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冒涜戦線 ~冒涜されし神々と人類の最終聖戦~  作者: kulzeyk
第四章 忘レ去ラレシ者達ノ慟哭
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第陸拾捌話 深海からの一手

「来い、来いッ......!!」


 三〇機にもなる味方と僅か三機が入り乱れる空戦の最中。ネームレス01の光学照準器の先に、古めかしい機影が写り込んでいく。


 あと数メートル、重機関銃のシャワーを浴びせようとトリガーを握るも、目の前の機影はひらりと機体を翻し味方のケツを追うのを止めてしまう。


「クソッ!! なんだ?! なんで気付きやがるあの野郎!!」


 光学照準器の見越し射撃点が敵機の機動に合わせて荒れ狂う中、軽快なレシプロ機の機動に追い付こうと全力で操縦桿を握る。


 しかしながら、いくら機動性特化と言えど所詮はジェット戦闘機。ジェットエンジンの圧倒的推力が足を引っ張り、レシプロ機特有の木の葉が舞うが如き滑らかな機動には追い付けない。


「ミサイルの一発や二発残しておくべきだったか......」


 無理に武装を積んで垂直したせいもあって燃料も心許ない。相手に燃料の概念があるのかは分からないが、この調子で付き合っていてはこちらが先にガス欠だ。


「どうにかして隙を......いや、あんな機動のどこに隙なんかが......」


 機動性の差は大きく、敵機のケツに付くだけでも一苦労。光学照準器を以てしても、見越し射撃点のレティクルに収まる頃にはもう目の前に敵機は居ない。


 撃墜のチャンスにあと一歩届かない。だがそれは相手も同じこと。最初の奇襲以降ドッグファイトに(もつ)れ込んでからというもの、敵機も明確な攻撃のチャンスを掴めていない様子だ。


 どちらも手詰まり。逆転の一手、決定打に欠けている。もしミサイルを残しておいたとして、一発二発ではどうにもならなかっただろうか。


「......いや、俺らは持ってない......だが艦対空なら......」


 敵機はステルス性が高く、艦隊のレーダーでも捕捉は出来ていないだろう。


 だが、現状交戦しているYF-35の位置情報を入力出来れば発射自体は可能。しかし、撃てるだけでは無論当たらない。となると、残るは終末誘導か。


 スタンダードミサイルなら、可能性はありそうだ。


「ネームレス01よりマザー01、指定座標にスタンダードミサイルを撃ち込んでくれ」

『こちらマザー01、了解した。しかし、誘導は出来ないぞ』

「問題ない。やりようはある」

『なるほど......スタンダードミサイルだな、任せろ。それと、上手くやれよ』

「ラジャー」


 <<>>


 対空砲火の最中、イージス艦の艦対空システムが起動。YF-35から指示された座標が入力され、五発のスタンダードミサイルが発射された。


 濃密な弾幕を掻き分け、空の彼方へと噴煙が消えていく最中。そのような匙には興味無しと、日米の戦艦は射撃を続けている。


「さて......これで敵艦隊は撃沈確実一隻、中破一隻、残りは未だ一〇隻以上。対して我が方はリバティが中破のみ、残り六隻......」


 大和艦内のCICモニターに、彼我の配置が映し出されている。氷塊を掻き分けてノロノロと動く日米艦隊に対し、数十隻の戦艦と巡洋艦で取り囲む亡霊艦隊。


 戦力差は未だ縮まらず、航空攻撃も勢いは衰えながら止む気配は無い。あまり頼りにならないレーダーを一応確認するも、第二波攻撃らしき影は映ってはいない。


 このまま攻撃隊が引いてくれるとよいが。


「敵艦隊が回頭、艦首を向けて突撃してきます!!」

「なに?」


 咄嗟に水上レーダーに目を向けると、包囲していた敵艦隊が一斉に回頭。大胆にも単縦陣にて突撃を開始しようとしていた。


「痺れを切らしたか......? しかし、我々としては好都合だな......目標、敵戦列先頭、武蔵へ」

「了解。FCS照準、敵戦列先頭、武蔵へ」


 今現在、敵艦隊との距離は既に三〇〇〇〇を切っており、敵艦隊からの砲撃も至近、命中が続いている。しかしながら、一六インチ以上の大口径砲を基準として設計された堅牢な現代型戦艦の装甲を貫くのは容易なことではない。


 故に距離を詰め、有効打を与えるべくの突撃だろう。


「照準終わり次第、順次射撃開始だ。距離二〇〇〇〇で食い止めるぞ」

「了解」


 ひっきりなしに撃ちまくっていた米戦艦も、鳴りを潜めて射撃の時を待っている。


 数十秒の沈黙が過ぎ、敵艦隊先頭との距離が二五〇〇〇に迫る頃。全艦が各々の目標に向けて一斉に射撃。一隻の戦艦に十数発の徹甲榴弾が殺到するも、着弾予定より数舜早く炸裂。


