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バラの王子様と白い悪魔  作者: ことわりめぐむ
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ラグミヘジック

 ラムタフのじいさんと決着を着け、帰りの列車に乗り込む。

 じいさんはとりあえず自治区の警察に突き出しといたから逃げ出したりはしない内は、ラムタフの方から近づけさせなければ洗脳に問題はないだろう。最後のじいさんの言葉にラムタフが従わなかったのだから多分、耳をえぐった事で術は解けているに違いない。

 と、思いたい。 

「知ってるかラムタフ」

 うつむいたまま何も言わないラムタフに声をかける。

「うん?」

 元気の無い声で返事をする。殺そうとした相手だが、肉親が捕まるって事はかなりショックなのだろう、俺はそんなラムタフを元気づけようとして続けた。

「これが俺とお前がいつまでも一緒に居られるようにって願いが叶う魔法だ」

 手の平に人差し指で小さく陣を描くと、顔に張り付くぐらいの距離で見せつけた。

 手のひらに描かれた魔法陣が淡い光を放つ。

「か、かわいい魔方陣だね」

 手が近すぎたのか、ラムタフは慌ててそう言った。

「そうか?俺的センスの固まりだゴージャスな魔方陣じゃないか。でな名前はラグミヘジックって言うんだ」

「ラグミヘジック‥‥優しい響きだね‥‥って僕が考えた魔法じゃないか!!」

 信頼と友情。組み合わせの創造主が、盗作だと大きな声になる。

「お前が作んないから、俺が作ったの」

 ちょっとは元気なんだなぁと、安心し、俺は続けた。

「‥‥それがラグミヘジック?」

「そう。お前が考えて俺が作った二人の魔法」

 ラムタフが言った言葉を思い出し、言葉の意味も考えず今考え出した魔法。

「テスと僕が一緒にいられる魔法」

 そんな意味合いだったけな、と宙に同じ形を描く。

「さて、集え魔力、交じわえ肉と」

 まだ俺にも何が起こるか分からない、全く未知の魔方陣だ。

 俺達が願うように、ただ二人がずっと側にいられるだけの効力があるのか、それとも全然違う効力になるのか‥‥。

 魔方陣の形が光り輝き固まりになる、小さな拳ぐらいの大きさになって、それは光り輝く花になる。

「バラの花‥‥」

 ラムタフが恍惚の表情で花を見つめ呟いた。

 確かにそれは、バラの花の形をしていた。俺の大切なフィア様が愛でるバラ。アリティーヌの象徴のバラ‥‥。たった一輪だけれども、それは地面からねじれて突き出ていた。やがてそのねじれは解け、ゆっくりと花が開花する。

 開くと同時に花びらを散らし、光と共にラグミヘジックは消えていった。

 綺麗な魔法だった。

「こんな綺麗な魔法作っちゃったら、しょうがないからテスが王様になったら僕が側にいてあげるよ、ジオみたいに」

「そうだなぁ‥‥お前バカだけど役に立つからな。ずっといろよ」

 俺がラムタフにしてあげられる簡単な約束。これは魔法の効果ではないけれど、ラムタフの願いどおりになる。

「‥‥うん。ありがとうテス」

 頷きながらラムタフの瞳から涙が溢れ出した。ほんとにこいつは泣き虫だなぁ‥‥。

「泣くなよ男なんだから、まったく泣き虫だな」

「‥‥うん」

「じゃあ帰るか」

 帰るかといっても列車が着かなければ、ヴィアハムにもたどり着けないんだけど。

「うん」

「あのなぁ、さっきからうんしか言ってないぞ大丈夫か?」

「うん‥‥でも、長持しないよねぇ」

 ラムタフの言葉に俺は苦笑する。まだまだ、勉強が必要ってことだな。

「ずっと、消えないように勉強するさ」

 窓の外を流れる景色が、だんだん知っている場所に変わっていき、白い風車が見え出す。もうすぐ停車駅だと荷物をまとめ俺はラムタフの手を引き、席を立った。


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