第37話 村の危機
キーーーーーーーン
久しぶりの耳鳴りに私は焦ってしまう。
アルク様はまだ帰って来ていない。
村の人達に家の中に入るようにお願いした。
今、村の中で仲良くしてくれている鉱山でお父さんが働いている娘のクレアに手伝ってもらった。
クレアは私と同じ17歳で話しが合う。私の雑貨を売る手伝いもしてもらっている。この村では貴重な働き口だったらしい。
「クレア!あなたのお父さんデリックさんは帰って来てる?」
「ハナ、どうしよう。まだ帰って来ていないわ。」
この村の結界が魔物の接触を感知した。鉱山は少し離れているけど、帰り道に遭遇したら危ない。
クレアの顔が青ざめている。
「最近は魔物も見なくなっていたのに。」
私は結界から出られない。でも鉱山から帰って来る人達を村の入口で待つぐらいならできる。
「あれ?今日は、アルク様がいないから結界から出れても村には入れないはずよ!デリックさんは知らなかったの?」
「2日間の鉱山で泊まり込んでの仕事だから、お父さんが帰るまでにアルク様が戻る予定だったの。」
「鉱山内は安全なのかな?鉱山がどんな形か見に行けば良かった。」
「結界の外だから、お父さん達は多分魔物が村に近づいた事を知らない。でもお父さんがいなくて、私が不安なの。」
クレアが魔物の恐怖で涙が溢れて来ている。
私はクレアをぎゅうっと抱きしめて、「大丈夫、クレアがここにいれば、デリックさん達も鉱山から出て来ないはずよ!結界は絶対的に安全だから。」
クレアはうんうんと頷いた。
デリックさん達が、鉱山から出て来る前にアルク様が帰って来て欲しい。
結界の異変に気づいてるよね?
でも王都内にいて王都の結界内にいたら村の結界に気づかないとかあったらどうしよう。
アルク様は王都と村は馬で3時間って言ってた。3時間後には帰って来るはず。
「クレア!村の裏にある出入り口から鉱山の人達って帰って来るんだよね?裏の入口で待とう。高い建物を作るからその上から見れば遠くまで見れるはずよ。」
私達は広い村の裏の出入り口に行くまで、歩いて30分はかかるところを全速力で走った。
裏の出入り口にはしっかり門がついている。村全体は壁でしっかり囲われていてその外側をアルク様が結界をかけている。村の人達が外に出る時は必ずアルク様に報告がある。結界を緩めないと、村に入れなくなるから。
「ハナ、どこから見て待つの?」
「ここらへんの空き家ってどれかな?」
クレアは空き家を指さして
「あの家とあの家、それにあそこの馬小屋がある家も空き家よ。」
「クレア、後でちゃんと元に戻すから!あの家壊してこの門の横に木を集めてもらうの手伝ってもらってもいい?クレアは水魔法が使えるんだよね?」
「うん。でも攻撃力はないよ!」
「いいの!後で火を使うかもしれないからその時に水魔法で消火して欲しい。火を使わなくていいように魔物がこれ以上村や鉱山に近づかなければ、必要ないから。」
「わかった。まずはあの家を壊すの?」
クレアは私の説明が適当なのに、理解できなくても全てを信頼してくれる!
私もこの数ヶ月魔法を磨いて来たつもりだけど、家の解体は初めて。
でもやるしかない。
「クレア、少し離れていてね。」
解体も生活に必要な技術だから、多分できる大丈夫!
私は空き家の1つに手を触れた。そしてイメージする
壁だけを木の板に戻す。
私の手からまばゆい虹色の光が大きく光る。
『解体』
すると、空き家の壁はみるみるうちに消えて足元に木の板となって積み重なった。
あれ?これ重いよね?人1人分の大きさの板で、クレアと私でどうやって運べばいいの?
「ハナ!わかった。これを門の横に持って行けばいいのね?」
「クレアできるの?」
「一人じゃ無理だけど、村のみんなを呼んでくるから、ハナは他の家の続きをしてて」
クレアの手のひらから水色の光が出たと思ったらシャボン玉が20個ぐらい出て来た。シャボン玉は自分の意志を持っているかのように各家の扉の前まで飛んでいき、扉の前でフヨフヨ浮いている。シャボン玉に気づいた家主が玄関を開けるとシャボン玉はパチンと弾けて、弾けた音が「助けて!」と聞こえる。村の人達はこれがクレアの魔法だとわかったいるみたいだった。
「クレアの魔法を初めてみたわ。」
「そうだった?伝言用の魔法なの。これで人が集まるはずよ。」
そういうとクレアは自分の頭上にたくさんのシャボン玉を出した。とてもファンタジーで、見惚れてしまう。
自分がここにいる!と村の人達に気づいてもらうためなんだけど。
見惚れてばかりじゃいけない!
私は私がやるべきことをしなければ。
私は次の家の解体を始めた。
解体が終わる頃には10人ぐらいの大人の人が集まってくれていた。
「クレアちゃん、ハナちゃんこれを門のところに運べばいいんだね。」
村の人達は木の板を次々に門の近くまで持って行ってくれた。
私が見張り台を作りたいと言ったら、村人の中に大工さんがいて、見張り台の設計をしてくれた。
「ハナちゃん、こんな形にすれば、壊れないし5,6人は登れるよ高さを高くした方がいい。」
設計図的には5階建てのマンションぐらいの高さだった。イメージは三角すいみたいなデザイン。
確かに土台がしっかりしてたら倒れないかも。
私はイメージする
『建築魔法』
私の体中から虹色の光が放たれる!それはとてもキラキラしていて、村の人達は私の魔法を見るのも初めての人もいる。さすがに初めて見る魔法に腰を抜かす人もいた。
私は両手を木の板にのせ、イメージを続ける。木の板は自分の位置がわかっていたかのように木の板は飛んでいき次々と建物の形になっていく。
建築魔法を使って数十秒で、見張り台が出来た!
村の人達が感動で拍手喝采になった。
「手伝ってくれてありがとうございました!村から出なければ、安全なので、皆さん家にいて下さい。」
「女の子だけで、見張るのかい?それは危ない!大人が見張るからクレアちゃん達は家にいなさい。」
「お父さんが・・・お父さん達鉱山の中にいて、私が不安なんです。」
クレアは自分が見張り台にいたいと懇願した。
「多分結界の異変にアルク様が気づいてくれてたら、後2時間半ぐらいで、村に帰って来てくれます。万が一、帰って来なければデリックさん達が鉱山から戻って来ないように、何かしら考えましょう。鉱山から村までの道が一番危険だと思うの。」
「ハナちゃん、じゃあ我々もここにいるよ。みんなで考えよう。子供だけで、危ない事はダメだよ。アルク様が帰って来たら我々も怒られてしまいそうだよ。」
村の人達がみんな口々に同じ事を言ってくれた。
私はその気持ちが嬉しかった。
自分は関係ないとかじゃなく、みんなで村を守ろうとする気持ちが。
「じゃあちょっと待ってくださいね。」
『建築魔法』
私はそういうと、空き家を解体した残りの素材で
ちょっとした屋根付きの四阿を作った。
うぉーっ!!
と歓声が上がった。
「じゃあ我々はここで待とう。」
各々が家から飲み物や食べ物を持ち寄って、長丁場になってもいいように準備してくれた。
「さあクレア、私達は上から鉱山の方角を監視しよう。」
クレアは、先ほどまでの泣きそうな顔から、お父さんを村を守る!という強い意志に変わっていた。




