第52話 本物
魔物が森の奥へと見えなくなってから
「ハナー!!」
「雷斗、ちゃんと約束を守ってくれてありがとう。」
雷斗は恐る恐る私の手に触れる
「ハナに何かあったら、ハナがケガしたらどうしようかと思った。俺がいた位置からハナまでの距離は遠くないけど瞬間移動発動を出す時間は俺にはかかりすぎる。移動ジャンプならすぐに行けるけどとかいろいろ考えて、やっぱり俺は、まだ未熟である事に間違いない。」
雷斗が私の手をぎゅうっと握るその手に汗をかいているのがわかった。
雷斗がパニクっている。
私は片手を雷斗の手から離して、雷斗の頭をポンポンと撫でた。
「私は大丈夫だよ」
私は雷斗に優しく笑った。雷斗はその笑顔に顔を赤くしていく。赤くなった顔を隠すよに雷斗は腕で顔隠してしまった。
「ハナさん、いい情報は得られましたか?」
アルク様が話しかけて来た。
私は雷斗からパッと離れて、
アルク様に真剣な表情で答えた
「大切なお話しがあります。一旦帰りますか?」
「俺がいたら話せないか?」
雷斗が心配そうに話して来た。
私はうなずく・・・。
アルク様しか言えない。雷斗が魔物の言葉を知ったら絶対倒せなくなる。
「勇者様は先に村に戻っておいて、鉱山内で話して、後で2人で歩いて帰るから、2時間経っても帰らなかったら、鉱山に迎えに来てくれるかな?」
「わかりました。では鉱山までは俺が送ります」
雷斗はそういうと、金色の魔法陣を浮かび上がらせたそして『瞬間移動』
私達はあっという間に鉱山の中にいた。
「ハナ先に帰るけど。1週間は村にいるから、いっぱい話そう。」
「うん。」
「アルク様先に戻ります。お気をつけておかえり下さい。村でお待ちしてます」
「結界を入り口のみ緩めておくからそこから入りなさい入ったあとは勇者様が部分結界は難しいだろうから村全体に結界を張ってから入り口のみ結界を張る練習をしておいて。」
「かしこまりました」
そして雷斗は瞬間移動で村に帰った。
「結界は大丈夫ですか?」
「勇者様の結界なら大丈夫だよ。ちゃんと訓練は受けてる。戦闘能力も見たけど、この国で一番強いと思うよ剣術ならね。」
「一番強い?」
「あぁ、剣術なら誰にも負けない腕前だったよ。」
「それでも魔物Aクラスを一人で倒せずに、魔王退治にも行かせてもらえないのは、『奥義』ですか?」
「そうだね『奥義』がなくてもこの国一番の剣術、魔術が使えるなら、討伐に行けるかもしれないが、勇者様はウォルト殿よりも私よりも弱い。勇者様との力の差は歴然だったよ。」
え?そんなに?
「だから『奥義』が必要なのですね。」
アルク様は少し苦笑いをした
「勇者様は・・・・・いや彼は一生『奥義』を得る事は出来ないと思う。」
「最弱の勇者だからですか!?」
私は雷斗にできないと言われて少し腹がたった。
「彼は勇者ではないかもしれない」
え?
「ここまで来て、それはないんじゃないですか?この国が呼んだのですよ!?」
「あぁ。私も祭司様が間違えるわけがないと思っていた。しかも召喚は成功した。」
「何が言いたいのですか!?」
「この国に来たのは彼だけじゃなかった。」
は?他に来たのは・・・
「そして祭司は君を洗礼しなかった。誰も君を確かめなかった。」
「私は攻撃魔法も防御魔法も使えません。」
「そうだね。君は戦いに向いていない。誰もがそう思った。」
「彼の特殊能力を聞いて驚いたよ。」
『ハナを守る力』
「それって騎士を一緒に連れて来たんだよ。ハナさん、君が本当の勇者だ!」




