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鳥と浮気と女子高生 〜鳥のエサ風味のパスタを添えて〜

作者: ぺるしゃむ
掲載日:2026/05/24

頭がとち狂っています。私が持ちうる全てのネタを詰めました。1話完結、すぐ読み終わります。暇な方、笑いたい方、なんだこれという顔をしたい方、是非ともこの先を楽しんでいってください。

 以前、世界はナスでできているといった研究者がいたそうですが、そういったことも思想の自由に入るわけです、と公共の先生が生徒全体を見渡しながら言った。

 いくら思想の自由といっても限度があるだろうと私は思う。そんな話を誰が信じるんだろうか、でも誰かが信じたからこそこの話が今に伝わってるわけで・・・ つまり、この研究者の他にも変人がいたということだ。全く面白い世の中だ。

 ふと、窓の外を見ると2匹の小鳥が小枝の上で囀り合っている。どんな会話をしているのだろう。今晩の夕飯の話だろうか、それとも近くのエサ場の話だろうか、はたまた夫の三股が発覚し妻がそれを激昂したことで我を忘れているのだろうか。これもまた思想の自由だなと自分に突っ込むが顔は笑えない。

 時計の針の進むスピードは授業の時に限って遅くなる。おそらく学校の時計は普通の時計より時間の進みが遅くなるように特殊設計されているのだろう。まったく教師陣め。

 しかし、私はとても優しい。時計の針は授業終わり1分前を指している。だから今回のことは水に流して、次回からは時計の針のスピードは早めてほしい。今生の願いだ。

 周りの生徒たちは教科書を閉じ始める。パタンパタンと音が教室に響き、その音は先生にももちろん届く。

「まだ授業は終わってませんよ」

 授業終わり1分前は実質片付けの時間だ。あまり邪魔しないでほしい。

 キーンコーンカーンコーン

 授業終わりの合図が校内に鳴り響く。しかし、終わりの合図が先生には聞こえないようで授業はなかなか終わらない。

「先生、チャイム鳴りましたよ」

 ある生徒が声を上げた。素晴らしい生徒だ。こうして意見をしっかり言えるものが将来優秀な人間になるのだろう。

「ごめん、ここだけやらせて」

そんな生徒の声はむなしく届かず、先生は授業を続ける。頼むから時間内に終わらせる努力をしてほしいものだ。

 こうして六限目の授業は終わり、ホームルームとなった。ホームルームでの先生の言ったことは覚えてないのでよく分からない。ただ、最近不審者が出るから気をつけろと言っていた気がする。

 まあ、いまさら思い出しても仕方がないのだが。

 なぜなら今、私の目の前には不審者が立っている。先生からの不審者情報的なのを聞いとけば近づかなかっただろうに・・・ 先生もしっかり伝える努力をしてほしいものだ。

「あの」

「なんですか?」

 やっと声を発した。私の前に立ってから声を全然発さなかったので、女子高生の前に無言で立つタイプの不審者かと思っていたところだ。・・・どんな不審者だ?

「実は妻に浮気を疑われてしまって・・・ 誤解を解くのを手伝っていただけませんか?」

 なんで私なんだという疑問はさておき、こういう人にはあまり絡まない方がいい。さっさと断っておしまいだ。

「いや知らないっすよ。ちょっとこの後用事があるので失礼していいですか?」

「そんな知らないだなんて言わないでくださいよ。さっき見てたじゃないですか」

 はて、誰が他人の夫婦のいざこざを見ていたというのだろうか。

「先ほど、私が木に止まって妻と話している時に見てたじゃないですか」

「木に止まって・・・?」

「ほら、小鳥が2匹いたの覚えてないんですか? その片方ですよ」

 ・・・いよいよ不審者がフルスピード、フルスロットルで私の脳を混乱させてきやがる。あれ待て、なんで私が小鳥を見ていたことを知っているんだ? まさか本当に・・・

「よかった、その顔からして理解していただけたようで」

 理解というものはまだ私の脳に追いついていないが。

「す、すみません。この後用事があるので失礼します」

 私はそう言い捨てて、足早に帰路につく。

 しばらくして後ろを振り返ると自称小鳥の男はいなかった。どうやらストーカー類いの不審者ではないようだ。

 いつもより地面のアスファルトの硬さを感じている頃、また子鳥の囀りが聞こえてきた。しかし、ただの囀りであるはずのその声は恐怖の対象になってしまった。

 これもあの男のせいだ。次会ったら(私、ぺるしゃむは健全な口調ですので汚い言葉は差支えさせていただきます)した後に、(私、ぺるしゃむは健全な口調ですので汚い言葉は差支えさせていただきます) をして、(私、ぺるしゃむは健全な口調ですので(以下略))をしても気が済まなかったら、(私、ぺるしゃむは(以下略))をしてやる。あの(私、(以下略))野郎が。

