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突撃!コール隊 〜推しがウザイ!なら世界を変えるまでだ  作者: 鷹雄アキル


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018 閉塞


 割れた窓から『抜け殻』たちが、なだれ込むように車内へ押し寄せてきた。


 俺は即座にオーバーロックを発動し、動きを一気に加速させる。


 世界がねっとりと粘つくようにスローになり、『抜け殻』たちの腕が、時間が止まったかのように鈍く動く。


 跳びかかってきた二体を蹴り飛ばし、その勢いのまま、恐怖で動けなくなっていた男を掴んで窓から遠ざけた場所へ投げる。


 そしてオーバーロックを解除。時間が一気に元に戻る。


 全身に疲労が押し寄せ、激しい頭痛が視界を歪ませたが……今は耐えるしかない。


 すかさずトビーがウインドプレスを放ち、窓から次々と侵入してくる『抜け殻』たちを押し戻す。


「ルクス! 入ってきたやつを──」


 言い終わる前に、ルクスがノクス・バインドを放ち、床から伸びた黒い手で『抜け殻』を縛り上げる。


 そこへラスクが斬りかかり、一刀両断にした。


「ラスク! 体液を浴びるなよ!」


「めんどうニャー!」と不満げに剣を振るい、


「きりがねー!」とトビーが叫びながらウインドプレスを放ち続け、


「もう、もちません!」とルクスが悲鳴を上げる。


「一旦、客車へ下がって!」とカルアが叫び、みんなを誘導しようとする。


 そのとき、背後でガラスの砕ける音が響いた。


 振り返ると、別の窓からも奴らの手がにゅるりと伸びてきていた。


 ——ダメだ、このままでは全滅だ。


 俺は再びオーバーロックを発動。思考を加速させて打開策を探す。


 連続使用で、脳に熱い鉄でも突き刺したような激痛が走るが、唇を噛みしめてなんとか意識を保つ。


 ゆっくりと流れる時間の中で周囲を見渡す。


 窓から侵入しようとする『抜け殻』たちが無数に手を伸ばし、カルアたちはそれを必死に剣で払い続けていた。


 ルクスが叫び、ラスクが斬る。


 背後の窓も砕け、奴らが今にも車内になだれ込もうとしている。

 

 車外は『抜け殻』の群れ。車内もすでに限界だ。


 逃げ場が、ない。


 ………。



 

 上か!


 その瞬間、俺は叫んでいた。


「トビー! 屋根を吹き飛ばせ!」


 トビーが即座に反応し、天井へエアースラッシュを放つ。


 続けてラスクが跳び上がり、崩れかけた天井に蹴りを入れた。


 ドンッという音とともに、屋根に人が通れるほどの穴が開く。


 夜の冷たい風が流れ込んでくる。


「みんな、上にあがるぞ!」


 

▽▽▽

 


 列車の屋根の上は、冷たい風が吹いていた。


 緊張で汗ばんだシャツが夜風にさらされ、肌にひんやりと張りつく。


 周囲は闇に包まれ、ときおり風に揺れる木々の影がちらつく。


 見下ろすと、『抜け殻』たちが列車に群がり、絡みつきながら蠢いていた。


 静けさの中、奴らの低いうめき声だけが響いている。


 ラウンジ車両の中は既に奴らで埋め尽くされ、天井へと手を伸ばす影まで見える。


 薄明かりの月の下、孤立したこの場所で——果たして、全員生き延びられるのか。不安が胸の奥に芽生える。


「斬っても斬っても立ち上がってくるってばー!」

 トビーが車両の上からエアースラッシュを放ちつつ叫ぶ。

 

「感染を防ぐには、放置できませんよね」

 カルアが隣に立ち、群れを見下ろしながらつぶやく。


「隊長、さっきみたいに焼き尽くすのは無理なんですか?」とルクス。


「やろうと思えばできるが、広範囲に撃つとみんなにも電撃が飛ぶ」


 一匹ずつ焼いていてはきりがない。効率が悪すぎる。


「じゃあ、ラウンジ車に閉じ込めて燃やせば?」

 ルクスが提案するが、ホッジが慌てて口を挟む。


「ラウンジ車を吹き飛ばしたら、先頭の機関車まで被害が出る! 列車が動けなくなるよ!」


 それはマズい。じゃあ、後ろはどうだ?


「最後尾の貨物車なら大丈夫か?」

 ホッジに確認する。

 

「それでしたら……大丈夫。なんだったら切り離しちゃえばいいし」


「問題は、どうやって奴らを閉じ込めるか……」


「奴ら、人に反応してるみたいだけど、視覚か?」

 俺は例の男に訊いた。

 

「わかんねえな。音に反応してるって話もあるし、血の匂いに引き寄せられるって噂もある。だが、生きてる奴が近くにいれば確実に寄ってくる」


 結局、はっきりしたことはわからない……。


 だが、生きてるものに反応して動くのは間違いなさそうだ。


 俺は皆を集め、指示を出す。


「さっき焼いた貨物車は扉が吹っ飛んじまった。だから、最後尾の貨物車に奴らを閉じ込めて、まとめて吹き飛ばす」


 みんなの顔を見回す。

 

 ——大丈夫。いつもの顔だ。


「まず、念のため貨物車の天井にも通り穴をあけておけ。中の荷物は外に放り出せ」


「任せるニャ!」

 

「奴らは、俺とトビーで貨物車まで誘導する。トビー、右側を頼む」


「了解」

 トビーが即座に頷く。


「その後、奴らを車内に誘導して、上から騒いで注意を引け。ある程度集まったら、まとめて吹き飛ばす」


 俺はもう一度、皆の顔を見回す。

 誰も目を逸らさず、不安も焦りもない。


 ——いい顔してるぜ。


「細かいとこは、いつも通り。コール隊流で臨機応変に対応しろ!」


「「「「「応ッ!!」」」」」


 ゾンビぶっ飛ばす作戦、始動! 俺たちは一斉に動き出した。




お読み頂きありがとうございます!

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