「っ?! 徹甲榴弾、空中にて爆発。直撃弾ゼロ!!」

「なに?」


 よく訓練された砲手は、弾着予定とのコンマ数秒のズレをも見逃さない。悲鳴を上げるように報告し、目をかっぴらく。


 その間にも亡霊の艦隊は黒煙を掻き分けて進撃を続けている。遅まきに諸元入力を終えた亡霊艦隊が一斉射撃。遠距離からの射撃よりも一層至近弾が多く、無数の水柱が舞い上がる。


 そして、水柱の隙間から垣間見えたのは敵艦隊の周囲に不自然に乱立した、弾着時のそれとも異なる捕く天へと伸びる水柱の残滓。


「まさか......迎撃したのか??」


 榴爆弾の爆煙から突き出るように後を残す細長い霧は、水流を以て砲弾を迎撃したという信じられない現象に現実味を持たせていた。


「......着弾はしていないんだな?」

「はい、この目で確かに確認しました」

「この距離で迎撃するか......」


 次の徹甲榴弾が装填されている間にも、高野大佐は頭を回す。砲弾の迎撃が可能とあれば、ミサイルにせよなんにせよ迎撃されてしまう可能性が高い。


「主砲、サーモバリック」

「了解。主砲、サーモバリック弾頭に切り替え急げ」


 迎撃されるのであれば、迎撃される前に起爆させてしまおう。そういう魂胆だ。


 装填作業中だった徹甲榴弾が降ろされ、弾薬庫からサーモバリック弾頭が運び上げられる。実に数十秒の再装填作業を挟み、砲閉鎖機に砲弾が込められる。


「主砲、サーモバリック。撃ち方用意。各艦にも念のため警告を出せ」


 荒れ狂う砲爆撃の最中、主砲と備え付けの火器管制装置は冷静に敵艦の未来位置を予測。リアルタイムで時限信管が調整されていく。


「主砲、サーモバリック。撃ち方始め!!」


 号令を砲術長が反復。撃鉄が雷管に撃ち込まれる寸前、敵戦艦の徹甲榴弾が大和の主砲塔前面に直撃。しかし、最も堅牢な装甲を誇る主砲塔は意にも介さず、一斉射。


 四六サンチの砲煙と爆炎が放たれ、一瞬の後に眩い閃光と数千度の熱波が甲板上の構造物を融解させた。


「──ダメージコントロール!! 被害報告急げ!!」


 CICのほぼ全てのモニター、レーダー、火器管制が沈黙。艦外部の視覚情報を失い、CICは混乱状態となった。


「艦前部のレーダー、対空砲座、副砲座全て壊滅!! 第一、第二主砲塔も沈黙!! 射撃出来ません!!」

「モニターと通信システムの復旧を最優先にしろ!! 艦の目だけはなんとしても生かせ!!」

「了解!!」


 怒号が飛び交い、システム復旧とダメージコントロールを急ぎ、まず最初に対空レーダーが一部復活。直後に接近する敵機編隊を捕捉した。


「敵攻撃機、五時方向より本艦に接近中!!」

「クソっ!! してやられたか......!!」


 対空レーダーは二時方向、一〇時方向、九時方向と。全方位より大和に向かって来ている敵機編隊を余すことなく映し出す。


 その数約五〇機程度。万全な状態の大和の対空砲火であれば、撃ち漏らすことなく全滅させられたであろうが、現在は対空砲座のほとんどが死んでいる。辛うじて後部の対空砲座が生き残っているものの、あまり期待は出来そうにない。


 そうこうしている間に、追撃と敵戦艦の砲弾が命中。大きく船体が揺れ、鉄の軋む音が僅かに響いてくる。


「命中弾が増えてきたな......」


 いくら装甲が厚く、材質が高品質でも、一〇発、二〇発と戦艦級の大口径砲弾を受けては装甲が割れる可能性も出てくるだろう。


 必死に奮戦する米戦艦らも、発射した砲弾の悉くを水流ジェットにより迎撃され、援護も期待出来ない。


 万事休すとはこのことを言うのかと、高野大佐は奥歯を噛み締め、冷や汗を流していた。


 <<>>


 時を同じくして、日米連合艦隊より三〇〇キロ離れた深海。


 アラビア海は静けさに包まれ、水底には無数の潜水艦の残骸が沈んでいる。


「ソナー、反応なし。我が艦周辺に敵影見られず」

「水上艦はどうだ? 流石にそろそろ嗅ぎつけてくる頃だろうが」

「水上にもスクリュー音認められません。当海域は安全です」

「よし、無線封鎖解除。全艦浮上開始」


 最新鋭のバージニア級攻撃型原潜の浮上に合わせ、ロサンゼルス級原潜も浮上を開始。


 脆い氷床を軽々と叩き割り、漆黒の船体が姿を現す。黒い塗装は雲一つない夜空でもその姿を隠し、垂直発射装置の開閉音のみが僅かに響く。


「ハンターキラー01よりハンターキラー任務部隊全艦、トマホーク発射用意」


 計六隻の攻撃型原潜が全て浮上。トマホークの発射準備を整えていく。


「方位2-0-7。全艦、撃ち方始め」


 全原潜がトマホークを一斉に発射。数十発のトマホーク対艦ミサイルが尾を引いて空高く飛翔し、原潜は早々に潜航し始める。


「艦隊に連絡を入れておけ。あと、着払いだ。ぬかり無く頼むぞ」

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