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夢幻の世界の中で  作者: 高遠ハット
序章 ───旅立ちの祝福を
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第6話 魔法とかその他諸々エトセトラ

主に魔法についての説明回です。


 

「ごちそうさまでした」

「一瞬じゃったの…」


 空腹だった奏斗に出された朝食は拳大の黒パンに干し肉やら野菜やらを挟んだサンドイッチ2つ。食べ盛り真っ最中の奏斗にとってこの程度の量なら数分で片が付く。

(まだ食い足りないな)

 この場でさらに飯を要求するのは常識が無いことぐらい奏斗は心得ている。今は本題に入る方が先だ。


「それじゃあ、魔法とオルフェリアの地理、それに暦について教えてくれませんか?」

「分かった。まずは魔法じゃ。

 魔法の種類は大きく分けて2つ。詠唱と刻印じゃ。詠唱は昨日お主に施した《レコバル》がそれにあたる。刻印は…これを見れば分かりやすいじゃろう」


 そう言ってグヌが取り出したのは片手剣だ。刃の根元辺りに刻まれている文字を指差して


「これが刻印魔法じゃ。この剣には耐久性を強くし切れ味を良くする魔法が刻まれているの」

「これって……ルーン文字?」

「知っておるのか?」

「ええ、少し…」


 ルーン文字とは北欧で使われていた魔法文字だ。直線で表され、一字一字が意味を持つ。北欧神話の主神であるオーディンはルーン文字の秘密を得るために自らの体を9日9晩ユグドラシルに吊すという無茶をしている。

 剣に刻まれているのはまさしくルーン文字であった。中二病の友人である宮崎に無理やり覚えさせられたのは良い思い出だ。

(なぜオルフェリアにルーン文字が?北欧神話と関係あるのか……?)


「刻印魔法は対象に文字を刻むだけですむ。魔力もそんなに必要ではない。……ここまでいいか?」

「大丈夫です。次、お願いします」

「次は詠唱魔法じゃ。その前に魔法の属性についてじゃ」

「属性…ですか」

「魔法の属性は火・水・風・土・白・黒の6つじゃ。といっても、今では水と風は使われないがな」

「そうなんですか?」

「うむ。実用性に欠けるからの。水から派生した氷や風から派生した雷の方が主流になっておる」

「なるほど…それでどうすれば使えるのですか?」

「詠唱魔法は簡単じゃ。魔法水晶から契約すればいい」

「魔法…水晶……?」

「魔晶石に魔法を閉じ込めたものじゃよ。と、魔晶石の説明もせんとな。魔晶石とは最も魔力を導きやすい物質なのじゃ。魔法水晶をつくったり、魔法の媒体になったり色々な用途があるのじゃよ。」

「誰でも契約できるものなんですか?」

「基本的な魔法ぐらいなら誰でも習得できる。ま、お主なら上位魔法も習得できるはずじゃ。早速やってみるかの。ほれ、水晶に手をかざすのじゃ」


 奏斗の目の前に3つの魔法水晶が置かれた。


「右から《カナル》、《ストロン》、《ボルガルド》じゃな。

 《カナル》は土の硬化魔法、《ストロン》は白の身体強化魔法、そして《ボルガルド》は火の上位魔法じゃ。本来なら魔法で適正を確認するのじゃが…生憎この村には使える者がいなくてのぉ」

「構いません。水晶に手をかざせばいいんですよね…ってウワッ!」


 奏斗が水晶に手をかざした瞬間、全身にズズッと何かが入ってくるような感覚がした。

 ……あまり心地のいいものではない。


「最初は気持ち悪かろう。直に慣れるものじゃよ」


 そんなグヌの言葉を聞きながら奏斗は二度水晶に手をかざしそのたびに気持ちの悪い感覚が奏斗の身体を走る。

(何なんだ…このビミョーなリスク)


