私の弟
教室のドアを開けると一番最初に聞こえたのは耳をつんざくような高い声だ。
「うわっw口無しじゃん!何できたの?あ!生徒だったからか!」
「それは言い過ぎだってぇww!」
「だってあいつうちらには喋らずに先生には喋るじゃん」
あーあー、五月蝿い。私は何も聞こえないふりをして席に着く。
本を読んだり、イヤホンをつけて音楽を聴いたり、できるだけ無視した。
久しぶりに学校に来たからか、とても疲れた。
私は何か喋りかけられる前に知り合いのいない場所を目指した。
渡り廊下の窓から見えた木造のの建物が見えた。
今は使われていない旧校舎だ。
あまり入ったことがないので興味が湧いてきた。
「行ってみようかな。」
薄暗い階段にステンドグラスの窓から差し込む色とりどりの光が足元に落ちてくる。
少しほこりっぽいが教室に入ると暖かい日の光が入ってきて落ち着く。
「教室、戻りたく無いなぁ。」
先生たちに言う必要はないだろう。私の家の状況はわかっているはずだ。
「よしっ!授業すっぽかしちゃおう!」
私物を持ってくるのを忘れた。今度からは持ってこよう。
何もすることがないので、最初空を見たり黒板に絵を描いたりしていたがだんだん飽きてきて机に突っ伏していた。
「昔、お母さんとお父さんが病院で歌ってた会話を曲にしたなぁ。」
「歌詞はあんまり覚えてないけど、こんな感じだっけ…。」
らら〜らり〜るら〜 らら〜らり〜るら〜 らら〜らり〜るら〜
そんな感じで適当に歌ったりして時間を潰していると、
「キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン」
今日の授業終わりかぁ、もう少しゆっくりして行ってもいいよね。
「リリねぇ〜!いるぅ〜?」
ああ、そっか。レン家で1人になっちゃってたんだ。
「…レン!」
「あ!リリねぇ!」
「…あのねぇ、いつも言ってるけどリリねぇはやめて。せめてリリィねえさんとかにして?」
「えー?だってぇ、リリねぇは、リリねぇじゃん。」
「はぁ、もういいよ。」
「ここで何してたの?」
「…いじめ回避。」
「そっか、リリねぇも僕と同じなんだね。」
「またいじめられてるの?」
「それはリリねぇもでしょ。」
「……おやつ無しね。」
「あはっ!ごめんって!」
「本当にレンって私の弟?」
「何だよ、半分血が繋がってないからって、正真正銘リリねぇの弟だよ。」