 下を見ながら歩いているとふいに地面のアスファルトが岩畳に変わった。どうやら考え事をしているうちに家に着いてしまったらしい。

 中に入るなり、階段を登ってすぐに自分の部屋のベッドに飛び込んだ。

 家は安心する。自分の知らないものはないし、誰かに見られているという心配すらない。しかし、先程から鳥の囀りが聞こえるのはなぜだろうか。ずっと鳴いているせいでもはや私に話しかけているかのよう・・・ いやまさかな。

 私は好奇心と恐怖を持ちつつ窓を開ける。

「よかった。やっと話を聞・・・」

 私は反射的に窓を閉めた。目の前に鳥がいてその鳥が話しかけてきたのはきっと幻だろう。たしかに最近は寝不足が続いていて疲労が溜まっていた。だから幻など見てしまったのだ。公共の先生が言っていた思想の自由が、私の思考だけに収まらず視力も支配しているだけのことのはずなのだ。おそらく・・・

 私はもう一度窓の方を見る。窓を閉めた流れでカーテンも閉めてしまっていたようで、僅かに漏れる光しか見えない。しかし、その僅かな隙間から漏れる鳥の囀り声はどうにも無視できない音量であった。

  

「で、鳥? 不審者? 私はそんなの知らないから付きまとわないでちょうだい」

「鳥ではありますけど不審者ではないですよ」

「不審者じゃない鳥・・・ 略して不審鳥だな」

「それは不審者の鳥では・・・?」

 なぜ私はこんな得体の知れないものを部屋に入れてしまったのだろうか。しかし、普通に考えてほしい。今私の部屋にいるのは先程のフルスピードフルスロットル不審者ではなく、喋る鳥なのだ。ただただ興味が湧く。

「ところで不審鳥さん、私に何をしてほしいの?」

 やっと話を聞く気になったといいたげに目を輝かせた。もちろん鳥なのでかわいい。

「ええ、知っての通り妻が私が三股しているという情報を掴まされたらしいのです」

 知っての通りかどうかは置いといて、愛くるしい姿をする鳥からはあり得ない文言が飛び出してきた。

「それは偽情報なんです! 私がしているのはあくまで場所を転々としながら、他の雌鳥を見ながらエサを食べているだけなんです!」

「浮気やんけ」

 私はついつい不審鳥に突っ込んでしまった。きっとこれは普通の感性のはずと思って自分を落ち着かせる。

「他の雌鳥見るだけで浮気なわけないでしょう!」

「雌鳥見ながらエサが悪いんだろ・・・」

 不審鳥は首を傾げて「雌鳥を見ることに集中しろと?」

 私は頭を抱えた。そもそも私鳥の感性知らないんだった。いや、もしかしてこいつが変なだけか?

「事実なんてなんでもいいんですよ。妻をなだめることさえできれば」

 私はこの不審鳥の言うことを適当に受け流すことにする。「はあ」

「妻の機嫌が私の生死を決めるのですから!」

 少し気になるが私は受け流す。「はあ」

「もちろん、手伝ってくれたら報酬はあげますよ」

 私は一瞬顔を上げようとしたがすぐに辞めた。

「どうせ美味しい鳥のエサとかでしょ」

 不審鳥は驚いた顔をして、「え、いらないんですか?」

「当たり前でしょ、誰が鳥のエサを好き好んで食べるのよ」

 不審鳥は確かにという顔つきになり少し考え込む。こうして黙った不審鳥を見ているととてもかわいらしい。もちろん口(くちばし?)を開けば酷い有様だ。

「では変身能力なんていかがでしょう。人から鳥に、鳥から人になれますよ」

 私はそれを聞くと、先程まで守ってきた適当に受け流す戦法を即刻中止した。

「え! なにその変身ってやつ!」

「え、だから今言った通りのただの変身ですって」

 ここでも不審鳥の感性がおかしいことがわかるが、これを逆手に取ろうと私は考えた。

「その、ただの、変身能力であなたの依頼を受けてあげようじゃないって言っているのよ」

 不審鳥はまた目をキラキラさせて可愛らしい鳥になるが、

「え! なんて優しい! ありがとうございます!」・・・今回に関しては私が悪いな。

 まあいいか。

 

