2話
「あ、あの。貴方は何者なんですか?」
外に出るために男についていっている最中、一条が沈黙に耐えかねて男に質問してしまう。
恐怖を紛らわす為にも、話をしたかったのかもしれない。
「俺の名前は一ノ瀬 蓮。こういった心霊絡みの事件を解決している」
一ノ瀬は振り向かず、ぶっきらぼうに答える。
「さ、さっきのはなんだったんですか?」
「それは後で教える。今は黙ってついてこい」
誰も喋らなくなる。聞こえてくるのは施設の中を響き渡る五人分の足音だけになった。
しばらく、歩き出口が見えてきた。
「出口だ!!」
四人は早く出たい気持ちが先行し前を歩いていた一ノ瀬を走って追い抜き、我先にと外に飛び出す。
「はぁ〜〜〜」
四人は緊張が解けたからなのか地面であることも気にせず、その場に座り込む。
少し遅れて一ノ瀬も出てくる。
「おい、そんな所に座ってないで移動するぞ」
そんな四人の様子を気にすることなく、移動を促す。
西条達は少し言い方にムッときたが、一ノ瀬が恩人であることを思い出し渋々立ち上がる。
「確か、近くに公園があったからそこで話をするぞ」
その指示に従い近くの公園に移動を開始する。
公園には案外早く着いた。
一ノ瀬は近くのベンチに座り込み、足を組み西条が話出すの待っている。
ここで、西条達はさっきまで暗くてよく見えなかった一ノ瀬の顔が街頭の光に照らされ初めてよく見えるようになり、思わず息を飲んだ。
顔は冷たい印象があるもののアイドルのように整っていた。しかし、それを差し置いて最も目が惹かれるのは、彼の目だった。こちらをじっと見つめ、まるで何もかも見通しているかのようだった。それらが合わさり、彼の雰囲気はどこか浮世離れしていた。
「聞きたいことがあるんじゃなかったのか?」
何も喋らない四人を不思議に思い一ノ瀬が問いかける。その問いかけに、気を取り直し今度は一条が問いかける。
「さっきのはなんだったんですか?」
「幽霊、あるいは亡霊、ゴースト、怪異なんて呼ばれてる存在」
一ノ瀬はその問いに簡潔に答える。その答えを気に入らなかったのか、さらに深く問いかける。
「だからそれは、どういった存在なんですか!?」
「世の中には知らない方が良いこともある」
一条の様子を気にせず再び、簡潔に答える。
「知らない方がって!」
「じゃ、じゃあ、俺から質問いいですか?」
ヒートアップしそうな一条を落ち着かせる為、斉藤が割って入る。
「貴方は何者で、あの施設の何の用があってきたんですか?」
「さっき教えただろ。俺の名前は一ノ瀬 蓮。普段は心霊絡みの事件なんかの依頼を受けて調査や解決している。あそこで何の用事があったかは依頼に関係することだから言えない」
一ノ瀬は面倒くさいそうに答える。
「もういいだろ。質問タイム終了。俺は帰る」
一ノ瀬は義理は果たしてとばかりに立ち上がり歩き出す。
「そんな!?まだ聞きたいことが!!」
「お前ら、高校生ぐらいだろ。補導されたくなかったら早く帰れ、もう肝試しなんてすんなよ」
そう言って、偶然近くを通りかかったタクシーを捕まえて、帰った。