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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憤怒の災厄編
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第百七話・リトと黒リト



「…………」


リトは風の音すらしない静寂の中、ただじっと瞑想し、心の平静を保っていた。

活性化しつつある自らの闇を制御する為だ。

闇が暴走するのは、リトの心に迷いがあるからだ。闇を恐れ、闇を拒むが故に力に飲まれてしまうのだ。

大切なのは、リト自身の精神が闇に打ち勝つ程強くなることだった。




「ん…… ?ここは…… ?」


暫く経って目を開けると、リトの視界に見渡す限りの広大な森が広がっていた。


「森ですか……何だか懐かしいですね……」


リトはこの森に以前来たことがあるらしいが、全く思い出せずにいた。

ついさっきまで祠にいたはずがいつの間にか森に居ることに疑問を持ちながらも、森の中を歩いていた。


突然、リトの目の前に、黒いオーラを漂わせる男が現れた。


「だ、誰ですか !」


リトはすぐに警戒し、身構えた。

だが黒いオーラを放つ男の姿を見て絶句した。


「あ、貴方は…… !」


黒い髪に鋭い白目、膨張した筋肉……魔人形態になったリト自身だった。

黒いリトは邪悪な笑みを浮かべ、手招きしていた。


「これが私の闇の姿……ですか……初めて客観的に見ましたが、醜いものですねぇ」


リトは黒いリトを見て自嘲した。

そして理解した、自分が今すべきことを。


「成る程……闇を制御するとはこういうことですか……では行きますよ !」


ダダダダダッ


リトは黒いリトに向かって人差し指を指し、無数の火の弾丸を放った。

黒いリトも同じように指を指し、火の弾丸を放ち、互いの攻撃を相殺した。


「ヌオオオオオオオ !」


リトと黒いリトはぶつかり、互いに殴り合った。

だが闇の力を増幅させている黒いリトが圧倒的に優位に立っていた。

黒いリトの拳は速く、重くリトにダメージを与えた。


「ぐはぁっ !」


当然だ。リトが相手にしているのはパワーアップした自分自身なのだ。

膨れ上がる闇の力を前に、リトは手も足も出なかった。

黒いリトは本能のまま、不気味に笑いながらリトを殴り続けた。

その姿はまさに狂気。


「おのれ……こんな化け物……私ではありませんよ…… !うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !」


リトは全身から赤色放射(レッドオーラ)を放ち、黒いリトを威圧した。


「ウオオオオオオオオオオ !!!」


黒いリトは黒色放射(ブラックオーラ)を放ち、対抗した。

ぶつかり合う赤と黒のオーラ。

しかし、黒いオーラがみるみるうちに赤いオーラを飲み込んだ。


「そ……そんな……」


オーラをかき消され、呆然と立ち尽くすリト。

黒いリトは容赦なくラリアットをかまし、樹木に叩き付けた。


バキィィィィン


「ぐわぁぁぉぁぁぁぁ !!!」


樹木は地響きを鳴かしながら倒れ、リトは地面に叩き付けられ、大きくめり込んだ。

黒いリトはリトの顔面を鷲掴みにし、力任せに大地に擦り付けた。


「違う……こんなもの……私じゃない……私は…… !」


リトは高熱体質(ヒートボディ)で体温を急激に上昇させた。

太陽の熱よりも熱くなった体に耐えきれず、黒いリトはその手を離した。


「はぁ……はぁ……貴方のような化け物は消し炭にして差し上げますよ !はぁぁぁぁぁぁ…… !」


リトは全身に力を込め、更に体温を上昇させた。

膨大な魔力が膨れ上がり、リトの体は赤く発光した。


超高熱爆発(ハイフィーバーエクスプローション) !!!」


チュドオオオオオオオン


リトは全身から高出力の熱の衝撃波を放ち、大爆発を起こした。

森は全て焼き払われ、黒いリトを完全に消滅させた。


「はぁ……はぁ……」


焼け野原でたった一人立ち尽くし、リトは体力を消耗したのか息を切らしていた。


現実のリトはまだこの技を使うことは出来ない。

だがここでリトは大技を使うことが出来た。

何故かと言うとここは現実ではなく、オーガの祠が作り出した精神世界だからだ。

祠の神聖な魔力とオババの力により、リトが己の闇を克服する為の世界を擬似的に作り上げたのだ。

この世界で実体化(リアライズ)の制限時間は無い。魔力もいつもより多く消費が可能だ。


「ククク、これで私の闇は跡形も無く消えました……何 !?」


黒い煙がモクモクと発生し、やがて膨れ上がり、人の形を形成した。そして煙は徐々に姿を露にした。

黒いリトだ。


「ば……馬鹿な……完全に消滅させたはずなのに…… !」


跡形も無く消し飛んだはずの黒いリトはあっさり復活し、邪悪な笑みを浮かべた。


「くそおおおおおおおおお !!!」


いつになく取り乱したリトは黒いリトに殴りかかった。


ドゴォッ


リトの拳が黒いリトの頬を歪な形にめり込ませる。

だが黒いリトは物ともせず、逆にニヤリと余裕を見せた。


「ちきしょおおおおおおおお !!!」


リトは無我夢中で黒いリトを殴り続けた。

口調も荒く、いつもの紳士的なリトでは無くなっていた。

闇を消そうと必死に暴力に訴える獣そのものだった。

黒いリトは表情一つ変えず、無言でリトの連打を受け続けた。


ドゴッ


「がはっ…… !」


黒いリトはリトの懐に重い一撃を入れた。

腹筋は凹み、顔を歪ませ、リトは嘔吐した。


「き、貴様ぁ…… !だが、これで終わりです…… !」


リトは震える人差し指を黒いリトの胸板に突き立てた。


指撃熱線零距離(フィンガーヒートゼロ) !!!」


ピシュウウウウン


リトの指先から熱線が放たれ、黒いリトの胸を貫通した。

黒いリトは口から血を吐き散らし、崩れ落ちた。


「はぁ……はぁ……」


体力も魔力も使い果たし、リトはボロボロになり、膝をついた。


「これで……私の勝ちですね……」


リトは息を切らしながらも笑みを浮かべた。


「貴様の負けだイフリート」

「 !!!」


リトは背後からの声に警戒し、すぐに振り向いた。

そこには、かつて自分に力を無理矢理与えた男・魔王が立っていた。

この男は偽物、謂わばリトの精神世界の一部でしかない。


「貴様は自分の闇を消そうと足掻いているようだが、それは不可能だ」

「な……何故ですか……」


魔王はニヤリと笑った。


「それが貴様の本性だからだ」


リトの背後で煙がモクモクと発生し、再び黒いリトの姿になった。


「何が主を守るだ……貴様の本質は闇……全てを破壊する力……それが貴様の本当の姿だ……」


黒いリトは邪悪な黒い影を作り出し、瞬く間にリトを飲み込んだ。


「がっ……放しなさい !放せ !」


リトは見苦しくも脱出を試み、影の中で暴れるも、体はどんどん沼にはまったかのように沈んでいく。

そして徐々にリトの肉体は黒く染まっていった。


「違う……こんなのは私じゃない……私は…… !」


リトは必死な形相になって手を伸ばそうとした。


「無駄だ……貴様は何も救えない、何も守れない……貴様は闇の魔人となり、この世界を地獄に変えるのだ……」


魔王はそう吐き捨て、何処かへ消えていった。


「主……主……」


力なく呻き、やがてリトは完全に影に飲み込まれた。

影は地面に潜り、消失した。

後に残ったのは今もなお燃え続ける焼け野原だけだった……。


To Be Continued

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