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私は巻き込まれただけなので、すぐに元の世界に帰して下さい。  作者: NALI


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第59話 交渉


王宮内についた私は王女様の書斎の前にいる近衛騎士に


「王女様への謁見の許可をもらっている」


私は許可証を見せた。



「王女様、オークレール公爵子息様が謁見に見えられました。」


部屋の扉が開き、中から側近のルイス殿が出て来た。

ルイス殿は少し不機嫌そうな顔をして

「中ヘどうぞ」


「ありがとうございます」


ルイス殿は王女様の忠実な家臣だ。王女様を一番に思い王女様の意向以外は、全てを受け入れない。完璧な側近だが、私にはかなり冷たい。兄の婚約者だったかもしれない王女様が私と婚約しそうになったのだから仕方ない。兄であるアルク様も大切に思っている証拠だろう。



中に入ると、王女様は書類の業務に忙しくしている。



私をチラッっと見ると、

「もう少しで終わるから、かけて待っていなさい。」


ゆっくり話す時間はないのだが、王女様の機嫌を損ねては、ハナの欲しいものが手に入らない。



私は用意されたティーセットがあるソファで座って待つ事にした。

しかし淹れてくれたお茶を飲む事はなく、ただ何も話さず動かずそこに座ってるいるだけ。

銅像のように。


お茶がすっかり冷えた頃、王女様が向かいのソファに座った。



「珍しいのね、ウォルトの方から会いに来るとは。ライトはアルクのところでの訓練を許可したから、城での訓練はないと伝達したけど間に合いませんでしたか?あなたが律儀に挨拶に来るとは思えませんが?」


冷たい物言いを王女様はするが、その瞳は優しく、頬はほんのり赤くしている。


その顔を見て私は、期待させないように淡々と答える

「そうですね。挨拶ではありません。王女様の許可をもらいたく参りました。」


「許可?」

王女様の顔は不機嫌に変わった。


「アロニーの村に行きたいという内容ならば、許可は出来ません。」


王女様にハナに会いたいお願いなんてするわけがないだろう。王女様は賢く先を読める方なのに、めずらしい。

感情的になっているのだろうか?しかし

それも私が悪いのだろう。



「いいえ。違います。」


王女様の表情が緩んだ

「じゃあ何の許可ですか?」



「祭司様がいらっしゃる神殿に行く許可をお願いします。」


祭司に会うのは、本当は気が引ける。祭司の後継者がまだ決まっていないからだ。祭司様の魔力を多分私は超えているが、城にも神殿にも秘密にしなければならない。祭司が私を洗礼し、気づかれたら私はもう神殿から出られなくなる。

祭司になるための修行があるし、次期祭司が危ない目に合わないように、教団の者全てが守るから。自由がなくなる。王族が唯一手の届かない場所であるが、権力を教団が持たぬように、王族が生活の援助をするかわりに俗世との関わりを断たせている。


教団の者に会うには王族の許可がいる。



「何故、祭司に会いたいのですか?」


「今、私はライト様の教育も終わり、後世の為の文献作りに携わろうかと思います。過去の文献を見ても勇者召喚の魔法陣だけは、載っていません。多分、祭司様が伝承しているのかと思いますが、今の現状は魔法能力も廃れて来ています。500年後に伝承している者が万が一いなくなっていた場合、世界は終わります。そうならない為に魔法陣を文献に載せておきたいのです。どうせ載せても使える能力がなければ、誰が見ても問題ないでしょう?」


私は、ハナに繋がらないように、それっぽい理由を王女様に述べた。


大丈夫か?気づかれなかったと思うが


王女様は複雑そうな顔をして、黙ってしまった。



「何か問題でも?」


私の言葉に王女様が言いづらそうに

「ウォルトは、祭司になりたくないのか?祭司になれば、地位も名誉も与えられる。人々から敬われる。私との婚約も断る事が出来る」


「え?なりたいわけがないでしょう。王家の監視下にあって自由がない場所に?ありえません」



「では、魔王が退治されれば、私との婚約が決まるが、いいのだな?」


祭司も結婚出来るが、王族の意向に添わなくても大丈夫だから断る事が出来る。

逆に言えば祭司以外の者は王族に逆らえない



「それは、私以上の魔術師が現れれば、私は候補外です。魔王を倒した後に考える事です。」



「そもそも、ウォルト以上の魔術師がいたら、次期祭司であろう?」


「いいえ。祭司になるには、光属性の魔法が使えなければなりません。私にその属性はありませんので。」


本当はある。あるからこそ、祭司に会うのが気が引ける。バレたら最後だから。



「・・・・・・・・・ならば尚更、ウォルトは神殿に行かない方がいいでしょう。」



「え?」


それは困る魔法陣を聞き出さねばならないのに。



「祭司になりたくないのであろう?」



「私が行って何故、祭司になるのですか?」



「ウォルトの『回復魔法』を見た事がある。ウォルトが秘密にしているのは知っていたから、誰にも言っていない。ずっと前からウォルトがアルクよりも上なのは知っていたが、祭司になりたくないのかもしれないと思って黙っていた。」



「・・・・・・・・・」

俺は言葉を失った。いつだ?いつバレた?初めて発動したときか?でもあの時は10歳ぐらいだったか?周りに誰もいなかったはず。透視か?でも一瞬だった。



「ウォルト、私は1度見た物を忘れません。あなたが、初めて発動した瞬間を一瞬見たのです。あなたは風、水、無属性、そして光までとなると、あなたの周りが騒がしくなると思ったので、黙っていました。」



「あ・・・黙っていてくれてありがとうございます・・・・・・・・・」



王女様は困った顔になり、

「別にお礼を言わなくてもいいです。私の為に黙っているのですから。教団にウォルトを取られない為に。」


あぁ、だから王女様は私以上の魔術師が出ないと知っているんだな。そういうことか。


私が必ず王女様と婚約しなければならないとわかっている。



王女様はそれでいいのだろうか?私の心はハナの物なのに。そうだな。だから今私はハナに会えなくなった。ハナを忘れさせたいのか。



『無駄なのに』


「何か言いましたか?」


「いえ・・・・では魔法陣は聞けないのですね。」

これが最優先だ。祭司にバレようが仕方ない。次期祭司になるか?





「それならば大丈夫です」



は?



「どういう意味でしょうか」


「私はライト達が召喚される時、透視で見ていました。だから魔法陣を覚えています。書きましょうか?私にはその魔法陣を出せませんからね」



1度見たら忘れない・・・・・・・・・か



「凄い能力ですね」



「あまり良いものでは、ありません。ウォルトの一語一句を忘れさせてはくれないのですから。」




あぁ、私はかなりきつい言葉で王女様を傷つけて来たからか・・・・・今まで言った私の言葉を忘れて欲しいとは思わない。私はハナ以外に優しくするつもりは今までもこれからも絶対にないのだから。



そして私はまた淡々と答える

「魔法陣を書いて頂けると助かります。そして王女様、祭司様に私の属性を黙っていてくださって感謝いたします」

ハナの願いを叶えてあげられる嬉しさを隠して。



感情のない言葉に

王女様はせつなそうな顔をする。


私は心がどこか欠落しているのかもしれない。



王女様に、こんなに思われても、せつなそうな顔をされても、私の心に響かないのだから。















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