第百二話・ヴェルザードvsヴェロス
「リリィ !皆ぁ !」
この短時間のうちに、俺以外のメンバーは魔王軍の幹部達に敗北し、戦闘不能になっていた。
残るは俺だけだ……。
俺はヴェロスの怒濤の攻撃をかわし続けていた。
ヴェロスは獣のように速く、荒々しく、俊敏な動きで俺を翻弄した。
あまりにも速すぎる動きで俺は避けるのがやっとだった。
「ち……調子に乗るなぁ !」
俺は回し蹴りをし、ヴェロスを引き離した。
「残るは貴様だけになったな吸血鬼」
確かに俺以外はやられた……。
だからと言って諦めて良い理由にはならない。
「俺一人でてめえらを全滅させてやるよ」
俺は拳を握り、再び構えた。
勝算もない……単なる虚勢だ。
「ほう……まだ折れないか……流石は吸血鬼だな」
このまま長引くのは危険だ。
一気に決めるしかない……。
「はぁぁぁぁぁぁ !」
俺は自らの血を使い、深紅の邪剣を作り出し、剣を握った。
更に片方の腕を狼の腕へと変化させた。
血の剣と狼の爪の二刀流……。
「待たせたな……これが俺の本気だ…… !」
「その獣のような腕は……」
俺は狼のように変質した腕をヴェロスに見せた。
「吸血鬼は体の一部を特定の動物のものへと変質させることが出来るんだ」
「つまりは紛い物ということか……」
紛い物だと…… ?
一々ムカつく野郎だな……。
「紛い物かどうか……試してみるか !」
ガキィン !
俺は息をする間もなく剣と腕を交互に振るい、怒濤の勢いでヴェロスを斬りつけた。
今度はヴェロスが防御に徹する。
ヴェロスは腕を交差させ、俺の剣撃を防いだ。
「ほう……怪力はあるようだな……だが、遅い !」
ヴェロスは拳を握ると目にも止まらぬパンチを俺に浴びせてきた。俺は剣と狼の爪で対抗し、互いにぶつけ合った。
最初は何も見えず翻弄されたが、時間が経ち、ヴェロスの動きを読めるようになった。
「俺の動きについてこれるのか……」
「目が慣れただけだ !」
ズバッ
かまいたちのように斬り合いが続く中、ヴェロスの頬に切り傷がついた。
少しずつだが手応えを感じ始めた。
「どうした !もうお疲れかぁ !」
ズバァッ
ヴェロスの肩から血飛沫が舞った。
俺の攻撃が当たるようになった。
この機を逃すわけにはいかない。一撃で決める!
「地獄爪の十字架 !」
俺は魔力を極限まで高め、ヴェロスの肉体に十字を刻み込んだ。
十字を刻まれた者は傷痕が赤く発光し、爆発する、現段階での俺の最強技だ。
だがヴェロスは攻撃が当たる寸前、両腕で俺の剣と爪を掴み、押さえた。
「な……に…… !」
どんなに力を入れてもビクともしない。
ヴェロスの握力は並外れていた。
「貴様の力は紛い物だ……俺が本物を見せてやる」
ヴェロスの両腕は徐々に獣のような毛に覆われて行った。
まるで狼のようだ。
「お前……まさか……獣人族か…… !」
獣人とは、動物の頭部と人間の身体を持つ半獣半人生物の種族だ。
こいつ……今まで本気じゃ無かったってことか…… !
しかもあくまで身体の一部を獣人化したに過ぎない。
まだまだ力を隠しているようだ……。
「獣の力なら、オリジナルである俺に分がある」
スパァン
目にも止まらぬ速業でヴェロスは鋭く研ぎ澄まされた爪で俺の持つ血の剣を粉々に破壊した。
「何だと…… !」
「渾身の一撃のつもりだったんだろ ?残念だったな」
俺は歯を食い縛り、片腕の狼の腕を振り上げ、ヴェロスを切り裂こうとした。
「三日月の狼爪」
俺が動くより速くヴェロスの爪は風のように俺の腹を切り裂いた。
俺の腹から血が噴水のように大量に吹き出た。
辺りは吸血鬼の血で真っ赤に染まった。
「ぐはぁっ…… !」
俺はたった一撃で崩れ、仰向けに倒れた。
ここまでのようだな……。
これが魔王軍幹部クラスの実力……。
まるで歯が立たない。
仰向けになってる俺の元に、他の五人も近寄って来た。
「よし、終わったな、ヴェロス」
フライはヴェロスの肩をポンと叩いた。
「いや、まだだ。肝心なことを聞いていない」
ヴェロスは倒れている俺の胸ぐらを掴み、無理矢理持ち上げた。
「ご主人様……」
リリィは力無い声で呟いた。
「貴様らを殺す前に聞きたいことがある。イフリートを操る人間の小娘は何処にいる」
俺は満身創痍になりながらも笑って見せた。
「さあな……だが俺が簡単に教えると思ったのか…… ?仲間を売るなんて真似、誰がするか」
ヴェロスは無言で傷口に爪を躊躇なく突き刺した。
「ぐわぁぁぁぁぁ !」
俺はあまりの痛みに絶叫した。
「答えた方が身のためだぞ、でなければ貴様は苦しみながら息絶えることになる」
こいつ……相当サディスティックな性格だな……。
「それでも俺は吐かねえ……仲間を……見捨てることは出来ねぇ……」
「そうか……まあいい……」
ヴェロスは掴んでいた胸ぐらを放し、俺は地面に落とされた。
「貴様、中々面白かったったぞ、褒めてやる、だがこれでさよならだ」
ヴェロスは爪に魔力を集中させ、大きく腕を振り上げた。
「死ね……」
ヴェロスの爪が振り下ろされ、俺の心臓が貫かれようとした瞬間
ドォォォン
上空から火球が振りかかり、ヴェロスを襲った。
「何だ…… ?」
ヴェロスは紙一重でかわし、俺から距離をとった。
落ちた火球は地面を燃え上がらせた。
「ヴェロス !」
「誰だ」
ヴェロスは上空を見上げた。
「よう、面白いことになってんじゃねえか」
「お前は…… !」
ヴェロスが見上げた先には、竜の翼を羽ばたかせた青年、ラゴンがいた。
「ラゴン !」
「貴様は竜族の…… !」
絶体絶命の俺の前に、意外な助っ人が参戦した。
To Be Continued