「変身能力はその名前の通り変身できます」

 不審鳥はそう言うと、みるみる体が膨張するように大きくなり、鳥の羽らしきものは黒いスーツとなり、やがて一人の男性・・・いや、不審者が出来上がった。

「まあ、こんな感じです」不審者は、どこにでもいそうな残業まみれで毎日疲れていそうな顔をしている顔つきでそういった。

「もしかして変身できる見た目って固定されてるの?」

 私はおそるおそる聞くと、何も考えていなさそうなこの不審者は「いえ? 自由に姿は選べますよ」

「な、なんでそんな日本社会の闇を表したような顔にしたの」

 不審者はきょとんとした目を私に向ける。鳥であったらかわいかったのだろうが、今となってはおじさんからのただの視線に他ならない。

「日本社会の闇だなんて失礼な。この顔をしている人はよくエサを落としていくのでもはやヒーローですよ!」

 きっと、この不審者は不審者の姿で疲れてそうな人に近づき、手から食べ物が落ちるのをずっと待っているのだろう。日本の労働者に幸あらんことを。

 私は椅子にもたれ、天井を仰ぐ。目線の先の天井はいつもとなんら変わらない少し黄ばんだ白色で、私はどこか安心した。

「いつか私もそんな顔をして仕事するのかなあ」

 私はふと思ったことを口走った。しかし、いつのまにか鳥の姿に戻っていた不審鳥は「エサ落としてくれるんですか?!」

「誰が落とすか」

「なんだ、てっきりそうなのかと・・・」不審鳥は羽で頭を掻きながら言う。今度こそはかわいかった。


「これが変身能力か!」

 私は鏡の前で鳥になったり人間に戻ったりで忙しかった。鏡に映る鳥の姿の私は、くちばし付近は真紅に染まり、それでいて背中は深みのある紺碧に輝き、お腹はキラキラした白いモフモフの毛に覆われていた。そう、私の選んだ鳥の姿は燕である。

 ふと不審鳥のことを忘れていたことを思い出し横を見ると、ただの変身能力なのにと言いたげであった。私はあくまで変身能力で我慢している設定なのを思い出し、燕の姿のまま咳払いをして不審鳥のほうに体を向けた。

「さあ、さっそくあなたの依頼を解決しちゃいましょう!」

「やけにやる気があるのですね」

 不審鳥は私を訝しむような小さな、しかし鋭い目線を向ける。

「せっかく不審鳥のために頑張ろうとしてるのに」私は見た目は変わったが、普段と何ら変わらない態度で他者(人じゃないから他鳥?)に接する。この態度は私を私たらしめる要素であり、いつでもどこでも大事にしてきた。

「す、すみません。では早速ですが鳥の姿でついてきてください!」

 普段なら罪悪感を覚えるのだろうが、変身能力を手に入れた私にとってはどうでもいいことであった。


 飛ぶことは案外簡単であった。人が呼吸をする方法を誰からも教わらなくてもできるように、当たり前の動作として大空に羽ばたく。普段から見ている青く、そして澄みきった青空がそこに広がっていた。

 日々、空の表情は変化して二度と同じ空は仰ぎ見ることができない。しかし、太陽は不変である。快晴の日はもちろん、たとえ雲があろうと、ましてや雨が降っていようとその光は地表に届く。

 私はその変わらずの空に感謝を覚える。いつもと圧倒的に違う今日も、なんら普通の日のはずなのだ。

「さっきから空ばかり見てますね」

 不審鳥はやけに周りを見ている。そして見られたくないところまで見られてしまったようだ。

「もしかして紫外線気にしているんですか?」

 前言撤回だ。こいつ見ているだけで何も察していない。私は文句を言おうとくちばしを開けようとするが、急に不審鳥は下に下降し始め、私はそのあとについていった。

 大きな木の上に止まり、ようやく口を開けたかと思うと「ここが私のエサ場です」

 どうやら私と一緒に浮気でない証拠をこの場で集めるらしい。ただどのような証拠があるというのだろうか。

「簡単なことです。私の妻にここのエサを食べさせれば納得するに違いありません!」

 私は不審鳥の言っている意味がわからず表情が固まる。

「ここのエサはとても美味しいので浮気するヒマがないんですよ」

 そう言うと、不審鳥はその小さな翼で向こう側を指す。その先にいたのは私達以外の小鳥たちであった。しかし、普段の小鳥のような可愛さはなく、虎視眈々と獲物を狙う百獣の王のような血相であった。

