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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憤怒の災厄編
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第百一話・追い詰められる無限の結束



密林にて、俺達は魔王軍の六人の幹部と対峙した。


俺はヴェロスと呼ばれるリーダーらしき男を相手にした。

この男が勇者のパーティーを全滅させた張本人のようだ。

得たいの知れない冷徹な雰囲気……。

獲物を絶対に逃さない鋭い目付き……。

確かにこいつなら勇者のパーティーを全滅してもおかしくはない。


マルクはつぎはぎだらけの大男・フライと戦うことになった。

お互い脳筋同士の対決だ。


コロナは雪女のアイリ、リリィはルーシー、ミライはサキュバスのサーシャ、クロスはデュラハンのデュークとそれぞれ対戦カードが決まったようだ。

六人共、これまで戦ってきたやつらとはわけが違う……決して油断できない……。




「貴様、人間ではないようだな」

「ああ、俺は吸血鬼(ヴァンパイア)のヴェルザードだ」

「魔族が人間の味方をするとは愚かだな」


よく敵から言われる文句だ。

うるせえな……俺だって人間はそんな好きじゃねえよ。


「お前さん、よっぽど人間が嫌いみてえだな」

「ああ、憎いな」


ヴェロスは冷たく言い放った。


「まあいい、始めようぜ」

「とっくに始まっている」


ヴェロスはいつの間にか俺の背後に立っていた。


「なっ !」


全く見えなかった……瞬間移動でも使っているのか…… ?


