第64話 王女の過ち
『ハナ様とライト様は、すぐに魔王退治に向かいます』
シェリーから式が届いたが私は目を疑った。
ハナが勇者だと認識してすぐの事だったから、何も作戦を考えていなかったし、これからの事をちゃんと話しに行きたかった。
ハナは急いでいるのか?それとも時間がないのか?
勇者ならば、魔王と対峙するのは、当たり前なんだ。わかっている。でも私には倒せない。
迷いの森に入れないし、文献には勇者しか倒せないとある・・・・・・
文献・・・・・過去の曖昧な内容に私はとらわれ過ぎていなかっただろうか?
私は迷いの森の中入れないと、逃げていただけでは?ハナにだけ危ない目に合わせて、私達の世界が平和になればそれでいいのか?私の望みは、ハナが無事に元の世界に帰る事だ!
・・・・・行こう。何故ハナが私を頼らないのかはわからない。会って聞こう。
私は自分の足元に魔法陣を出す
『瞬間移動』
魔王のところへ
しかし着いた場所は迷いの森の入口だった。
中には特殊な魔法がかかっているようで、直接魔王のところへは行けなかった。
森の麓だろうが、ここからハナ達が入ったかわからない。でも誰の気配も感じない。
ライト様が一緒なら私より先にここに着いている。瞬間移動の限界がここなら、ライト様もここに着いたはず。
私が考えていると後ろから声がした
「ウォルト!」
私は振り返るとそこには
王女様と魔術騎士団の方々がいた。
「王女様」
慌てて方膝をつけた
「ウォルト!挨拶はいい。ライトはこの中に行ったのか?」
王女様も気づいたのか?
「王女様は何故ここに?」
「ウォルトごまかさなくていい。ウォルトも気づいたのでしょう?ライトがここに来たことを」
「はい。しかし、私が着いた時には誰もいませんでした。ライト様とハナとそれにアルク様が一緒に入ったのかもしれません」
「いや。アルクはウォルトの使用人と今こっちに向かっているのが見えた。・・・・・そうかハナが一緒なのか」
「え?二人だけで?」
ハナ・・・・どうして!?私は頼りなかっただろうか。アルク様を何故連れて行かなかった?
ハナ・・・・何を考えているんだ
「城から、ライトの服が消えた。召喚されたから。しかも城の結界に干渉できるほどの魔力」
ハナが・・・・・・
元の世界に帰るんだな。
「ウォルト・・・・私はまちがえたのか?勇者はライトではなかったのか?魔法色がハナに似ていた気がする」
「・・・・・・わかりません。私も直接聞いていません。でもそうだったとしても、ハナは自分に冷たかったこの世界を救ってくれようとしている事に間違いないのです」
その言葉にアリス王女様は、自分がハナに言った言葉を後悔しているようだった。
「私達は、何を見てきたのか。文献に男とあっただけで全てがそうだと。例外は認めないと私は思っていた。ハナに悪い事をしたんでしょうね」
王女様の言葉に反論できなかった
私もハナは違うと勝手に思っていた1人なのだから。
「ウォルトは中に行くのか?」
「はい!ハナが何故私達に頼らないのか、でも私達の世界です!ハナ1人に背をわせません。」
「そうだな。私もハナに謝らねばならないでしょう。ウォルト迷いの森は入ってもたどり着く可能性は低い、それでも行くのですか?」
「それ以外の選択肢が私にありません」
「私にもない」
王女様は魔術騎士団の団長を呼び、
「この中の1人でも必ずや勇者のハナとライトの元にたどり着きなさい。着いたなら必ず援護を!その身にかえても必ずお二人を守り抜くのです!」
「「「はっ!!!」」」
魔術騎士団と共に私も迷いの森に入る
獣道もなく木々は私達をこばんでいるが、剣で目の前の木を切る・・・・・・人1人が入れてもすぐに新しく木が生える。次の者をすぐに拒む。
「簡単には入れません。王女様は危険です。ここでお待ち下さい」
私が王女様に進言すると
「この状況責任は私にあります。私の事は気にせずにウォルトは先に行きなさい、私は弱くありません。知っているでしょう?」
「必ず危ないと思ったら逃げて下さい」
「えぇ。足手まといにだけはならない」
「じゃあ先に行きます」
王女様の言葉を信じて私は手のひらから魔法陣を森に向ける
『トルネード』
私は迷いの森に足を踏み入れる。
大きく開けた穴だったが、すぐに閉じられて行く。森全体が全てを拒むように。




