第36話 想いは届かない
アルク様は、私にまだ怒っている
雰囲気というかオーラが見える。
魔法には色がある。
火属性は赤
水属性は青
風属性は緑
など。
無属性の王女様は白か透明
ライト様は何の魔法でも金色になる。
ハナは魔法の種類が特殊だが、無属性にかぶる魔法でも虹色の光を放つ。オーラも大体属性に近い色になる。
アルク様は火属性を多く使うから、赤いオーラが出ている。感情が高ぶっている証拠だ。
私は、水属性でも風属性でも自由に使えるがハナに渡した魔力の結晶は青色にした。でもあの結晶の核には緑色の結晶が中心にある。2色の結晶は私しか出せない。2色のマダラにしたら、私のだとバレてしまう。それをハナが持っている事が、王女に知れたらハナがまた嫌な思いをしたら嫌だった。青色はどこにでもある。パッと見ただけでは、私からだと絶対にわからない。結晶の核に想いを込めた。今度生まれ変わったら、同じ時代同じ世界に生まれたい。輪廻転生があるなら、私はそれを信じたい。
ピリピリした空気が漂う。
アルク様は1度怒ると機嫌がなおるのに時間がかかるから、怒らせないようにいつもしてたけど。さすがに王女様を泣かせたのが私なら、なかなかおさまらないのかもしれない。
私がため息をつこうとしたとき、この嫌な空気を
一瞬で壊したのはライト様だった。
「なぁ、アルクさんは何で怒ってんの?そんな事より俺、アルクさんと話したいんだけど。アルクさんは村から王都に来たのって急用なのか?」
その言葉にアルク様はハッとして、
「いえ、急用ではありません。挨拶が遅くなり申し訳ございませんでした。勇者様、私はアルク・ボワソンと申します。勇者様の事は国中が噂しておりますので存じ上げております。」
ライト様は少し悲しい顔になった
「国中か・・・・ハナといるんだろ?ハナは俺の事話してない?」
「聞いておりますが、ハナさんはあまりご自身の話しはされません。今を一生懸命に生きています。この世界の人達が嬉しい気持ちになるようにと安価な雑貨販売に毎日忙しくしています。いつ自分が元の世界に帰ってもいいように、私達が、作れる雑貨を考えてくれております。」
「そうか。ハナ、頑張っているんだな。元気そうで良かったよ。俺は必ず魔王を倒します!それまで、ハナをよろしくおねがいします。」
ライト様はアルク様に頭を下げた。
ハナが元気そうで、本当に良かった私も嬉しいが、ライト様がハナの為に頭を下げる事に嫉妬してしまう。私がお礼を言いたかった。
アルク様は少し顔が緊張した感じになって
「今日は、王女様へ贈り物をお持ちいたしました!」
手のひらの大きさの箱をアルク様は、王女様の前に差し出した。
王女様は手を出さない。
むしろ無表情に変わった。
沈黙に我慢できないライト様が
「王女の為に持ってきてくれたんだろう?もらうのが礼儀じゃないのか?」
王女様は明らかにめんどくさそうに、箱を受け取り蓋を開けた。
中には
白バラが3輪ついた銀色の髪飾りが入っていた。
その薔薇は生花にしてはキラキラ輝いて加工しているように見えた。銀色の土台部分も手の込んだ細工がしてあって、一目で、ハナが手伝ったのがわかった。
あれ、私が欲しい。心から思った。髪飾りは私はつけないが、部屋に飾る!
アリス王女様は冷たい声で
「生花は嫌いです。枯れてなくなるから。しかもこれは偽物の生花でしょう?私に偽物とは、失礼とは思わないのですか?」
「いえ、これは生花を加工して色などそのまま保てるようにしております。」
アルク様は泣きそうだ
「はぁ。アルク、私はあなたを選びません。期待はしないで下さい。贈り物も結構です。」
王女を見て胸が痛んだ。私も王女にあんな態度なのかもしれない。
でも好きでもない相手に、気を持たせられない。
先ほどの光景が繰り返されているのかと思うと、アルク様にかける言葉がない。
王女様はその髪飾りを
手に取り花の部分を握りつぶそうとした!
パリっ!
「ちょっ!待って下さい!」
私は慌てて口を出した。
気づくと、ライト様が髪飾りを握りつぶそうとした王女様の腕を掴んでいた。
「人の気持ちを無下にしてはダメだ。」
王女様はライト様に止められたので、潰すのはやめた。
しかし、1輪だけが破損してしまった。
「恐れながら、王女様その髪飾りが気に入らないのであれば、私にいただけませんか?その代わりに先ほどのハンカチは王女様に差し上げましょう。」
王女様は私のハンカチをぎゅうっと握って
「ありがとう。ウォルト」
「私は師匠を送って参ります。ライト様王女様をおねがいします。」
「あぁ。」
ライト様は複雑な表情をしていた。
ライト様は女性に弱いのかもしれない。
そんなんじゃハナの気持ちは掴めませんよ。と教えてあげたい。
私はアルク様を連れてその場から離れた。
すれ違う時、王女様は私のハンカチを嬉しそうに持っていた。機嫌がなおって良かったが、王女様が私に期待していないか心配になる。
「ウォルト殿ありがとう。その髪飾りは、ハナさんと作ったんだ。」
「はい、すぐにわかりました。王女様がうらやましかったですよ。私が欲しかった。ハナが関係している物なら何でも。でも王女様に贈り物は喜びませんでしたね。残念です。」
アルク様は苦笑いをした
「ウォルト殿の物ならあんなに喜ぶんだな。」
「アルク様それ以上は、何を言っても、私の気持ちは変わりません。王女様も私より素晴らしい人材を見つけて欲しい。」
「人材・・・・そうじゃないよ。ウォルト殿も気づいているんだろう。王女様の気持ちを。最初から彼女は君を選んでいた。」
「その話しをしに来たわけじゃないでしょう?」
私はうんざりだった。
王女様の婚約者にとアルク様は言うが、アルク様ほど王女様を大切に思ってる人はいない。
「ハナさんが君に渡してくれと頼まれたから来たんだよ。王女様から嫌がられるのは、わかっていたけど。日々頑張ってくれているハナさんのためだよ!君のためじゃない。」
そう言って、アルク様は私の手の中に何かを掴ませた。
王女様が透視していたらいけないので手の付近だけ、見えないように渡してくれた。
触ってわかった。
私は嬉しくて嬉しくて涙が出そうになる。
「これは虹色ですか?」
手のひらを今は広げられないからアルク様に尋ねた。
「さぁ。どうだろうね。素直に教えたくない気分だ
よ。」
アルク様は軽く笑った。
「努力したんでしょうね。」
「あぁ。時間はかかった。君の事ばかり考えているようだけど、会う気はないらしい。ハナさんらしいよ。君には君の世界があって、ここで幸せになってもらいたいと。この世界の人達に感謝しているようだよ。特にオークレール公爵邸の方々に。」
「そうですか。」
私はこぼれそうになる涙を必死に我慢する。
「ハナを・・・・ハナをおねがいします。ハナに会えなくても、今この世界で同じ空の下にいる事だけで、私は満足です。」
「お互い報われない恋なんだな。」
アルク様は切なそうに呟いた。




