私と言う人間
いつも晴れてるのに雨が降る空。見慣れた水滴のついた窓。目の前にある水滴に映るのは醜い私だ。
ため息をつきながら降りる階段さえも青く氷のように透けているのに、私は周りと違う。
見るだけで気が重たくなるような灰色の目。まるで老人のような色素のない白い髪。
誰でも嫌がるはずだ。軽く朝ごはんを済ませてから今日も「ウソの見た目」を被る。
カラーコンタクト、ウィッグどれも母が子供の頃から作ってくれているものだ。
とても優しく、家族想いな普通の人間だった。父が亡くなるまでは。弟のレンを産んでからは部屋から出てこない。
宇宙の身支度をして一緒に家を出る。
「おかーさん!行ってきます!」
「……」
相変わらず返事無いな。息子に挨拶をされて返さないなんて、大丈夫なんだろうか。
「リリねぇ?大丈夫?」
「ん?あ、あぁ。大丈夫だよ。」
弟と母以外に本当の私を知っている人はいない。気を許せる人も弟だけだ。
宇宙に弱いところを見せないように平気を装いながら、一緒に駅に向かう。
駅が混んでいるのは珍しい。背の高いおじさんとぶつかり転びそうになる。いつものことだけど、今日は嫌だなぁ。
今日は雲ひとつない天気雨。皆んなだったら「いい天気」と思うだろう。私は正直、気が重い。普段より自分の
見た目が目立ってしまう。でも今そんなこと関係ない。「ウソの見た目」を今はしているから。
あぁ、明日からちゃんと授業かぁ。授業がすごく嫌と言うわけではない。まあ勉強が好きと言う訳では無いが…
ずっと教室にいるにが嫌なんだ。憂鬱な想いで、始業式を終えた。