第47話 相手を想うからこそ
「うわぁ!見たことがないデザインの素敵なお家ですね」
シェリーは私の家に入ると見たことない飾りや物に感動していた。
私はアルク様から家具などを借りて少しだけデザインを製造魔法で変えているが基本はアルク様のセンス。
アジアンテイストの落ち着いた雰囲気になっている。
「ほとんどの家具はアルク様に借りているの」
「とても落ち着く不思議な感覚になります」
シェリーはニコニコしていた。
「シェリーは隣の部屋を使ってね。クリーン魔法をかけてるから、綺麗だよ。」
「ハナ様ありがとうございます。」
「部屋に行く前に、その箱貸してもらえる?」
シェリーは少しだけ申し訳なさそうに箱を出した。
「ウォル様から、作ってもらった本人に修理してもらうのは申し訳ないとおっしゃっていました。でも見たことない花飾りなので修理の仕方がわからないと」
「いいの。捨てられそうになった物を拾ってくれて嬉しい。あの日の私みたい。それに、これはアルク様の気持ちがとても込められていたから、壊れたままなのは私も嫌だったの。ウォルがまた拾ってくれた・・・・」
シェリーは優しく微笑んで
「ウォルト様とお話しをすることはないでしょうから、私が勝手に報告します。ウォルト様からは口止めされておりませんので。」
「何?」
「ハナ様が今までにお売りになられた商品は全てウォルト様が邸の者に頼んで、1種類ずつ購入しウォルト様の部屋のガラスの棚に飾られております。買いこぼれがないように、ボワソン公爵家の行商全てに偵察部隊を送っていますよ」
え?えーーーーー!?
そこまでして買ってたの?
「言ってくれたら、買わなくても作って渡したのに」
私は恥ずかしくなって顔が赤くなる
ウォルは優しい。優しさを私に押し付けないからとても心地いい気持ちになる。
ウォルを好きになっても、私とウォルに未来はない。
初めてあった時から、私はウォルの優しさに甘えてた。ウォルしか頼れなかったから。それは好きじゃなくて感謝の気持ちが大きかった。でも離れていてもウォルの気持ちが嬉しい。ウォルに幸せになってもらいたいからこの気持ちに気づかずにいたい。この私の心に芽生えてしまった気持ちは元の世界まで持っていこう。
「シェリー・・・・この髪飾りはアルク様の気持ちが詰まった物だから、これはアルク様に返したいの。その代わり別の物をウォルの為に作るからそれを渡してもらえる?」
「はい。そのようにウォルト様にお伝えしますが、明日は魔物に会いに行くのですよね?作る時間はありますか?」
「大丈夫よ、今から作れるから。シェリーともっと話したいから私が贈り物を作成する間、私の部屋でお茶しない?」
「はい!では私はティーセットの用意をして来ます。勝手に家の物を触ってよろしいですか?」
「うん、構わないよ。ありがとうシェリー。」
私が贈り物を作る間、ずっとシェリーは嬉しそうに私の話しを聞いてくれた。
先にアルク様の髪飾りを魔法で修繕した。
それからウォルへの贈り物を作りだし2時間ぐらいで出来上がった。今回魔法は一切使っていない。
「ハナ様そちらは何なのですか?」
ウォルの緑色の瞳を意識して緑色の刺繍糸をベースに金色の刺繍糸を織り混ぜて、『ミサンガ』を作った。
「これは、私がいた世界にあるおまじないみたいな物なの。願いを込めて腕や足首にずっとつけておくの。ミサンガが切れた時、願いが叶うと言われているんだよ。プロミスリングみたいな感じかな?」
でもウォルには庶民的過ぎたかな?
「ウォルには似合わなかったかな?」
少し不安になる。
「そんな事ありません!!ウォルト様はさぞ泣いて喜ばれると想像できます。ハナ様がウォルト様だけに作ったたった1つの物ですので。」
シェリーは優しく微笑む
「ウォルト様はハナ様が作った物を何でも喜んでいました。今回アルク様が作った物でさえ、ハナ様が手伝ったとわかると、壊れても欲しがった方ですよ?それが自分の為に作ってくれたとわかったら泣いてしまいますよ。」
あ。じゃあピアスはお礼であげたつもりだったけど、泣いて喜んだのかな?
「そのお二人のおそろいの耳飾りもハナ様ですよね?」
「うん。」
「やっぱり。ウォルト様が急に耳飾りをつけていたので気になったのですが、ハナ様とお揃いなので納得しました。ウォルト様は、多分一生毎日つけられると思います。ウォルト様とずっと一緒にいられなくてもお二人が繋がっている証ですね。」
シェリーのニコニコは止まらない。
「深い意味がなく作ってしまったの。ウォルに言われるがままに。でもこのミサンガは私が贈りたいって心から思ったんだよね。この気持ちに名前はつけられないし、つけたくない。シェリー・・・・・私は絶対に元の世界に帰る。それだけは忘れないで。」
シェリーは少し悲しい表情になった。
私はシェリーに
「この世界が好き、この世界の人達もそしてシェリーも大好きなの。でも、帰らなくちゃいけない。待っててくれる人達がいるから。」
シェリーはうんと小さく頷いた。
私達は夜更けまで、一生分の会話をする勢いでたくさんお喋りをした。




