第60話 作戦
「それは、ウォルト殿にハナ様が勇者様だとバレたかもしれません。シェリーがハナ様の『物質移動』を秘密にするとは思えません」
「一応は、俺が間違って部屋の中に瞬間移動したと伝えたんだが、ウォルがウォルの結界を抜けれるのは勇者しかいないと言い切ったから、シェリーは間違いなく報告するだろうな。」
「そうね、でもシェリーを責めれない。まさかウォルの結界を抜けるなんて・・・・抜けなければ、バレなかったのに。私のミスね」
「ハナ様、ウォルト殿ならハナ様の悪いようにはしないと思います。必ず、ハナ様の頼みを叶えてくれるでしょう」
アルク様の言う通りだと思う。ウォルなら、私の願い叶えてくれる。でも、私が勇者だとわかってどう思ったかな?心配かけてるかな。
ウォルにだけは、魔王を倒すところを見られたくない。
「それで、ハナはどうするつもりなんだ?」
「3日後にまた今日あった魔物にお願いして、魔王のところに連れて行ってもらおうと思うの」
「そんな事できるのか?自分達の魔王を倒そうとする者を案内するとは思えない。」
「そうです。ハナ様、逆に魔物の怒りを買うでしょう」
「んー。大丈夫と思います。もちろん会いたいと伝言してもらうの。多分向こうも私に会いたいはずです」
「どうしてですか!?ハナ様危険です!ハナ様には戦闘能力が皆無です」
そうもはっきり言わなくても〜
何か頼りない勇者みたいね。でもそれも私らしい
「だから雷斗がいるんじゃないの?雷斗は私の騎士でしょ?多分雷斗は強い。私を守る力を手にしているのだから」
その言葉に雷斗の顔が赤くなった。赤くなった顔を腕で隠し
「最弱の勇者だとずっと思っていたから、ハナに強いと言ってもらえて嬉しいよ」
雷斗は雷斗で苦労したんだ。
逆に申し訳ないよ。私が勇者だと早く気づけば、雷斗に苦労かけずに済んだのに。
「雷斗、ありがとう。頑張ってくれて」
私は雷斗に優しく微笑んだ
雷斗の顔はますます赤くなった。
「ハナ、あの日のあの場所に戻れると思うか?」
「わからない・・・・・・でも・・・・・帰れるなら帰りたい」
私は本心を語った。
でもアルク様も雷斗も軽く流して聞いていた。
夜になって
ウォルの蝶がアルク様の結界に反応した。
「ウォルト殿からの式でしょう」
アルク様は結界を緩めた。
アルク様の家の窓から蝶は入って来て、ウォルの式は私の手のひらに舞い降りた。
そこには私が欲しがっていた魔法陣が描かれているだけだった。
何も聞いて来ないのは、私が勇者だと気づいているから?もしそうなら、心配して来たりしないで欲しい。
「ハナ様、ウォルト殿からの返事は、欲しいものでしたか?」
「えぇ。これで魔王の元に行ける。」
私は雷斗を見た
「雷斗、後戻りはできない。行くと私は決めたの魔王を倒す最後まで必ず側にいてくれる?」
「あぁ。必ずそばでハナを守るよ」
「ハナ様本当にお二人で行くのですか?」
アルク様は心配そうに尋ねる
「はい。2人で十分ですし、それに他の方がいたら『奥義』の発動の邪魔になりかねません。アルク様にお願いしたいのは、万が一・・・・・」
私は言うのをためらう。みんな私達を心配するだろうから。
「迷いの森に誰も近づけなければいいのですね」
私はアルク様を見て
「はい、ごめんなさい。きっと最後の挨拶は出来ません」
アルク様は私の前に片膝をつき私の手を取った
「ハナ様とライト様に全てをお任せしてしまう事をお許し下さい。当日は私も迷いの森の下まではご一緒致します。ハナ様の願い通り、誰も入れないように致します。」
「ありがとう」
「ハナ、本当に俺だけでいいのか?アルク様がいた方が戦闘に長けているんだぞ?」
「戦闘は雷斗がいれば大丈夫だよ。それに大丈夫じゃないと困る」
「ハナ『奥義』を俺にも教えてもらえないのか?」
「うん。魔王にあったら教える。言葉にするには難しいの」
「歴代の勇者様も誰も同伴させなかったのでしょうか?」
「どうでしょうか?文献に『奥義』の内容がないなら見ていないのかも。」
前の勇者様の事はわからないけど
きっと連れて行っていない。




