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第漆拾漆話 漂着

 まだ、まだ終わってない。


 私は決して諦めない。


 姉さまに認めてもらわなければならない。


 お姉さまを(たぶら)かしている人間共を消して。


 ......それで、何がしたかったんだっけ?


 覚えてない。なんであんなのに執着しているのか、自分でも分からない。


 昔の記憶も薄い。大切な存在だったはず。


 何がどう大切だったのかも、覚えてない。忘れてしまった。何もかも分からないけど、諦めることは出来ない。今の私を突き動かすのはそれだけだ。


 だから、諦めない。


 首を落とされても諦めない。


 私は、最強の......最強の............。


 <<>>


 嵐はそう簡単には止まない。例え嵐を発生させた異常な何かが消えたとて、一度風に乗り安定した気流が忽然(こつぜん)と消え去ることはない。


 しかし、今はレヴィアタンを撃破できたのだ、とみな歓喜している。巨影を映すソナーに異常な活動は見られず、ただただ水底へと沈降していくのみ。


 砲撃潜水艦も観測を続けているが、完全に首を両断。生きているようには見えないと報告が入ってきている。


"武蔵より大和。陽動艦隊の救援を打診します"

「なに、打診せずとも元より救援に向かう予定だよ」


 陽動艦隊の現在地を知るため、大和が通信を試みるも失敗。分厚い曇天と絶え間なく降り注ぐ稲妻のせいで、通信が阻害されているようだ。


「参ったな......航空機もこの天候じゃダメだな。どうしたものか......」

"私の通信であれば届くと思います。暫しお待ちを"


 大和に伝え、数十秒。人間には観測できぬ不明な通信手段を以て、遥か彼方の友と通信が開始される。


"こちら武蔵。水雷戦隊、応答せよ"

"こちら水雷戦隊。どうぞ"

"大和以下、統合打撃艦隊はレヴィアタンと交戦。これを撃滅し、これより陽動艦隊の救援に向かう。水雷戦隊の状態と現在地点を共有されたし"

"了解した。現在我々はクラーケンを撃退の後、シーサーペントと交戦中である。現在地点をそちらに送る。大和以下、彼らと共有されたし"

"感謝する"


 武蔵が水雷戦隊より送られた現在地情報をキャッチ。それを大和へと送信し、大和が全艦へと共有していく。


「......便利なんだか面倒なんだか......彼女らの通信には入れれば手間は掛からんのだがね」

「まぁ彼女たちの通信手法は独特ですから。真似できるものなら是非したいものですよ」


 そうこうしているうちに、座標の確認と航路の策定が完了。艦隊の同調を足が速めな重巡洋艦に切り替え、速度重視で荒れる海上を突き進む。


"報告では、クラーケンは撃退と聞きました。撃破ではない様子です。対潜警戒を厳にした方が良いでしょう"

「そうだな......奇襲されてはたまらない。戦艦のソナーじゃやや力不足だろうが、対潜警戒は厳としよう」


 陽動艦隊の位置はそこまで遠くも無いが、近くも無い。この嵐は特異的なものなのか、暴風雷雨や波の激しさが極端に変わる。


 恐らくレヴィアタンを中心としていたのだろうが、レヴィアタンが鎮座していた地点から二〇キロも離れれば嵐の勢いはかなり衰える。


 三〇ノット以上の高速で航行すれば、二〇キロの境界線も近く、グラデーションがあるとはいえ嵐の激しい海域と緩やかな海域とが急激に切り替わるのは中々に違和感がある。


 そして、三時間も航行すればもう嵐の影響は少なく、なんとか観測機を飛ばせそうだ。


 不調気味だったレーダーも回復。同時に遠方で展開する多数の機影を捉え、ソナーはシーサーペントと認識出来る細長くくねる巨影を映し出す。


「レーダー、ソナー、共に感アリ。レーダーに映る機影はIFFに応答しませんが、先に報告された陽動艦隊の座標及び予測進路と一致しますので、友軍と思われます」

「となると、ソナーはシーサーペントか......」

「細長くくねった形はシーサーペントくらいなものでしょう......どうしますか? アスロックで牽制射撃を行いますか?」

「......いや、その前に旗艦と通信出来るか試してくれ」

「了解。繋ぎます」


 通信を接続すると共にノイズが発生。やけに強いノイズを対処していくうちに、雑音が多いながらも通信が回復した。


『こちらブッチャーボス。聞こえているか? 送れ』

「こちら大和、感度良好。送れ」

『よし、現在ブッチャーズはシーサーペントと交戦中。クラーケンは取り逃がした。何かあったのか? 送れ』

「我々統合打撃艦隊はブッチャーズ支援のため行動中だ。そろそろそちらのレーダーにも映る頃だろう。そこで、アスロックによるシーサーペントへの牽制射撃を行い、終端誘導をブッチャーズに任せたい。出来るか? 送れ」

