第48話 魔の森へ
本当さっきまでシェリーと話していて、寝なくちゃ体力的にきついよねって言う事で、少し仮眠を取った。
日が昇る前に、ちゃんと起きて準備を始めた。
コンコンコン
「おはようございます。ハナ様起きてらっしゃいますか?」
隣の部屋で休んでいたいたシェリーが訪ねて来た。
私は扉を開けてシェリーを部屋の中に入れた。
「ありがとう。起きてるよ。さすがに眠いね」
私達は目があってクスクス笑った。
「シェリー今日は村をお願いね。多分クレアっていう私の友達が訪ねて来ると思うの、昨日とても心配させてしまってて・・・・・」
私が全てを話す前にシェリーはすぐに理解した。
「かしこまりました。クレア様には急な仕入れにアルク様と早朝に出発したとお伝えしておきましょう。私は留守番を任されているとか言っておきます。」
「ありがとう。シェリー完璧だね。じゃあクレアによろしくね」
私は身支度を整え
「じゃあアルク様のところへ行きましょう」
ちょうどシェリーと家を出た時に、同時にアルク様が家から出て来た。
「アルク様おはようございます」
「おはよう、ハナさんシェリーさん。ちょうどもうひとりも到着したみたいだよ。」
アルク様は村の入口を指さした。
「じゃあ村の出入り口から出発しようか、あまり村の中を歩くのも目立ってしまうから、回って森へ行こう。」
「はい、アルク様ありがとうございます」
「シェリーさん村をお願いします。何かあったら、上空に火の玉を打ち上げて欲しい。」
「はい、承知しました。お二人もお気をつけて。」
「あぁ、行ってくるよ」
「シェリー、行ってきます」
私とアルク様はシェリーに村を頼んで、もうひとりがついた村の出入り口に向かった。
「アルク様、魔物の食料を持って行かなければいけないので、いちおうフルーツとおにぎりを持って来ましたが、お肉が良かったのでしょうか?」
「その魔物の好みがわからない以上はフルーツがあれば大丈夫だと思うよ。森の中に動物の死骸があまりない状況を考えると、肉食より草食が多いのかもしれないからね」
確かに、あまり村が襲われないし、森からも悪臭はしない。
アルク様は指で村の入口の結界を緩めた。
「勇者様おはようございます。王女様にうまく伝えれたのですか?」
村の入口から雷斗が入って来た
「ハナ、アルク様おはようございます。あまり上手には言えなかったのですが、この村での1週間の滞在を許してもらいました。その間に『奥義』を習得しなければ、城での訓練に戻れとの事でしたが・・・・・監視は厳しくなったかもしれません。」
雷斗は申し訳なさそうに話す。
「雷斗は自由がなかったんだね。辛かったね。」
「自由?そんな物はいらないよ。ハナと元の世界に戻れるなら、俺の自由なんかいらない」
雷斗はまっすぐ私を見つめて答えた。
私はなんだか、雷斗に申し訳ない気持ちになった。だって私はこの世界に来てずっと自由に生きて来たのだから。
「勇者様の瞬間移動で鉱山の中に入りましょう。そこで、特訓していると思われてもかまいませんので。その後は自分達に結界を張りながら森へと移動すれば、王女様に見つからずに、森へと行けるはずです。」
「それは、前にウォルがこの村にしてくれた結界方法ですよね?アルク様の負担が凄いのでは?」
私が心配そうにアルク様に尋ねた。
「8時間以上続けて結界かけ直しは大変だけど、鉱山からだと1時間歩いた先ぐらいに食料を運べば大丈夫じゃないかな。森の中までは王女様も透視では見ないから、というか透視できる距離の限界があるんだよ」
そうかだから
森に住む魔王を透視で見てないのね。城からだとかなり距離もあるし、王女様が自ら危ない森に入っては危険すぎて透視させられないのかもしれない。
「じゃあ行きましょう。ハナ手を」
雷斗はアルク様の手を掴んだ後に私に手を差し出した。
雷斗は少しだけ恥ずかしそうに、顔を下に向けた。
そういえば、雷斗と手を繋いだのってこの世界に来た時以来だよね。雷斗が告白してくれた時・・・・・
私は急に恥ずかしくなった。顔が熱くなるのがわかる。
私は雷斗の手にそっと自分の手を乗せた。
雷斗がぎゅうっと私の手を握って、
「じゃあ行きます。」
雷斗の金色の魔法陣が浮かび上がる
『瞬間移動』
そう唱えると私達は光に包まれその場から消えた。




