第漆拾参話 全球共鳴
一一月二二日、二二時一五分。アラビア半島、中東、トルコにて地震発生。マグニチュード一〇を観測。
二二時二〇分。中央アジア、インドで地震発生。マグニチュード九を観測。
二二時二八分。東アジア全域でマグニチュード七を観測。
二二時三〇分。南北米大陸にてマグニチュード八を観測。
二三時二一分。各国政府及び国連国際防災戦略事務局が全ての沿岸地域からの避難勧告を発布。
一一月二三日、零時四分。アジア、中東、南北アメリカ全地域にてマグニチュード六を観測。
零時一二分。各国政府は沿岸地域の住民の強制避難を開始。
零時三四分。アフリカ大陸沈没。海抜マイナス三〇〇〇メートルまで沈降。
二時七分。敷設された海底ケーブルのうち二〇パーセントが断線。
五時四四分。地中海沿岸からアラビア海沿岸にかけて四〇〇メートル級の津波を観測。沿岸部から数十キロに渡る地域が壊滅。
六時二〇分。インド洋沿岸、南米、北米東海岸に八〇メートル級の津波が到達。沿岸地域壊滅。
九時五七分。東アジア全域に二〇メートル級の津波が到達。沿岸地域壊滅。
一二時一七分。南北米大陸西岸に一〇メートル級の津波が到達。沿岸地域に致命的な打撃。
一五時四分。各地域にて火山活動が活発化。多数の噴火を確認。
一六時三三分。全地域でマグニチュード八を観測。この地震に伴う津波を観測して以降、特異的な地震活動は現在観測されていない。
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── 一一月二四日 マダガスカル島北端 アンツィラナナ港──
あの後、ルカの活躍により日米艦隊及び亡霊艦隊はシーサーペントを退けることに成功した。とはいえ、撃破には至らず。
ジグザグジグザグと、航路を変え、シーサーペントの索敵から身を隠しながら撤退を続けた。
信じられない程巨大な津波が来た際にはネヴィルの能力が良く役に立ってくれた。潜水艦と同調することで艦隊を丸々潜航させ、ボロボロになりながらもなんとか最も近いアンツィラナナ港に帰投できた。
とはいえ、先の津波が直撃したせいか。アンツィラナナ港は跡形も無く消し飛んでいた。ありとあらゆる物資、人員、施設が消え去っていたのだ。加えて内陸部の奥深くまでも津波に攫われたようで、住民たちが避難出来たことを願うのみだ。
高野大佐はありあわせの物で用意したお墓に黙祷を捧げ、荒れ果てた海岸を見つめ直す。
「何も残ってない、か......」
ここには建物の残骸すら残っていない。死体も無い。緑も無い。何も無い。
空はまだ曇っている。二日前からずっと曇ったままだ。この空模様がマダガスカル島周辺だけの異常な現象なのか、全世界的なことなのかは分からない。だが、マトモに陽の光に当たることも出来ないのは中々気に病むものだ。
それにしても、ここ最近は空気が悪い。どこからか流れてきた火山灰が降り積もり、艦の外の空気はやや埃っぽく、煤けた臭いが漂っている。
どうやらどこかで火山でも噴火したらしい。しかし、アフリカの南端たるマダガスカル島にまで灰を降らせるとは。一体全体どこの火山だろうか。
一応、艦に備え付けの通信設備で本国と通信できないことはない。だが、現状はどこも慌ただしいようで、情報が錯綜し混乱し、正確性の高い情報かどうかというのをこの場では確認しきれない。
「高野大佐......武蔵が呼んでいます。今後の作戦について話しがあると」
「分かった。今向かう」
武蔵が言うには、これまではレヴィアタンの洗脳により自由に動けなかったという。元々敵同士死闘を繰り広げた手前、そう易々と信用してよいものか。まだ迷うところだが、現状は貴重な打撃戦力と航空戦力を潤沢に備えている。
無下には出来ない。
武蔵は戦艦。彼らにとっての言語はモールス信号だが、今では通常の無線通信が出来るようになった。
「こちら大和、高野大佐だ。今後の作戦について話しがあるとのことだが、何か案でもあるのかね?」
"思い付きではありますが"
「......分かった。話してみてくれ」
"ジャガーノートの眷属──ルカ殿とレヴィアタンの交戦の際、レヴィアタンは身体に大きな裂傷を負ったのを確認しています"
「それはルカ軍曹からも聞いているが......それは人間体での話ではないのか? 現状のレヴィアタンに、通常攻撃は通用しないとネヴィル君から聞いているが」
"受けた傷が、あの海獣と化したレヴィアタンにも残っていました。あの巨躯に比べれば小さい擦り傷程度ですが、確かにこの目で確認しました"
「それで、その傷口であれば攻撃が通ると踏んだわけだね?」
"正に"
ネヴィルはルカこそが可能性だと言った。レヴィアタンを討伐しうるだけの神性を持つ可能性のある、神の卵だと。
だが、一軍人としてそのような不確定要素に頼り切るのは危険過ぎる。可能性を前提にしてはならないし、他に現実的な策があるのならそちらを優先するのが軍人であり軍事というものだ。
「............分かった。作戦を考えてみよう」
"その前に一つ、こちらから案があります"
「聞こう」
"レヴィアタンの周辺海域は現在も嵐に呑まれていると偵察隊から報告が上がっています。我々が初遭遇した時と変わらぬ様子とのことでしたので、恐らく水上及び空中からの接近では同じ目に遭うだけでしょう"
確かに、今もなお海と風と荒れ狂っている状況では照準もままならない上に航空支援も期待できない。何より、シーサーペントに対してあまりにも無力だ。強行突破するならば、もう一度ルカの力を借りねばならない。
"我々は潜水艦と同調することで、あの海域から安全に脱出することが出来ました。ということは、逆もしかり"
「......まさか、敵の懐まで海中突破を行うと?」
"正に。懐へと忍び込み、ルカ殿に傷口を広げてもらい、至近距離からの一斉射撃を実施します。シーサーペントは......我々の水雷戦隊で引き付けます"
「それでは君らが──」
"我々は一度は海底へと沈んだモノたちです。場所は違えど、水底に帰るだけです。我々に......償いをさせてください。そしてどのような作戦であれ、形であれ、我々はもう一度あなた方と共に戦いたい"
かつて物言わぬ黒鉄の城だった戦艦が、情緒に溢れた言葉を綴り、感情に訴えかけている。
高野大佐はどれとも取れぬ表情で、片手で拳を握りしめ、首を縦に振る。
「よかろう......武蔵君、君の作戦で行こう。こちらでも詳細を練る」
"......感謝します"
ここまで読んでくれているとてもとてもありがたい読者の皆様へ
少し中途半端な時期ではあるのですが、よろしければ是非ともコメント高評価(?)等していただけると大変励みになります
今現在、色々あって非常に辛い状況ではありますが、今作はちゃんと完結はさせたいと考えています
ですので今後とも拙作をご贔屓に、よろしくお願いいたします