『............確かに、レーダーで確認した。終端誘導は問題ない。我らの盾はまだ生きている。存分に撃ってくれたまえ』


 とはいえ、戦艦にアスロックを搭載しているのは大和とアリゾナⅡくらいのもので、アリゾナⅡも搭載数は少ない。ほとんどは大和のものになる。


 戦艦にアスロックを搭載すること自体がある意味おかしなことではあるのだが、日本は対潜戦闘についてはガチだ。戦艦だろうがなんだろうが対潜装備を搭載している徹底ぶりが、まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。


「終端誘導はあちら任せだ。アスロック発射準備......そうだ、ネヴィル君。砲弾も一緒に同調出来るかね? 射程と、終端誘導だ」

「......二つ同時にとなると、少々精度に問題が出ますが」

「それは......誤射はあり得るか?」

「その心配はございません」

「よろしい。では、頼んだよ」


 ミサイルと主砲の同調で射程を伸ばせるのであれば、誘導も同様に可能なはずだ。


 危険はあるが、上手く行けば一撃でシーサーペントを真っ二つに出来る。


「全艦主砲射撃用意!! 同調射撃にて、シーサーペントを撃破する!!」


 <<>>


 ──旧トルコ、ブルガリア国境近傍──


「一斉射撃、撃てェ!!」


 号令に合わせ、揚陸された列車砲と二〇三ミリ榴弾砲が一斉に射撃。


 前線を構築しているエイブラムスとブラッドレーの車列からは白リンを用いた煙幕弾が絶え間なく撃ち込まれ、有毒な白い霧が立ち込める。


 高射砲が航空猟兵種(ヴンダーヴァッフェ)の展開高度へと白リン弾を撃ち込み、航空猟兵種(ヴンダーヴァッフェ)が火だるまとなりつつ落下。前線近くに展開する航空猟兵種(ヴンダーヴァッフェ)の群れに穴が空く。


『タイガーズよりCP、白リン弾幕一定濃度に達する。航空支援の可否を問う。送れ』

「CPよりタイガーズ。これより一〇分間、A-10による航空支援を実施する。その場で待機しつつ、撃ち漏らしに対処せよ」


 滑走路で待機していたA-10が一斉に離陸。大量の無誘導爆弾とロケットポッドを抱え、AH-1アパッチの隊列を追い越し爆撃を開始。


 反転し三〇ミリガトリングの掃射を行いつつ、一時離脱。地上の装甲部隊が牛歩の歩みで前進。砲兵の一斉射撃確認後、間髪入れずに白リン弾による弾幕で群体の突撃を抑え込む。


 白リン弾幕の消えぬうちに、AH-1アパッチが攻撃を開始。無誘導ロケット弾と機関砲を惜しみなく投射。打ち切ると共に反転し全速離脱。


 上空の白リンが薄くなるギリギリでA-10が再び三〇ミリガトリングを掃射。ロケット弾の雨を降らせつつ、基地へと帰投していく。


『タイガーズよりCP。敵前衛の殲滅を確認。APCの展開を要請する。送れ』

「CPよりタイガーズ。APCの展開を承認」


 後方で待機していたAPC部隊が前線の装甲部隊と合流。歩兵を展開し、雑多に残る異生物群(グレートワン)の小型陸上兵種を掃討していく。


 足が遅く、処理に手間がかる重装甲殻種(ファントム)はレールガンの狙撃により転倒。


 ドローンによる低空偵察を併用しつつ、少しづつ前線を押し上げていく。


『タイガーズよりCP。前方に民間人を確認。保護しますか? 送れ』

「民間人?」


 既存の生物一つ居ない環境下での民間人発見の報せに、セルゲイは疑念を抱かざる負えない。


 明らかに怪しい。エカテリーナの件もある。本音を言えば、いっそ敵と断定してここで始末しておく方が不安の種を抱えずに済む。


 しかし、前線の兵士からすればそういうわけにもいかないだろう。


「......CPよりタイガーズ、民間人を保護せよ。ただし、警戒は怠るな。送れ」

「タイガーズ了解!!」

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