第58話 勇者の騎士
雷斗は、あっという間に戻って来た。
「勇者様、お疲れ様でした。」
「雷斗どうだった?無事玄関につけた?」
アルク様と私は雷斗に声をかけたけど
雷斗はその質問に答えず、真剣な眼差しで私を見た。
「ハナ!正直に答えてくれ。ハナが勇者なのか?」
え?
私はアルク様と目があった。何故雷斗がそれに気づいたのかわからない。
「アルク様もご存知なのですね」
「雷斗・・・・・」
「ハナの口から聞きたい。ハナが勇者なのか?」
隠しても仕方ない3日後には雷斗に言わなければならなかったかもしれないのだから。
「うん。」
私は雷斗の目を見れず下を向いて返事をした。
雷斗は私の腕を引っ張って自分に引き寄せた。
そして私を強く抱きしめた。
「ちょっちょっと!雷斗離して・・・・」
雷斗の腕は緩む事はなく、ぎゅうっと抱きしめている。その時、私の頬に何か雫が落ちて来た。雷斗を見上げると雷斗の涙だった
「ハナ、ハナ・・・・ごめん。俺があの日あの場所に連れて行かなければ、ハナがこの世界に来る事はなかった。ハナが勇者になる事はなかった。本当にごめん。」
雷斗の涙は止まらない
「雷斗・・・・それは違うよ。私が雷斗をこの世界に連れて来てしまったのかもしれない。だからそんな風に謝らないで。」
アルク様が申し訳無さそうに口を挟んで来た
「ハナ様、ライト様申し訳ございません。この世界の平和のためにお二人を召喚してしまったこの国がこの世界がお二人を苦しめてしまっているのです。どうかお許し下さい。」アルク様は膝をつけ、私達に頭を下げた。
雷斗はやっと腕を緩めて
「アルク様を責めていません。」
雷斗は慌てて、アルク様に駆け寄った。
「雷斗、アルク様、もう誰が悪いとかやめましょう。私が勇者だった事実は変えれないし私は覚悟を決めたから、私がやるべき事をやります。」
「ハナは戦闘魔法は使えないんだろう?」
「うん。多分雷斗が私の剣で盾なんだと思うの」
雷斗は優しく微笑んで
「そうか、『ハナを守る力』俺はハナの騎士なんだな」
雷斗は片膝をついて私の手を取った
「騎士はこうするんじゃなかったかな」
雷斗の足元に魔法陣が浮かぶ
『この身全てをかけ貴女の剣となり盾となる騎士として忠誠をここに誓う』
雷斗は私の手の甲に口づけをした瞬間に
金色の光りが私達を覆う。
雷斗の剣が勝手に召喚された。
そして雷斗の剣は虹色を纏う。
金色の光りはスーッと消えたが雷斗の剣は虹色を纏ったままだった。
「アルク様、雷斗の剣はどうして色が変わったのでしょうか?」
アルク様は少し考えて、
「ハナ様が勇者だと確信した時に魔法を得たように雷斗様も騎士と確信した事で雷斗様に変化があったのではないでしょうか?」
「あぁ。俺の中で何かが芽生えた感じがする。ハナの為に、ハナが望む事をしたいと思った。虹色の剣はハナの意向かもしれない。」
雷斗は剣を手に取った。
その瞬間虹色の光りは雷斗ごと包み込んだ。
そして剣は目の前から消えた。
「なるほど」
雷斗は何かを納得したようだった。
「雷斗!剣がなくなったけど」
「大丈夫、召喚すればまた出てくる。」
「剣に何かあったのですか?」
アルク様が不思議そうに尋ねた。
「えぇ。ハナらしい剣になりました。以前アルク様がかけてくださった付与魔法と同じです。ハナの魔法を付与したようです。」
「そうなのね」
「ところで、ハナはいつ勇者だと気づいたんだ?」
「そうね、その話しもだけど、雷斗にこれからの事を話さなければいけないの。それに雷斗はどうして私が勇者だと気づいたか知りたい。」
「ハナ様、話しも長くなりそうですので、1度休憩がてらお茶をしましょう。何もかも急いては事を仕損じますので。」
私達はアルク様の淹れてくれるお茶を飲みながら話すことにした。
ゆっくりできるのはあと3日しかないのかも。




