世界で時間切れになった私。
*コンッ*
裁判の槌が鳴り響いた。
その日の公判がようやく終わった。
弁護士として、今日の仕事もこれで終わりだ。
家に帰って、休んで、できれば家族と夕食でも取ろうと思っていた。
だが――
突然、何かがおかしかった。
腹部に冷たい感覚が走る。
ゆっくりと目を落とした。
何か鋭いものが、そこに刺さっていた。
目の前に立つ人物の顔を見つめた。
その顔は……見覚えがありすぎた。
「なぜ……?」
そいつは俺の前に、黙って立っていた。
これまで想像したあらゆる死に方の中で……
まさかこんな結末になるとは思わなかった。
俺の命を奪ったのは他人じゃない。
――妹だった。
ああ。
なんとも皮肉だ。
今まで俺は法廷で見ず知らずの人間を弁護してきたくせに……
自分の家族のことすら、まともに理解していなかったとは。
身体にかかっていた力が、ふっと抜けた。
だが一番驚いたのは痛みじゃない。
妹の目に浮かぶ、明らかな憎しみだった。
「いつもあんただ……あんた、あんた、あんたばっかり!」
「みんないつもお兄ちゃんのことばかり褒めてた」と、彼女は静かに言った。
「優秀な弁護士。誠実な人。家族の誇り。」
短く笑った。
「でもあんた、家にいたことなんてほとんどなかったじゃない。」
ああ。
「お母さんだっていつも私をあんたと比べてた! あんたを家族だと思ってた私がバカだった!」
俺は静かに息を吐いた。
「そういうことか。」
彼女はまた笑った。
「でもな……殺人の罪で法廷に立たされたとき、誰がお前を弁護するんだ?……俺の可愛い妹よ。」
身体からついに力が抜けた。
そして俺は床に崩れ落ちた。
周囲からパニックに満ちた叫び声が聞こえた。
人々が集まり始め、足音と騒ぎが部屋を満たしていく。
だが少なくとも……妹は逃げおおせたらしい。
もう俺が法廷で助けてやることもできない。
金か……それとも長年の憎しみがようやく理由を見つけたのか?
もうどうでもいいことだ。
床に広がる奇妙な温もりを感じた。
視界がぼやけ始める。
最後に見えたのは、俺の身体を取り囲む人々の姿だった。
皮肉なことに……
誰一人として、冷静に助けようとしている者はいなかった。
そしてすべてが暗くなった。
---
再び目を開けると……
俺は真っ白な空間にいた。
壁はない。
天井もない。
ただ果てしない白が広がっている。
だがその空間の中央に、テーブルがひとつ、椅子がふたつ、そしてまるでずっと前から俺を待っていたかのように、余裕の表情で座っている男が一人いた。
その男は美しかった。普通の人間の美しさではなく
……不自然な美しさだった。
あまりにも完璧すぎる。
もし推測するなら……
おそらく神だろう。
男は俺を見つめ、薄く微笑んだ。
「ジェームズ・ロドリゲス。四十五歳。著名な弁護士。実の妹に刺殺された。」少し間を置いた。
「なかなか興味深い人生だ。」
俺は目の前の椅子を引いて座った。
「全部知ってるくせに」と、俺は平然と言った。
「なぜわざわざ聞く?」
その笑みが少し広がった。
「弁護士というのは本当に厄介だな。」
「無駄な会話が嫌いなだけだ。」
男は肩をすくめた。
「いいだろう。本題に入ろう。」
男は何とも言えない目で俺を見つめた。
「転生に興味はあるか?」
俺は目を細めた。
「異世界に?」
「その通り。」
「馬鹿げた質問だな。死んだ人間に自由な選択肢があるのか?」
俺は椅子にもたれた。
「それで、お前にとっての利点は何だ?」
数秒の沈黙が流れた。
そして男は小さく笑った。
「本当に変わらないな、お前は。」
「お前のような存在が理由なく何かを与えるわけがない。」
男はそれを否定しなかった。
代わりに、こう言っただけだった。
「まあ……好奇心とでも思ってくれ。」
「好奇心?」
「お前のような人間が、異世界でどう生きるのか気になってな。」
「それで俺が得るものは?」
男はただ微笑んだ。
「お前は自分の意志のまま自由に生きられる。あちらの世界もお前が学んだものと同じ国法・世界法が使われている。」
俺はしばらく男を見つめてから、再び口を開いた。
「それで、俺は何として生まれる?」
「かつての栄光から没落した貴族の子として。」
男は微笑んだ。
「お前は状況をひっくり返すのが得意だと聞いているが。」
俺は静かに息を吐いた。
没落貴族、か。
問題、借金、政治、敵。
面倒そうだ。
だが……
さっき経験したつまらない死に方よりは、はるかに面白い。
「いいだろう」と、俺はようやく言った。
「やってみよう。」
男は満足そうに頷いた。
「良い判断だ。」
それから男は宙の何かに目をやった。
「転送は一分後に始まる。」
俺は少し黙ってから、もう一つ聞いた。
「一つだけ。」
「何だ?」
「その世界は――きれいか?」
男は眉をひそめた。
「どういう意味だ?」
「俺のような世界から来た人間が、すでに向こうにいるのか?」
数秒の沈黙。
そして男は微笑んだ。
「安心しろ。」
「お前だけだ。」
---
奇妙な感覚だった。
身体があらゆる方向に引っ張られるような。
回転しているような感覚。
そして――
意識が薄れた。すべてが暗くなった。
再び目を開けると、頭上には青い空が広がっていた。
穏やかな風が顔を撫でた。
土と青草の香りが鼻を満たした。
俺は草原の上に横たわっていた。
同時に、さまざまな情報が頭の中に流れ込んできた。
名前。家族。この身体の過去。そしてその記憶。
今の俺は――**ジュアン・ディーン・ヴァルテイロ**。
元公爵……ディーン・ヴァルテイロの息子。
俺はゆっくりと身体を起こした。
この記憶が正しければ……
この家はただの貴族ではない。
栄光から転げ落ちた貴族だ。
借金。政敵。地に落ちた名声。
俺はしばらく空を見つめた。
そして静かに笑った。
「面白い。」
二度目の人生、か。
いいだろう。
この世界が利己的で欲深い連中で溢れているなら……
少し背中を押してやるだけでいい。
互いに潰し合わせればいい。
俺が望む方向に……動かすだけだ。
立ち上がろうとした――
その時、森の方から叫び声が聞こえた。
「たすけてーーっ!」
焦りに満ちた声。
そして……すぐ近くだった。
俺は溜め息をついた。
「どうやら新しい人生は、早速面倒になりそうだ。」
だがそれでも……
俺はその声の方へ歩き出した。
この世界を支配するつもりなら――
どこかから始めなければならない。




