第49話 無限
金色の光はとても心地よかった。ふかふかな毛布に、包まれているような優しい感じ。
光がさぁーっと引いて行くと、そこはもう鉱山の中にいた。
鉱山は結界が張っていないが、透視出来ない。鉱山の洞窟は特別な鉱石が埋まっているらしい。
入り口は何重にも厚い扉で、閉じられていて簡単に魔物には破られないらしい。
「アルク様、この扉に魔石が含まれているのですか?」
「そうだよ。その魔石に私が付与魔法で強化魔法をかけてあるから数回ぐらいなら『業火』『黒炎』上級魔法をもしのげるんだ。」
「だからデリックさん達は安心して、働きに来れてたのですね。」
「何かあったら、ハナさんも勇者様もこの鉱山に逃げて来るといい。あなた方の認証を扉に刻めば、鉱山の扉全てを開ける事ができるよ。」
「じゃあお願いします」
まずはアルク様が扉に魔法陣を浮き上がらせる
「この中心に手を当てて下さい」
先に雷斗が扉に手を当てる
すると雷斗の体から金色の光りが放たれ、その光りを扉が吸収して行くのが見えた。とても不思議な光景だけどとても幻想的で綺麗だった。
「じゃあ次はハナさん」
私も雷斗と同じように、扉に手を当てると私の体から虹色の光が放たれた。
扉はその光りを吸収・・・・・せず
バチバチ!!!!
跳ね返して来た!
「キャッ!痛い」
私は反動で後ろに転んでしまった。
「ハナーー!」
「ハナさん!!」
2人が私に駆け寄って来た。
「大丈夫か?」
雷斗は慌てて私の手を確認する。
「うん、少し痛かったけど何ともない」
あの時の感覚に似ている
ウォルが私の中に魔素を入れようとした時のような感覚に
「何故ハナさんは跳ね返された?」
アルク様は難しい表情になる
ウォルの事は言えないけど心当たりがある事は言っておいたほうがいいと思った。
「アルク様、もしかしてこの扉にも魔素が含まれていて体内に少しでも認識の為に取り込まなければならなかったのですか?」
「そうだよ、よくわかったね。扉も人もお互いが認識するんだ。」
「そうですか。それならば、私はこの扉を絶対に開けることは出来ません。」
「何故?もう一回チャレンジしないのか?」
雷斗が不思議そうに聞いて来た。
「雷斗は自分の魔素を人の体内に少しだけでも送る事はできる?」
これは誰でもできる、ウォルは私から魔素を抜く魔法を使った。これは言ったらダメって事だった。
「やったことはないけど、理屈はわかる。」
私の手のひらに雷斗は手をあわせる。
雷斗の手から金色の光が出たが
バチバチ!!
「痛い!」
私と雷斗は慌てて手を離した。
「これが無限?」
アルク様が不思議そうに私を見た
「前からなんとなくわかっていたのですが、私に他人の魔素を体内に入れる事が出来ません。」
訓練して手から魔法の光りを出すことはできるようになったから、アルク様に魔素を渡せるかもしれない。
「アルク様手を出してもらっていいですか?」
アルク様の手に私の手を合せる。私は手に意識を集中して虹色の光りを出す。
そしてアルク様の体内へ私の魔素を送る
「え?少しではなく、どんどん魔素が送られて来るけど、これではハナさんの魔素が切れてしまう!危険だからやめなさい!」
「大丈夫なんです。」
アルク様に入らなくなった魔素は魔法の光りのまま地面に流れて行くように見える。
そこで私は魔素を流すのをやめた。
「私は常に魔素が無限にあります。これが無限と最初に話した証拠です。だから他の魔素を入れる隙間ができない。私に扉は開けられませんね。」
私は切なく笑った。アルク様は話しに聞いていたからそこまで驚かなかったけど
雷斗は驚きすぎて、言葉が出ない状況だった。
「んー。それだともしハナさんが危険な状況な時に逃げて来れないね。何か方法を考えよう。」
雷斗が何とか絞り出した声で
「生活魔法INFINITY・・・・・・魔素も無限だったのか。」
「そうみたい。生活魔法だと思えば、それは無限に魔法が出せる。攻撃や防御だと思えば何も発動しない」