 魔法の契約を終えた奏斗にグヌは微笑みながら尋ねる。


「どうじゃ?気分は?」

「最悪ですね…あまり味わいたくないものです」

「ハッハッハ、そう言うな。おっと、忘れておった。魔法にはもう一つ、生活魔法というものがあっての。火をおこしたりする魔法や、物を清潔にする魔法などがある」

「…それもまたアレですか?水晶で…?」

「いやいや違う。生活魔法は総じて使う魔力が少なくて済むからの。指輪やピアスのようなアクセサリーを身につけるだけでいいのじゃ。……欲しいか?」

「ぜひ!お願いします!!」

「この村にあるのは……清潔にする《ネーテ》と火をおこす《アゴニ》と……娯楽用の《ヴァイセ》ぐらいか」

「《ヴァイセ》ってどんなのですか?」

「ただの娯楽魔法じゃよ。物を跳ね返すのじゃ。こういう風にな、《ヴァイセ》!」


 指輪をつけたグヌが魔法を唱えると、文字が羅列された円がグヌの前に浮かび上がった。


「この石をこれに投げてみろ」


 言われたままに奏斗は石を円に軽~く投げた。投げられた石は円にぶつかるとスピードが速くなって奏斗の元へと戻ってくる。


「と、まぁこれだけの魔法じゃ。どうじゃ?いるか?」

「ええ。じゃあ…《ネーテ》と《ヴァイセ》をください。火は自分でおこせますから」

「《ヴァイヒ》を持っていくとはの…余りものじゃから別に構わないが……」


 不思議そうにグヌが奏斗を見ている。


「少し使えるかも、と思っただけですよ。魔力をそんなにいらないし、指輪でしたら荷物にならないし大丈夫です」

「そうか…お主がいいのなら問題ないが」


(結構使えそうだな。後でいろいろ試してみるか)

 奏斗はこの時、《ヴァイセ》のある活用法を思いついていた。

(成功するかどうかは別だけど)


「魔法については以上じゃ。次は…地理か…」


 地理の話になると、途端にグヌの表情が曇る。


「どうしたんです?」

「ああ…悪いが、地理は教えることはできない。地図はなぜかあまり出回っていないのじゃ。我々もこの周辺のことしか分からなくての………」


(国家機密なのかな)

 奏斗はふとそう思う。

 当たり前ではあるが地図には、地形や距離、各都市の場所が描かれている。土地を理解するためには役立つが、それは敵に渡ればいとも簡単に自らの土地が知られてしまうことも意味しているのだ。

 砦の位置や待ち伏せに向いた地形など、知られてしまえば軍事的に不利になることは間違いない。

 このリスクから国を守るためには地図を出回らせないことは一つの手段だ。

 ……単に地図を大量生産する技術が無いだけかもしれないが。

(ずいぶん物騒なもんだ)


「分かりました。最後に暦についてお願いします」

「暦は魔法の属性の白・土・水・風・火・黒の順の6つの季とその季を2つの月に分けて使用している。月は約30日間。一つ目の月をウヌア、二つ目の月をシェニと呼ぶのじゃよ。だから今日は水のシェニ15日となるの」

「なるほど…」


 グヌの言った暦を元にすると、今日は日本でいうところの6月15日となる。

 これはつまり

(地球とオルフェリアの時間軸は同一ではないということか…)

 できれば夏休み中に帰りたいもんだ、と奏斗は思った。


「あとはないか?」

「そうですね…あ、忘れてました!今朝の兵隊はどこのですか?隣の国だと聞きましたが…」

「ああ、あれか。詳しいことはよく分からんのじゃが、どうやら王都で何か起きたようでの。ここ最近隣国のガルーシャが侵攻してきておるのじゃ。我らはあと5日ほどでここから南西につくった集落に避難するつもりじゃ」

「そうだったんですか…軍は?この国の軍は動いてないのですか?」

「うむ。少なくともこの村の周辺には来ておらんの。国境から10カミノしか離れておらぬのにの…」


(反乱でも起きたのかね?)

 他国に侵攻されているにも関わらず軍を動かさないとなると、国内で軍事力が必要な事態が起きている可能性が高い。例えば、市民による反乱などが考えられる。


 あまり長居のしていい場所ではないようだ。


「物騒ですね…今日中には村を離れることにしますよ」

「分かった。必要なものはこちらで用意する。なぁに、遠慮するな。礼として受け取ってくれ」


 もちろん、奏斗が今日中に村を離れる理由はただ一つ。


 敵の本陣を夜襲するためだ。


分かりにくくてスイマセンでした。

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