「どうした、震えているぞ」


ヴェロスは余裕綽々な笑みを浮かべた。


「誰がだよ、本番はここからだ !」


俺はすぐさま振り向き、俺の拳とヴェロスの拳をぶつけ合った。




「オラオラオラァ !」


マルクはフライと激闘を繰り広げていた。

マルクは両腕の鋭利なヒレを双剣のように振り回し、フライの全身を斬り続ける。

だが、フライは微動だにしなかった。


「こいつ…… !余裕ぶっこきやがって…… !」

「所詮は低級魔族……こんなものか……」

「ほざきやがれぇぇぇぇ !!!」


マルクは両腕のヒレに魔力を集中させ、フライの喉元を切り裂こうとした。


だが、フライはマルクの両腕を片手で掴み、簡単に持ち上げた。


「くそ !離せコラ !」


マルクは脱出しようと足をジタバタさせ、抵抗をした。


「本物の拳を見せてやる」


ゴスッ


「ガハアッ……」


フライはもう片方の腕でマルクの腹に拳をめり込ませた。

マルクの腹筋は歪に凹み、苦しさから嘔吐した。

フライはマルクを解放した。

だがマルクはうずくまり、立つことすら出来なかった。たった一撃でこの様だ。


「この俺が……ちきしょお……」


動けないマルクの頭をフライは踏みつけた。


「魔力を解放するまでもなかったようだな」




サキュバスのサーシャと雪女のアイリが手を組み、ミライとコロナに襲い掛かる。


ミライとサーシャは互いに翼を広げ、空中を戦いの場へと選んだ。


火炎球(ファイアボール) !」


コロナは魔法で火の球を繰り出し、アイリに放つ。


「四大元素魔法の使い手ですか……珍しいですね……ですが私の氷は溶かせませんよ」


アイリはそっと掌をかざした。


氷結球(アイスボール) !」


アイリの手から氷の塊が現れ、コロナの放った火球とぶつかった。


「相性では火の方が有利です、ですが実力が離れていれば話は別ですよ」


アイリの放った氷の塊は瞬く間にコロナの火球を生き物のように飲み込んだ。


「そんな…… !」

「あなたと私では実力差がありすぎるんですよ」


アイリは腕を大きく降り下ろした。


氷柱(アイスピラー) !」


鋼鉄のように硬い冷気が地面を走り、コロナを襲う。


「ひっ !土壁(グランドウォール) !」


コロナは即座に巨大な土の壁を出現させ、攻撃を防ごうとしたがアイリの放つ冷気はナイフのように鋭く、壁を壊し、コロナを一撃で吹き飛ばした。


「きゃああああっ !!!」


コロナは弾むように地面を転がった。


「コロナちゃん !」


ミライは倒れたコロナを見て集中力を乱してしまった。


「アンタの相手は私よ !」


サーシャは長い尻尾を鞭のように振り回し、ミライの全身を叩いた。


「うっ !い、いった~い !やったなぁ~ !羽根乱針(シャトルラッシュ) !」


ミライは翼を羽ばたかせ、無数の羽根を針のように飛ばした。


「そんなの当たるわけないでしょ !」


サーシャは優雅に空を舞い、かわし続けた。


(シルバー)(ウィング)~ !」


ミライは銀色に硬化した翼を広げ、速度を上げるとサーシャに突撃した。


ズバッ


「きゃあっ !」


剣のように鋭い翼撃がサーシャを切り裂いた。


「えへへ~どんなもんだい !」


ミライは無邪気にドヤ顔を決めた。

サーシャは腕をおさえながら痛みに耐えていた。

サキュバスは肉弾戦はそんなに強くないようだ。


「ふ~ん……アホそうに見えて、中々やるわね……でも、アンタは私の恐ろしさをまるで理解してないわ」

「え ?」


サーシャは不敵に笑うとパチンと指を鳴らした。


(ビター)記憶(イマージュ)……」


突然、無数の鎖が召喚され、ミライを縛り上げ、地面に叩き落とした。


「わっ !」


地面に叩き付けられたミライは全身を鎖で拘束され、身動きが取れなくなっていた。


「うーん……(シルバー)(ウィング)でもほどけないよ~」


ジタバタしているミライを複数の男達が取り囲んだ。


「え……何……」


ミライは男達の顔を見て青ざめていた。

かつて自分達を苦しめた盗賊「(フリーズ)える鳥籠(バードケージ)」に酷似していたからだ。


「えへへへ」


盗賊達はゾンビのように群がり、不気味に笑いながら近付き、ミライを追い詰める。

リーダーのローヴは鎖を地面に叩きつけ、涎を垂らしていた。


「い……いや……来ないで……」


ミライは恐怖で涙目になり、目をぎゅっと瞑った。


「へぇ~、これがアンタが潜在的に怯える過去の記憶なのね~」


サーシャは空中から恐怖でうずくまってるミライを見下していた。


実は彼等は本物では無く、サーシャが作り出した幻なのである。

サキュバスは幻術を得意とし、相手の精神を疲弊させることに長けた種族なのだ。


「さあ、過去の幻影に怯え苦しみ続けなさい !ホッホッホッホ」




「くっ…… !」


一方、デュークとの戦いで苦戦しているクロスは膝をつき、腕をおさえていた。腕から血が滴り落ちていた。


「貴様は魔女に仕える使い魔……つまり私の敵では無いと言う事だ」


デュークは傲慢な態度でクロスを見下した。


「舐められたものだな……僕も……だが…… !(シャドー)(ハンド) !」


クロスが叫ぶと、デュークの足下から無数の黒い手が現れ、彼を拘束した。


「ほう……私の動きを封じようと言うのか」


だがデュークは余裕の表情を浮かべていた。


「悪いが、貴様には的になってもらおう……はぁっ !」


クロスは黒羽(クロウ)分身(アバター)で数人の分身を用意した。


「今だ !黒羽根拡散弾(シャトルディフュージョン) !!!」


数人のクロスの翼から羽根の弾丸を身動きのとれないデュークに浴びせ、蜂の巣にした。

だが


死神(ジード)(サイス) !!!」


デュークは巨大な銀色の鎌でまとわりつく無数の影の手をなぎ払い、黒い羽根の弾丸すらも一蹴した。


「はは……」


クロスは渇いた笑い声しか出なかった。

戦意を失い、再び膝をついた。


「作戦は上出来だった……褒めてやるぞ……だが相手が悪かったな」


一瞬にして間合いを詰めるデューク。

クロスはデュークを見上げ、戦慄した。

まるで死神……。魂を刈り取り、冥界へ誘おうとする者……。


「貴様の穢れた魂……この私が冥界へ送ってやろう……死神に代わってな !」




リリィはルーシーと戦っていた。

だが使い魔であり、一介のメイドでしかない彼女が魔王軍幹部のダークエルフに敵うはずもない。


「はぁ……はぁ……」

「どうしたの ?僕まだ本気出してないんだけど」


繰り出されるルーシーの連続攻撃をかろうじてフライパンで防いでいたが、もはや限界だった。


「確かに私は皆さんと違って弱いです……家事くらいしか取り柄がありません……でも……私には蝙蝠の能力があります !」


フラフラしながらもリリィは立ち上がり、大きく深呼吸をした。


「何をする気なの…… ?」


キュイイイイイイン


リリィは口を大きく開け、甲高い声を発した。

鼓膜が引きちぎられる程の音波でダメージを与える蝙蝠の得意技・超音撃(ウルトラソニック)だ。


「うっ……耳が…… !!!」


ルーシーはあまりの不快音にたまらず耳を塞いだ。

特にエルフ族は耳が長く、敏感なのでダメージが大きい。


「今です !」


バァン


隙を見せたルーシーに対し、リリィはフライパンを大きく振り上げ、強く叩き付けた。


「きゃあっ !」


ルーシーは勢い良く吹っ飛ばされ、地面を転がった。


「や、やった !やりましたよ !」


リリィは手応えを感じ、歓喜の声を上げ、ガッツポーズを決めた。


「へぇ~、結構頭キレるじゃん」


ルーシーはムクッと立ち上がると頭をさすった。


「非戦闘員だと思って甘く見てたよ」

「っ……!」


リリィはフライパンを強く握り、身構えた。

ルーシーからただならぬ狂気を感じたからだ。


「そう怖い顔しなくて良いよ」


そうにっこりしながら呟くとゆっくりと剣を構えた。


「この構え……まるで……」


リリィはルーシーの構えを見て、何かを思い出したようだ。

誰かに似てると……。それも身近な人物に……。


スパッ


刹那、リリィをかまいたちが襲った。

リリィの全身を風が刃物のように切り刻んだ。


「きゃああああっ !!!」


流血し、メイド服はボロボロに切り刻まれた。

リリィは膝をつき、崩れ落ちるように倒れると魔力が解け、ちいさな蝙蝠の姿に戻ってしまった。


「その姿……君の正体 ?ちっちゃくて可愛い~ !」


ルーシーは子供のようにはしゃぐとゆっくりリリィの元に近付いた。


「な……何も……見えなかった……まるでエルサさんみたいだ……」

「へぇ、お姉ちゃんのこと知ってるんだ」


ルーシーはしゃがみ、リリィに顔を近付けた。


「お姉ちゃんはね、僕を見捨てたの……だから今度は僕がお姉ちゃんを見捨てるんだ」


ルーシーは無邪気に歯を剥き出しにし、不気味に口角をつり上げた。


To Be Continued

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