第十一話 真実への追求
狩谷さんに気まずい現場を目撃された後、もう駄目だと思いつつも言い訳をしてみると、意外にも狩谷さんは目を泳がせながらもすぐに行ってしまった。
今日はひどい目にあった。....いやまぁ猪野さんの胸を触れたのは人生で最高の経験だったけども。
それにしても狩谷さんのあの狙っていたようなタイミングの悪さには、一周回って感心してしまった。
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「ただいま」
家に着くと僕は最初に違和感を感じた。リビングの電気が点いているのだ。
まさか両親が帰ってきた?...いやそんなはずはない。じゃあまたベリスが来たのか?
いやな予想が当たらぬように祈りつつ僕がリビングを覗くと
「おかえりー!ましろちゃん♪」
悪い意味で期待を裏切ってくれたのはソファーでくつろいでいる狩谷さんだった。
「帰って下さい!いやその前に私の家にどうやって入ってきたんですか!」
「いやーましろちゃん家でわたしのピッキング技術を見せてあげようと思ってね!!」
「そっそんなことのためにうちに入ってきたんですか!?」
このひとの思考回路は全く理解できない。 ....いや理解しようとも思わないけど。
「用が無いなら早く出て行って下さいよ。狩谷さん」
「ましろちゃんには用と言うよりも聞きたいことがあるんだよ」
グイッっと手を引っ張られバランスがとれずソファーに倒され、そのまま僕の腰の上に狩谷さんが跨がってきた。
「ましろちゃん。美鈴ちゃんのこと本当に好きなの?」
透き通った眼で、いつもとは全く違う口調で真剣に語りかけてくる狩谷さん。
そんなこと言われても猪野さんとはいきなり過ぎて僕も分かんないよ。
「ましろちゃんはやく答えてくれないと....こんなことしちゃうよ?」
ちゅっ。
「ふぇっ!?ん、んむぅっ!」
それは完全に不意打ちだった。唇にやわらかい感触がした。さらに息苦しさに口をあけると暖かい舌が口内に侵入してきた。
僕は狩谷さんの行動に混乱している。
なんで猪野さんとの関係をこんなに真剣に聞いてくるんだろう...。
狩谷さんは確かに変人だけど、こんなことは今までしてこなかったのに....。
いままでキスの経験すらなかった僕には強烈すぎる感覚でなにも出来ずにいた。
「.....ましろちゃんは鈍すぎるよ。」
そう言いながら狩谷さんはキスを止めて、悲しそうな目でどこかをみつめていた。