表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
突撃!コール隊 〜推しがウザイ!なら世界を変えるまでだ  作者: 鷹雄アキル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/368

016 ゾンビ!?


【コールside @魔力列車】


「撤退だ! この車両を出ろ!」


 歯を剥いて襲いかかるゾンビを蹴り倒しながら、俺は叫んだ。


 ラスクの首根っこを掴んで貨物車の外へ放り出し、即座に扉を閉める。


 ドンッ! 内側からの衝撃で扉が激しく揺れた。

 

 あの化け物が体当たりしてるのだろう。留め具がきしみ、俺は背中で扉を押さえた。


「なんですか、あれはっ!」

 地面にへたり込んだクラリスが、声を裏返す。隣ではルクスが剣を構えていた。

 

 扉が大きくたわみ、叩く音がどんどん大きくなる。


「出てきたらバラバラにしてやるニャ!」


 ブレードクローを構え、ラスクが不敵に笑うが——


「ダメだ! 奴らに直接触れたら感染のリスクがある!」


 俺の言葉に、ラスクが目を見開く。

 

「感染って……どういうことニャ?」

 

 彼女は、手元のブレードクローをじっと見つめる。

 

「噛まれたり傷を負わされたら、ゾンビになる可能性があるってことだ」


「ゾンビ? なんだかわかんないけど、それはヤバいニャ……」


 この世界のゾンビに感染力があるかはわからない。だが、前世のゲームを考えれば、噛まれたり傷を負わされれば感染する可能性が高い。


 実際、さっきのゾンビも噛みつこうとしてきた。


「とにかく、“直接触れる攻撃”と“体液の飛沫”には気をつけろ!」


「体液って……血とか?」

 クラリスが不安げに聞いてくる。


「ああ。正確には、目・口・傷口から体内に入るとヤバい。そこを守れば、感染のリスクは抑えられるはずだ」


 ルクスとクラリスが真剣な顔で頷き、ラスクは「面倒だニャー」とぼやきながら、ブレードクローを外して腰から剣を抜いた。


 その間にも扉は激しく揺れ、金具が今にも外れそうに歪んでいる。


 ……時間がない。


「……やるしかねぇな」


 俺は「下がってろ」と皆に伝え、貨物車の扉に手を当てる。


 目を閉じ、加護精霊に意識を向けながら、空気中の電気エネルギーを体内に取り込んでいく。


 地面、風、木々——自然の中にある微細な電気が、肌を通して吸収されていく。

 体がビリビリと帯電し、まるで人間バッテリーになったような感覚。


 ——全部、焼き払う!


 意識の奥で、炎にも似た衝動がうねる。


 俺の体が青白く光り、皮膚の下で雷が跳ねるように火花が散っていたはずだ。


 溜めたエネルギーを一点に集中し、扉に添えた手から一気に解き放つ。


 ——ヴォルト・クラッシュ!


 電撃が爆ぜ、貨物車全体が光に包まれる。


 閃光と轟音が空気を裂き、次の瞬間——


 バァンッ!!


 扉が吹き飛び、黒煙が天へ噴き上がった。


 俺の体は、爆風で宙を舞う。

 

 オーバークロックでギリギリ扉を蹴って直撃は回避したが、その反動で空高く跳ね上がってしまった。


「ノクスバインド!」


 視界の端で、ルクスが地面に手をついてスキルを発動。


 黒い腕が地面から現れ、俺の体をがっしりと掴む。次の瞬間、ラスクがジャンプして俺を受け止め、地面に着地した。


「悪い、助かった」


 息を整えながら礼を言い、俺はまだ煙を上げる貨物車に目を向けた。


 扉は吹き飛び、内部には黒焦げになったゾンビの残骸がいくつも転がっていた。


「こっちは、もう動かないニャ」


「こっちの方も、大丈夫です」


 ラスクとクラリスが車両の様子を確認しながら、報告してくる。


 俺はぐらつく膝を押さえながら立ち上がり、クラリスに声をかけた。


「義兄さん、大丈夫……?」

 ふらつく俺の肩を、クラリスが支える。


「俺は大丈夫だ。とにかく先頭車両のホッジに現状を伝えて、機関の起動を急がせてくれ」


「わかった!」

 

 クラリスが先頭車両へと走る。その後ろで、ラスクとルクスが俺の方へ駆け寄ってきた——が。


 そのさらに後ろ、煙の向こうから、黒い影がふらりと現れる。

 

 『貨物車は二両ある』——カルアの報告が脳裏をよぎる。


 二両目の貨物車。その開け放たれた扉から、ゾンビの群れが這い出してきた。


 奴らは次々に車両から崩れ落ち、地面に叩きつけられながらも、よろめき、呻き、立ち上がる。


 そして、のろのろと、だが確実に、こちらへと歩を進めてくる。

 

「後ろだ! まだ来る——!」

 

 俺の叫びと同時に、黒煙の向こうから腐臭が押し寄せてきた。


 

▽▽▽


【カルアside @トオマの森】


 眩しい閃光が、夜の森を真昼のように照らした。

 直後、空気を切り裂く轟音が全身を包む。


 思わず足を止め、身を低くかがめた。


 横から草をかき分けて現れたのはトビー。彼も同じように腰を落とし、隣に並んだ。


 その背中には、さっき気を失った男がぐるぐる巻きにくくられている。


 ——いまの青い閃光、たぶんコールね。


「なんスか今の……雷じゃないっスね?」


「列車のほうからよ。急ぎましょう!」

 そう言うなり、私は駆け出した。

 

「ちょ、ちょっと待って! こっちは荷物抱えてんスけどー!?」


 背後からトビーの情けない声が追いかけてくる。でも、振り返る暇なんてない。


 胸がざわついて、呼吸が浅くなる。足がもどかしいほど遅く感じる。とにかく早く、早くコールのもとへ!


 列車が近づくにつれて、鼻をつく匂いがする。

 焦げた木の匂い。油の匂い。そして、もっと嫌な匂い――これは、焼けた肉……?


 耳に飛び込んできたのは、コールの怒鳴り声と、低く唸るような音。

 その不協和音が、不安をさらに煽ってくる。

 

 森を抜けた瞬間、視界いっぱいに広がったのは、煙を上げる列車と、その前で剣を構える仲間たちの背中。

 

 そして、彼らが対峙しているのは——あれは……人?


 一見すると人間。でも、動きはギクシャクしていて、肌は土色、服はボロボロ。髪も抜け落ち、目は焦点が合っていない。


 それが30体ほど。

 ゆらり、ゆらりと、夢遊病者のように、両手を前に突き出し、ふらふらと歩いてくる。


 ……違う。あれは——死人が、歩いている?


 武器も持たず、よたよたと迫ってくるその群れに、コールたちは慎重に距離をとって対応していた。

 下手に攻めれば、こっちがやられる——そんな迷いが見える。

 

「な、何スカあれ!?」

 トビーが叫んだ。


「大声出さないで! まだ敵の全容が分からないのよ。とにかく、まずは隊長のところに向かうわよ!」


 振り返りざまにトビーに指示を出し、私は身をかがめて駆け出す。

 敵に気づかれないよう、風下に回り込み、大きく迂回していく。

 草を踏む音も抑え、息を潜める。胸の鼓動だけが耳に響く。


 やがて、コールの背後に滑り込む。


「隊長!」


 呼びかけようとした、その瞬間——


 コールが振り返り、鋭く叫んだ。


「みんな車内に戻れ! 一時撤退だ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