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第漆拾肆話 反攻の狼煙

 ── 一一月二五日 アンツィラナナ港沖合──


「潜水艦との同調完了しました。浸水チェックも問題ありません。いつでも行けます」

「いつも頼ってばかりだが......今回も頼むよ、ネヴィル君」

「問題ありません。私の役目ですので」

「......全艦、潜航準備!!」


 大和以下、機関に損傷を受けたリバティを除いた四隻の米戦艦。加えて武蔵、金剛、ビスマルク、プリンス・オブ・ウェールズ。


 亡霊艦隊は数こそ揃っていたが、先のコモロ諸島沖海戦で大半が撃沈。或いは損傷が酷く、戦える状態ではないというのが武蔵の言い分だ。そこで、損傷も少なく十分に戦える状態の四隻のみを選別したと。


 補助には大戦期の基準において、重巡洋艦に分類される規模の巡洋艦のみを厳選。防空巡洋艦は火力不足と判断し、陽動部隊へと編入された。


 陽動艦隊は亡霊艦隊の駆逐艦及びイージス艦で構成され、今作戦では陽動部隊として活動。亡霊艦隊機動部隊からの航空支援を伴いつつ北進を行い、潜水戦隊(ウルフパック)と連携。シーサーペント、クラーケンの討伐がサブ目標となっている。


 作戦の主力となる統合打撃艦隊は戦艦九隻、巡洋艦一二隻の少数精鋭艦隊。その少数精鋭をレヴィアタンの下まで送り届けるのは、たった六隻の潜水艦。


 U-864、U-486、伊四〇一、スルクフ、HMS.M1、HMS.M2。


「......なぁ武蔵、一つ聞いてもいいかね?」

"なんでしょうか?"

「なぜこうもゲテモノ揃いなんだ??」


 U-864、U-486、伊四〇一はともかくとして。スルクフは二〇三ミリ連装砲を積んだ、言うなれば砲撃潜水艦。HMS.M1に至っては何をトチ狂ったのか三〇五ミリ砲を積んでいる。同型艦たるM2は主砲の代わりに水上機を載せている。なお、M2の格納庫は空である。


"通常の潜水艦はほとんど撃沈されてしまいましたから......それに、南シナ海やアラビア海などに分散配置されて、直近ですぐに合流できる潜水艦は彼女たちだけだったもので"

「ゲテモノ故に使い道にも苦心して放置されていたわけか......運がいいのか悪いのか......まぁ、同調潜航に影響はない。このまま行こう」

"彼女たちは活躍も出来ずに沈んだものですから、あなた方と戦えることを喜んでいますよ"

「......なるほど、ありがたい話だね。まったく」


 さしものレヴィアタンも砲撃潜水艦の扱いには苦心して、結局出番も無く放置されていたというわけだ。


 そんな彼女たちが、今やレヴィアタンを討つための心強い味方となっている。なんともまぁ、運命とは予測できないものだと思い知る。


 数分沈黙して、深呼吸。


「さて、作戦開始だ」

"武蔵より水雷戦隊各位へ。作戦開始。繰り返す。作戦開始"


 武蔵よりの号令は亡霊艦隊の駆逐艦を経由し、陽動艦隊全体へと響く。亡霊艦隊駆逐艦らが先陣を切り、その後ろから防空巡洋艦、イージス艦と続いていく。


 フジツボと海藻に侵され、穴ぼこだらけの亡霊艦。並び立つは未だなお現役の最新鋭艦たち。


 黒い煙を吐いて進む彼女たちの背中は、どこか悲しげだ。ただ単に、ボロボロだからそう見えるだけかもしれない。


「............一時間後に我々も出撃する。それまでみな、英気を養ってくれ」


 <<>>


 ──旧ルーマニア、ブカレスト近郊──


 山脈の如く巨大な骸は、ここブカレストからでも容易に眺めることが出来る。


 推定全高は優に六キロを越える正真正銘の化け物だ。直前まで溶岩の如く赤黒く発光していた瞳も、今や冷え固まり岩石となんら変わりはない。


 撃破時に身体中から吹き出ていた溶岩流も既に流出は止まっている。


「ふむ、こうして見るとただのバカでかい亀だな」

「えぇ、亀ですわね。それもエベレスト並みの火山を背負った」


 現地に視察に来ていたセルゲイに、ノルトフォークは欠伸をしながら答えを返す。


「それで、作戦目標は達成出来たわけですけれど。これから先はどうしますの? 撤退? 進撃?」

「頃合いだし撤退......と行きたいところだが、折角ここまで進めたのに完全に撤退するというのもな。地震の影響かは知らないが異生物群(グレートワン)も今は鳴りを潜めている。一度防衛ラインを下げる。情報を収集した後南下。イスタンブール要塞に集結している群体の包囲殲滅を図る」

「また強襲上陸でもしますの? 貴方のやり方じゃ、地上からの進撃ではアレといい勝負ですわよ」

「それしか無いだろう。幸い、トルコ海軍も武器弾薬に余裕はある。まだ暴れられるさ」


 身勝手な米陸軍からも、より多くのデータが欲しいと進撃には意欲的である。現状、もう少しくらいは米軍の陸空戦力の潤沢な援護が期待できる。


 白リン弾の在庫も有り余っている。もう五回程度、A-10を暴れさせてやれるだろうか。


「ちなみに米陸軍の列車砲。あれ大丈夫なんですの? さっき様子を見に行ったらウランの臭いが漂ってきましたわ」

「......大方地震で原子炉に異常でも起きたんだろう。まぁ、どうせこの辺の土地なら汚染されてもさほど問題は無い。どのみち復興には最低でも五〇年以上掛かる試算だからな。その頃には多少の汚染は回復してるだろ」

「貴方も相当雑ですわね。ここがロシアの土地でしたら怒り狂ってたんでしょうに」

「そりゃ勿論。祖国では好き勝手させんよ」


 米軍が持ち込んだのは、試作三六〇ミリ超電磁加速砲用プラットフォーム。現状の防衛線でも活躍している一六インチ列車砲を土台として開発された、次世代の超長距離精密狙撃兵器だ。


 しかし、このレールガンは原子炉を牽引している。図体は無駄にバカデカく、目立つ上に装甲なんて張る余裕も無いのに足は遅いと来たものだ。


 とはいえ、火力と狙撃精度は従来の列車砲とは段違い。射程こそ大して変わるものではなかったが、命中率は驚異の六〇パーセント。電子計算機の性能が上がれば、この値は更に上昇する。


「そういえば、ジャガーノートの様子は?」

「ジャガーノートちゃんは特に変わった様子はありませんわ。まぁ、いつも通りですわね。強いて言うなら少し寂しそうに見えますわ」

「寂しそう......まぁ、確かに。ルカは唯一の眷属だって話だしな」

「ま、貴方も何かしら心掛けてあげなさい。話し相手ぐらいなら出来るでしょう?」

「んなこと言ってもな......何を話すべきか............いや、まぁいい。ブラフマーは一旦休んでカロリーを補給しておけ。次いつ異生物群(グレートワン)が来るか分からんからな」


 まさかブカレストまで浸透できるとは思わなかった。当初の予定ではコンスタンツァ周辺のみを確保するはずだったというのに、航空支援とレールガンがあまりにも良い働きをしてくれた。


 このまま順調に進撃できれば、イスタンブール以西の旧トルコ領辺りまでなら解放出来そうだ。予備兵力とは応相談になるが、反撃の兆しが見えてきたのは僥倖(ぎょうこう)と言えるだろう。


「さて、明日は何キロ進めるかね......」

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