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冒涜戦線 ~冒涜されし神々と人類の最終聖戦~  作者: kulzeyk
第四章 忘レ去ラレシ者達ノ慟哭
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第参拾捌話 生ける遺骸

「主砲、サーモバリック弾、交互打ち方。うちーかーた始め!!」


 高野大佐の号令と共に、大和の主砲が咆哮を唸り上げる。敵機編隊との距離は近く、命中までさほど時間は掛からない。


 発射から間もなく、比較的近距離で巨大な光球が沸き起こる。防空指揮所からは、熱球に包まれ焼滅する敵機編隊が見えているはずだ。


『敵編隊、二〇機の反応消失を確認。いくつかの小編隊に別れ、四三〇ノットでおも接近中!!』

「そろそろ主砲では取り回しが悪いか......両用砲、FCSと連動。統制射撃。うちーかた始め!!」


 四六サンチ主砲の威力を受け、散開する敵機編隊に向けて全艦の両用砲が火を吹き散らす。


「弾薬と砲身寿命は気にしなくていい!! 弾幕を張れ、一機も通すな!!」


 洋上では初遭遇の敵機編隊。その火力は未知数。下手に攻撃を受けるわけにはいかない。


「敵機、高度を下げていきます。一〇〇〇、八〇〇............高度一〇!! 敵速変わらず!!」

「数だけでなく練度も良いときたか......」


 高度一〇。ほぼ海面スレスレを飛ばれては、流石の最新鋭射撃管制システムを以てしても厳しいものがある。


「ネヴィル君、フォーカスプロテクション展開」

「了解しました。大和を起点とし、フォーカスプロテクション展開。共鳴開始」


 大和を中心として、海面に波紋が走る。共鳴が終わるまでには多少時間が掛かる。判断が遅すぎたか。


『こちら防空指揮所、敵機視認!!』

「防空指揮所、機種は分かるか?」

『はっ、見たままを報告します!! ユンカース急降下爆撃機一、アヴェンジャー雷撃機三〇、九九艦爆二〇、スピットファイア一〇!!』

「どれもこれも大戦期の機体ばかりか......アヴェンジャーを優先して狙うよう全艦に。あの高度なら爆撃機はある程度無視して構わん」


 双眼鏡で遥か彼方に目を向けると、(おびただ)しい弾雨の中をすり抜けてくる敵機編隊が見える。


 ユンカースを先頭として、横に広い楔型の陣。敵機が幾ばくか対空砲火に撃ち落とされる中、先頭のユンカースは見惚れる程の華麗な回避で弾丸雷雨の最中をすり抜けている。


 恐らくはユンカースが先導。そうであるなら、ユンカースを落とせばあるいは。


「砲雷長、ユンカースを狙ってくれ。アレを撃墜すれば、編隊が乱れるやもしれん」

「了解。こちら砲雷長、敵機編隊先頭、ユンカースに火力を集中させろ」


 大和の片舷、合わせて八基の大小速射砲群の全てが濃密な弾幕を展開する。それでもなお、ユンカースは墜ちない。


 ユンカースの後続が次々と落とされ、編隊の総数が五〇を切った頃。とうとう艦隊最外縁の駆逐艦が敵攻撃隊の有効射程に入った。


「敵雷撃機、魚雷投下!! 魚雷投下!!」

「回避行動!! おもーかーじ、面舵一杯!!」


 ミサイルを撤去してまで増設したCIWSが火を吹き散らし、離脱する雷撃機を撃ち落としていく。


 だが、放たれた魚雷が止まることは無い。


「これは......回避不能!! 直撃コース!!」

「くっそ!! 衝撃に備え!!」


 船体を傾かせ、回避機動を取る駆逐艦の艦尾に魚雷が突き刺さる。大戦時の如く不発に終わることなく信管が作動。大和の艦橋を遥かに越える水しぶきが上がる。


「被害報告!!」

「艦尾に被雷!! 機関室に多少の浸水、航行に支障なし。損傷軽微!!」

「よし、流石は大和......いや、流石は女神、だな」


 敵航空隊は外縁の駆逐艦らに積極的な雷撃及び爆撃を浴びせかけるも、最新鋭の火器とシステムで武装した艦艇には歯が立たず。


 そこにネヴィルの加護も加わったことで、敵航空隊が戦果を上げることは無く。敵航空隊は足を揃えて離脱を始めた。


 ただ一機を除いては。


「敵機編隊、離脱していきます......が」

「ドイツの大砲鳥は執念深いな......」


 敵機編隊が離脱を開始すれども、ユンカースは濃密な対空弾幕の最中で被弾すら無しに攻撃を試み続けている。


 水面に足を擦りながら這いより、三七ミリの豆鉄砲で砲塔を狙い撃っている。無論、ネヴィルの加護を受けて鉄壁と化した艦隊だからこそ、豆鉄砲と呼べるのだが。


「嫌に精度がいい。味方にいたら、さぞ心強いだろうな」

「ネヴィル様に感謝ですね」


 このまま遊ばせておくわけにもいかないが、かといって有効打も入れられない。だが、そろそろ艦隊前方の洋上部隊も気にしなければならない。


 そろそろ虎の子のRAMを発射してやろうかというタイミングで離脱。敵航空隊と同じ空の彼方へと離脱していった。


 <<>>


 取り巻きの砲艇種(ディアラパクス)も掃討し尽くし、残るは恐ろしく巨大な飛雷母種(アーセナルセタス)のみという状況。


 だが、ルカは飛雷母種(アーセナルセタス)に対し有効打を与えることは出来ていなかった。


「くっそ、どんだけ硬いんだよ?!」


 また一発。鎖弾を巨大な体表に撃ち込むも、表層に突き刺さるだけで鋼のような皮膚に受け止められる。


 そのまま起爆しようと、表皮が焼け焦げるだけ。同じ箇所に撃ち続けても結果は変わらなかった。


 どうしようかと空に留まっていると、フジツボのような突起物から白煙が吹き出てくる。仄かに赤みを帯びる突起物を見て、ルカは嫌な予感を感じざる負えない。


「一応、撃ってみるか............」


 効かないとは分かっていても試したくなる。ルカは煙を噴き上げる突起物に向けて、鎖弾を撃ち込む。


 鎖弾は突起物の内部へと吸い込まれ、着弾。黒い煙と共に、巨大な爆炎が空へと上がる。続いて、くぐもった爆音が響き飛雷母種(アーセナルセタス)が低い唸り声を上げる。


「効いた......?? いやでも、さっき撃った時は全然......」


 ルカが疑問を抱く中、白煙の勢いが一層強まる。


 そこでふと、ルカは気付く。飛雷母種(アーセナルセタス)自己誘導飛雷(タルユー)の母船。つまるところ、ミサイルキャリアー。


「あっ、まさか?!」


 思い至った瞬間。飛雷母種(アーセナルセタス)の背中から無数の自己誘導飛雷(タルユー)が射出される。


 狙いは後方の護衛艦隊──。


 ──ではないようだ。


「あぁ、クs──」


 飛雷母種(アーセナルセタス)が睨み上げる洋上。大和のサーモバリックに劣らない爆轟がルカを襲った。

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