第65話 雷斗の剣
森の中に入ると、真っ暗だと思った森の中は少しだけど日の光が差し込んでいた。
「ハナ、なんか幻想的な場所だよな」
雷斗は自然の光りに目を奪われている
「そうね。森は私達を拒んでいないのかも。歩きやすい道が私達の前にのびているね」
「ハナ、制服に着替えるんだろ?」
「そうしたいけど、流石に雷斗の前で着替えれないし、雷斗の見えないところに行って雷斗がはぐれたら困る」
私は真剣に考えた
雷斗はクスクスっと笑って、
「俺の方が逸れるのが前提なんだな」
「そうだけど?」
雷斗はまだ笑っている。
雷斗は私の頭をポンポンと撫でて
「今から、ハナの周りに水のドームを作るからその中で着替えたらいい。終わったら声かけろよ」
雷斗は水魔法を使った
『水壁』
水は私を中心にドーム型になった。水なのに水の壁は分厚くて外が全く見えないのに、声は届く
「雷斗から見えない?」
「あぁ、信じろ。俺も着替えるからさっさと着替えろよ」
私は安心はしたけど、雷斗を待たせては行けないと思って慌てて着替えた
「雷斗?着替えたよ」
「じゃあ解くぞ」
雷斗は『蒸発』
と言って水を空気中に気化させた
雷斗は私に制服姿を見て
「久しぶりにハナに会えた気がする。今まで本当にごめん寂しかったよな」
「それは雷斗もでしょ?早く両親や学校の友達に会いたいね」
「いよいよなんだな。それで『奥義』ってどんな魔法なんだ?」
私はまだ悩んでいる。今言うときっと雷斗はパニックになる。まずは魔王に会いに行かなければ始まらない。
「魔王に会えたらね」
私は『魔王への安全なる道標』
と唱えた。
・・・・・・・・・
虹色の魔法は間違いなく森の奥を指した。
「やっぱり・・・・・魔王は私達に会いたがっている」
「ハナ、何故魔王は俺達に会いたいんだ?俺達に倒されるかもしれないのに」
「会えばわかるよ」
「ハナは不思議な事を言うんだな。ハナも会った事ないだろう?」
「そうね・・・・・雷斗、安全なる道標だから魔物に会っても害のない魔物だからむやみに殺さないでね。」
雷斗はニヤリとした
そして剣を地面から召喚する。その虹色を纏った剣を雷斗は手にとって
「この剣は特別なんだ。ハナの気持ちが詰まっている」
「どういうこと?」
雷斗は下に落ちていた葉っぱを自分の真上に投げた!
雷斗は葉っぱがヒラヒラ落下して自分の目線まで落ちて来たところで剣を振った
葉っぱは真っ二つに切れた。
次に小石を真上に投げた!
同じ位置まで落下したところで剣を振ったらまたしても小石は真っ二つに切れた。
凄い切れ味も凄いが剣の振るスピードが早い。
「凄い!切れない物はないの?」
「切れない物だらけだよ」
雷斗はにっこり笑って自分の左腕を前に出した
「え?雷斗まさか」
雷斗は思いきり剣を左腕に当て剣を引いた
剣は虹色から金色に大きく輝き剣の纏う色を変えた
「キャー!!!」
私はバッと下を向いて両手で顔を覆った
「ハナ見て、俺は大丈夫だよ」
私はそっと顔をあげて雷斗の腕を見た
「・・・・・切れていない?」
腕どころか制服さえも切れていなかった。
「びっくりさせてごめんね。実際に見てほしかったんだ。ハナが望まない物は何も切れないんだ」
「魔物も?」
「試してないけど、害する者は切れてしまうから、俺達を襲う魔物が来たら、急所を外して魔法を使いながら追い払うように頑張るよ」
「ありがとう。雷斗」
雷斗はお礼を言われて少し顔が赤くなった
照れた顔を見られないように
「さぁ!行くか」
私より一歩先を歩いて行く
私は雷斗に聞こえないくらいの声で
「ありがとう。そしてごめんね」
雷斗は振り返って
「なんか言ったか?」
「ううん。じゃあ最後頑張ろっか」
私は雷斗に微笑んだ。




