第33話 約束のもの
「アルク様!魔力の結晶やっぱり出来ません。」
私は数ヶ月前に約束したウォルに渡す魔力の結晶を作る練習をしていた。
「んー。なんでだろうね。攻撃魔法も防御魔法もできないけど、生活に関係することならなんでも魔法になる。」
アルク様は真剣に考えてくれるが、朝に少し練習したら
その後は雑貨を近くの町や村に売りに行く。夕方帰って来たら、また次の雑貨を作る。
というルーティンで割と忙しい毎日になってしまったが、忙しいと雷斗やウォルを考えなくて済むから、私はこの生活は楽でいい。
もうすぐ雷斗が魔王を退治に行くのか、騎士の方々がこの村を拠点に魔王の住む場所を探している。
現実を考えなければならない時が近づいて来た。
なので、ウォルとの約束の魔力の結晶を作る事に力を入れ出した。
「あー!そうだ!!!」
アルク様が珍しく大きな声を出した!
「生活魔法ならできるから、アクセサリーが作れたんだよね?」
「はい。最近はオリハルコンを使って女性用の髪飾りも作っていますよ。」
「その耳についているピアス?を作るのだろう?金具部分だけを手に握ってそのピアスを作るイメージをしたらどうかな?虹色の魔力の玉がついた状態で出来上がるかもしれないよ?」
そうか!そうかも。
ないものから作れないけど、魔力は私の中にある!
できるかも!!
「アルク様!天才!!」
「できるかも!?だから、ハナさんのイメージが大切だよ!頑張って!」
「はい!」
私は金具になる素材を手にとって、それをぎゅうっと握る
『製造魔法ピアス!』
と詠唱した!
私の手の中から虹色の光がいつもより大きく光る!!
手の中が温かい。
前にウォルが私の魔力を吸い上げる時に私の魔力は温かいって言ってたっけ。
そんな事を考えながら、魔法を使った。
光がすうーっと消えてったけど手の中は温かいまま。
私は手をそーっと広げて見た・・・・・・・・・!!!
あ!
「出来た!できましたー!アルク様〜!」
私は喜びのあまりアルク様に抱きついた!
アルク様は恥ずかしくなり、私をバッと引きはがしたが、アルク様の顔は真っ赤になっていた。
「ハナさん!むやみに男性に抱きついたらダメですよ!」
そうか
「ごめんなさい!アルク様ってお兄ちゃんみたいな家族的存在でつい・・・・・。そういえば、ウォルにもウォル以外に抱きついたらダメって言われてた。」
「ははは!ウォルに抱きついたの?ウォルは喜んだだろうね。ウォル以外・・・かぁ。独占欲かな?」
それを言われて私も恥ずかしくなった。
「叶わない夢・・・・・・。」
私はボソっと答えた。
アルク様は聞こえてたけど何も言えなかった、言わなかった。
「そのピアスどうやって渡そうか?」
「そうですよね。ウォルにもう会えないかも。あの王女ですもんね。」
「ハナ!」
アルク様は少しだけ怒ったフリをした。
最近こんな話題も笑い話にできるようになった。
「アルク様はウォルに会えますか?」
「会えるけど、その間村を空けてしまうよ。ここ数ヶ月魔物が出ていないとはいえ、ハナさんを置いておけないよ。」
「最近は村の方もよくしてくれてますし、この村には結界が張ってあるのでしょう?私がこの村から出なければ、大丈夫そうですが?」
アルク様は凄く考えている。
歩いて10時間かかったけど馬なら往復で3時間ぐらいじゃないのかな?そんなにかからないかも。
大丈夫だと思うけど。
「王女に見つからなければ、渡してすぐに戻れるな。念の為に王女への贈り物も用意して行こう!言い訳ができる。」
言い訳かぁ。でも本当はアルク様が王女にプレゼントしたいんだよね?私は知っているよ!
アルク様が今も王女の事が好きな事を!
渡せたらいいね。
「何を贈りますか〜?」
私はニヤニヤしてアルク様を見る。
アルク様の顔は真っ赤になっている
「ハナさんの為に行くんだよ!」
「はーい。わかっています」
口では軽く言ったけど、
アルク様には心から感謝しています!
アルク様、ありがとうございます。




