。
To Be Continued




