先生と幼女
思いつきでいつ更新するかもわからない小説です。暇つぶしにどうぞ
唐突だが質問だ。目の前に泣いている女の子がいたらどうする?おそらくだがこれだけを見れば優しく声をかける人が多い。むしろ通り過ぎる人の方が少ないだろう。
だがそれ保育園。幼稚園、もしくは保育園に通う客観的に見れば可愛い幼女だったら?
嬉々として話しかける奴は(21)の疑いがある。注意しような。無論俺はそっちの方向には走っていない。つまり俺は善良な心で人助けをしようとしている。見る人が見れば運悪く誘拐のワンシーンにもなりえるその瞬間は緊張する。やはり高校生を相手にするのとは一味違う。
あー。言い忘れてたな。俺は志ヶ楽 結城。社会人四年目に突入したしがない社会科教員です。
本当にどうしようか?早く出勤しないと学年主任の糸田さん通称主任に怒られる。しかも今日は入学式。余裕を持って出たら幼女にあったのだ。取りあえず俺は子供と話すときの大原則。膝を曲げ幼女に目を合わせる。幼女は俺が親かと思ったのか勢いよく顔を上げるが違うと分かるとまた泣きじゃくりそうになっていた。どうしよう、ほんとにどうしよう。通報されないよね?周りを見渡すがその心配は今のところ無い。とそこに今の状況に活路を見いだす物を見つけた。俺はそれ……花を可哀想だが採りまた戻る。そしてまたトライ
「お母さんとはぐれちゃったの?」
俺がそう言うとうんと頷く。よし。取りあえず会話は出来る。
「どこではぐれたかわかる?」
そもそも、目を話すのをどうかと思うが……
「ほいくえん、ままとはなれないといけないから。やだから……」
そう言うとまた泣きそうになる。なる程。よく見れば青の制服には皺が無く、帽子は使い込まれているようには見えず少し大きい気がする。要するに高校も入学式というようように保育園もというわけか。
だけどそのままから逃げてるから結局一人じゃん。意味ないじゃん。
「そっか。でもそのままも突然いなくなって悲しいんじゃないかな?今も探してると思うよ?」
「でも……ままおこってる」
「うーん……まあ。怒ってるているかも。でもさ。このままお母さんと会えないのとお母さんにごめんなさいってするのどっちがいい?」
前者を想像してみたのかいやいやと首を振り
「お母さんにごめんなさいする!」
と言うと保育園に戻ろうとするが……
「こ、ここどこ?」
で、ですよねーー。初めてくる場所を適当に走ればこうなりますよね。この子本当運良いよな。俺が電車通勤でここの地理分からなかったら入園早々に迷子じゃん。いや、今も迷子だけど。
「大丈夫だよ。僕がその場所知ってるから一緒に行こうか」
「うん」
「それならごめんなさいできたらこれをあげよう」
俺はさっき採った花で冠を作りそれを目の前に出した。流石女の子。やはり花は好きなようだ。目を輝かせて手元をみる。
「これ。おじさんが作ったの!?」
ぐほぉ!幼女の無邪気な一言が俺に突き刺さる!俺はまだ二五。もう直ぐ二六だがまだいける!………よな?
「そ、そうだよ。それじゃ行こうか」
俺は幼女の横に立ち、さっきまで乗っていた愛車の黒のマウンテンバイクを引きながら歩いた。もっぱら話題は花冠の作り方を伝授するというものだ。保育園の先生も知っているだろう。
何時もの通勤ルートから外れこの子を送り届けたらわき目も振らず飛ばさないと間に合わないかも?
というボーダーライン一歩手前の時にやっと保育園に着いた。
てんてこ舞いの親に探す保育士。ちょうど近くにいた人に声をかけると
「あっ。おはようございます」
と完璧な笑顔で応対。これだけ見れば慌てているのも嘘のようだ。俺はここに来るまでにすっかり懐いてしまった幼女もといゆなちゃんを前に出す。するとこの姿に気づいた母親が一目散にこちらに来る
「よかった。由奈。心配したんだから!」
「ごめんなさいままーー」
目に涙を滲ませゆなちゃんを抱きしめる。すると安心したのかゆなちゃんもぎゅっとお母さんを抱きしめまた最初に会ったとき以上に号泣した。
取りあえず俺の朝の一仕事は終えたよう……とまだだった。俺は一部始終が終わるのを横で見て頃合いを見計らってゆなちゃんに話しかける
「ゆうちゃん!」
おじさんからグレードアップ?すごく若々しいなった気分がする二五歳の春。と言うのは横に置いておき……
「ゆなちゃん。よくがんばりました」
そう言ってからずっと右手に持っていた花冠を頭にかけてあげる
「ありがとう!だいじにするね!」
そう言って向けられた笑顔は遅刻を賭けてやるに十分な価値があると思う。……が
「失礼ですがあなたは……」
「申し遅れました。お子さんが迷子になっていたのでここまで送り届けてきたものです。」
「そうでしたか。ご迷惑をおかけしました。なんとお礼をしたらよいか」
「いえ。結構ですので失礼します」
俺はそそくさとその場を退散しマウンテンバイクに乗り高校を目指した。
やはりあの笑顔は価値のあるものだったが社会人としてのプライドが俺に遅刻は良しとはさせないのだった。
「結城先輩?」
と言う声にも気付かない