第61話 勇者の選択
迷いの森
『魔王様!魔王様〜!!』
『また僕が人間から食べ物をもらってくるから、元気になってよぉ』
ブラックウルフの2匹は魔王に話しかける
魔王がベットから起き上がり、呪文を唱える。
『οσαερφβψξα・・・・』
黒色のような紫色の魔法が森全体を包む
『また、魔法使ったの?魔王様の魔法がだんだん黒くなっていくよ?』
『森の魔獣達がまた外に行かないように?』
『どうしてそんな事するの?』
『そいつらと一緒なら人間ぐらい倒せるよ!』
『魔王様は命を削ってどうして、魔獣を抑えるの』
魔王と呼ばれる者が1つお願いをした
『お前たちがあったという人間をここまで連れておいで』
そういうと魔王はまた眠りについた・・・・・・
『魔王様!魔王様〜!!まだお喋りしたいよ!』
『おい!あいつ連れて来たら魔王様が元気になるんじゃないか?』
『そうだね!あいつ騙して、連れて来よう』
『あいつの食べ物食べたら魔王様が元気になった』
『約束の日には早いよ?』
『あいつが住んでるところ行けば気づくんじゃないか?』
『前も気づいたもんね』
『でもあいつ以外の人間出たら、殺すか?』
『魔王様は前はダメって言ってた。でも仕方ないよね』
『あいつを連れて来ないと魔王様が元気にならない』
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次の日残り2日間を満喫するために、クレアに雑貨作りやハーブ栽培などを教えた。
「ハナ、どうして今日、全部教えてくれるの?」
「明日はクレアといっぱいお茶したりお喋りしたいの。いいかな?」
「・・・・・・うん。いいよ。鉱山の鉱石でアクセサリー作ったり、アルク様から美味しいハーブティーごちそうになったりしちゃう?」
「いいね〜。アルク様の家に押しかけちゃおう」
私とクレアは目が合ってケラケラ笑った。
予告なくアルク様の家に行くなんてクレアにとったら、恐れ多い事だから、イタズラする子供みたいでワクワクした。
懐かしい。学校の友達を思い出す。
高校生って夢とか現実とかが曖昧で、何でもできそうなのに、夢ばかり見ていられない。友達とバカバカしい事たくさんして泣いて笑って怒って喜んでた。それでも現実は選択肢ばかり。
イジメにあった時は、周りが見えなくなって、孤独しか感じなかった。本当にきつかったけど。この世界に来て気づいたのは、世界は広い。未来は自分で選べる。
それって凄く幸せな事だったんだ。
元の世界に戻ってもこの気持ちだけは、覚えていたいな。
私は空を見上げた。
こんなに綺麗な空・・・・・・・・・
私が動かなければ、禍々しい空気に覆われてしまう。
クレアのこのかわいい笑顔も、
この村の人達、オークレール公爵邸のみんな
そしてウォルが生きる世界を守ろう。
勇者をやらされてるんじゃない
私がこの世界を救いたい。
これが私の選択。
クレアと幸せな時間を過ごしていると
キーーーーーーン!
え?
結界に魔物が接触した!
「クレア!気づいた?」
「うん」
クレアは不安そうな顔をした
「クレア、いい?村のみんなに家に入るように伝えて、私はアルク様と雷斗と見てくるから」
クレアはうんうんと頷いた
「ハナ、勇者様と一緒に行くの?」
「大丈夫だよ。雷斗もアルク様もいるから」
「ハナは行かなくていいんじゃない?一緒に待っていようよ」
クレアは泣きそうだ。
私はクレアの頬に手をあてて涙があふれないように指で下瞼をなぞった。
「私が行かないとダメなの。雷斗が行くところには必ず一緒に行くしかない」
「それって帰っちゃうの?」
「わからない。でもいつそうなってもおかしくないの」
「ハナ、また後で会えるよね?」
いつ何が起こるかわからない。クレアにお礼が言える時に言っておきたかった。
「クレア、この世界で友達になってくれてありがとう。」
「様子を見に行くだけよね?お別れみたいな挨拶は嫌よ!」
「・・・・・・うん。様子見に行くだけよ。だからクレアは家の中で待っていてね。」
私はクレアに笑顔で答えた。そしてアルク様の家に急いで向かった。
「ハナ様!」
「ハナ!」
良かった2人一緒にいた
「村の北の入口だよね?」
「とにかく行きましょう!ライト様も剣の準備を」
「あ!絶対私がいいって言うまで攻撃とかしないでよ!」
アルク様と雷斗は顔を見合わせて
クスリと笑った
「あぁ。もちろん!勇者様の命令が絶対だからな」
そういった雷斗は魔法陣を出して、虹色を纏った剣を召喚した。
「ハナ、急ごう!」
「うん」
私は気づかなかった。
私達の上空を白い蝶が通り過ぎた事を。
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ウォルの手のひらに蝶が舞い降りた。
蝶は形を変えた。
『アロニーの村に魔物が現れました』