「私以外にここのエサを狙う輩です」

 不審鳥は私の方に今一度向き合うと、「あいつらよりも先にエサを手に入れて妻のもとに届けなくてはならないんです」

 真剣な目であった。少し思うところもあるが、不審鳥は本当に妻を愛しているのだろう。でなければこんな眼差しは向けることはできない。

「でもただ美味しいってだけで納得するものなの?」

 不審鳥は声を荒らげて言う「妻なら分かってくれます!」

 私はその気迫に少し押されてしまう。

 そんなことより、と不審鳥の声に促されて目線を木の下の方に向ける。そこにはキッチンカーがあった。

「そろそろ時間です。急降下する準備をしてください!」

 不審鳥は小さな翼を広げ、クラウチングスタートのような体勢になった。私はなんとなく気恥ずかしさを覚えながら似たポーズをした途端、ビュンッ、不審鳥の風切り音が私のスタートの合図となる。視線を先程の鳥たちに向けると、私達と何ら変わらない速度でエサに一直線に向かっていた。

 ブゥオン

 唐突の強風に見舞われ、先程の鳥たちだけでなく不審鳥も咄嗟に強風に煽られないように体勢を立て直した。しかし、それは鳥にとっての咄嗟の反応であり、鳥になりたての私にとっては知らないピンチであった。

「ちょっと!」

 私以外の鳥は減速し、なんと私は飛ぶ鳥たちの先頭になってしまった。その勢いのまま私をくちばしを広げて数口分しかないようなエサを咥え、空高く舞い上がる。

 その瞬間、輝く太陽が私の目に写った。


 不審鳥はエサを取った後の私を先導し安全なところまで連れてきた。

「なんで減速しなかったんんですか!」

 不審鳥は詰めるように私に起こる。

「ま、まあいいじゃない。結果良ければなんとやらだよ」

「それはそうなのですが・・・」

 不審鳥はまだ納得しきれていないようで少し首を傾げる。

「最悪、軌道がズレて地面に追突して死んでしまう可能性だってあったのですよ」

 それは初耳じゃん。なんでもっと早く教えないんだよ。やっぱりこいつあれだわ。聞かれていないから言いませんでしたって重要なこと何も言わないタイプだ。あ、腹たってきた。

「食べていい?」

「ちょ、ちょっと何怒っているんですか。あと妻に渡すだけですよ!」

 私がくちばしを開けて、食べようとするふりをすると不審鳥はさらにあわて更に慌てた。

「わ、わかりました。なんでもしますから!」

「ほんと?」

「本当ですよ。なんなら私の羽毛を賭けてもいいですよ!」

 命を賭けろよ、と言いたいところだが今から妻のもとに会いに行くやつに賭けさせるものではないか。

「約束は守ってよ。じゃあ私は家に帰っとくから説得頑張ってよ」

 不審鳥は今日久しぶりの笑顔を見せた。その笑顔はもちろんかわいかった。


 ◆◆◆


「ねね、ユカちゃんはコウ君のこと好きなんでしょ」

「え、なんで知ってるの?!」

「へへ、風の噂だよ」

 とある日を境にその少女は妙に恋愛事情に詳しくなってしまった。今では学校一の情報通と呼ばれているとかいないとか。

 しかし、そんな彼女をよそにとある噂が流れた。彼女がなぜそんな情報通なのか気になって後をつけてみた所、とたんに姿が消えてしまったらしい。近くには小鳥が二匹さえずり合っているだけだったという。

 

後日談

 私が不審鳥から聞いた話だと、コウ君七股してるらしい。

はて、ここまで読めたのですか。凄いじゃないですか。大抵の人はなんだこれで脱落すると思いますよ。結構あなたすごいです。ではこんな作品を上げるのはなかなかないでしょうが、またの日にお会いしましょう。アディオス

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