第32話 感謝の気持ち
朝から私は石鹸作りをアルク様に見せていた。
「どうですか?売れそうですか?」
私はアルク様の顔色を確かめるように見た。
アルク様は好奇心な目と販売できるかの品定めをしながら、真剣に石鹸を見ていた。
「これはいくらで売りたい?」
「私は他の石鹸と同額でいいと思っています。市民の方に使ってもらいたいのです!高ければ貴族の方しか出回らないし、私はいつまでこの世界にいれるかわからないので、固定客を作りたくありません。」
「行商か・・・・・。うん!行ける!固定客がつかないようにいろんな場所で販売しよう!凄く人気が出ると思うよ。他にもある?」
「はい!いろんな雑貨を売りたいです。長期で保存できるものをたくさん作ってストックしたいです。」
「たくさんって、魔素にも限界があるだろう?」
「それが、私魔素が無限でして。」
「は?」
そうですよね~。そうなりますよね。
アルク様は驚いた表情をしている。
「君はすごいな!収納魔法にも驚いたが、製造魔法の発想力が凄い!しかも魔素が無限とは・・・・・・やはり異世界から来たら何かしらの能力を授かって来るんだな。」
「アルク様それから、確かめたい魔法があるのですが、手伝ってもらってもいいですか?」
「あぁ!構わないよ!ハナさんの魔法は見てて飽きないし、楽しそうだ。」
良かった。アルク様少し顔が整いすぎて、表情が読めなくて、機嫌がわからないし。それに少し気になる雰囲気があるんだよね。王女が好きなのにこの村で離れて暮らすなんて、しかも自分の弟子が婚約者になるかもだったらつらすぎるんだろうけど。あのウォルの状況で、王女の婚約者になっても、王女は幸せなのかな?アルク様は平気なのだろうか。
アルク様が婚約者になりたいと思わないのかな?
この世界の恋愛は気持ちより優先されるものがありすぎて、悲しい世界。好きって気持ちだけは自分だけの絶対的自由なのに。
「畑でハーブを育てたいのですが、生活魔法ならどこまで成長を早められるかな?って。私がここからいなくなる前にいろいろ作りたいものが多くて。」
えへへと私が笑うと。
アルク様は私に優しく微笑んで、
「私は君が作る作物を君がいなくなった後も管理してあげよう!」
「いいのですか?」
やった!アルク様なら安心して任せられる!
「この石鹸も魔法で調合してしまったから、私以外は今の技術では作れるかわからないのですが、エッセンシャルオイルって言うのがあればポプリも作れるし、香水がある世界だから同じ感じなんですが、香水は高くて貴族にしか買えないでしょう?市民の方に簡単に手に入るものを作りたいのです。」
「ハナさんはどうしてそこまで、平民への生活を考えるのかな?」
「私も雷斗も、元の世界に帰ればただの平民ですよ?ウォルの家でお世話になっている時、お屋敷で働く人達によくしてもらったんです。私は勇者にくっついて来ただけの役立たずなのに。シェリーとか私にとっては、感謝しかないし。お礼がしたい。」
「ウォルト殿の邸でよくしてもらったんだね。」
「はい!私、ウォルに拾ってもらわなかったらお城から、ぽいって捨てられてたんですよー王女に!」
アルク様は悲しそうな顔になった。
あ!
「ごめんなさい!好きな人の事悪く言われたら嫌ですよね。」
「いや・・・それが事実なんだろう。構わないよ。君が見る王女様は昔とは違うんだよ。昔は良く笑うかわいい女の子だった。ウォルト殿との婚約間近での魔王誕生で、少し性格が変わったようだね。」
胸がツキンと痛む。
「そうですよね。王女はウォルが好きなんですよね・・・・。」
私達は無言になってしまった。
こんな時は、
「少しでいいんですが、火薬ありますか?」
「あるけど、女の子が使うには危ないよ?」
アルク様は片手を握って一瞬にして赤い光がパァーと広がった。
手を開けると赤い粉が手の中にあった。
アルク様は火属性だから火薬が作れるの?凄い!!!
「これでいいかな?」
「はい!十分です!」
私は木の枝と火薬を持ってイメージした
『製造魔法花火!』
やった!!!
出来た線香花火!ちょっと形は私達の世界と違うけど、多分大丈夫・・・・・・・・・と思う。
怖いな。
「アルク様この下の火薬が固まってるところに結界張ってもらってもいいですか?火花の威力がわからなくて。」
でもあの量で10個も花火ができたから、きっと想像通りにできているはず!!
「結界張る前に火薬に火をつけて下さい!そしたらすぐに結界ですよーーーー!!」
私が必死に結界を頼むからアルク様は笑いだした。
「そんなに危ないものなのかな?ならば、やめたらいいのに。」
「やめません!!何事もチャレンジですよ!やらない後悔よりやって後悔の方がよっぽどいいですよ!さぁ!おねがいします。」
私は線香花火の端っこを持って、腕を必死に伸ばした!
「行くよ。」
アルク様は人差し指を花火にむけて
火を飛ばした!
上手に火は火薬についた。アルク様は指で円を描いて結界を張ってくれた。
パチパチパチ
火薬から小さい炎が燃えては消え燃えては消え、とても綺麗だった。
「アルク様!!できましたよ!手持ち花火です。」
「花火・・・・・」
「ほら!アルク様の魔法はとても綺麗ですね!」
「私の魔法は誰かを傷つけるものだけではなかったんだな。」
「不思議な事言いますね!アルク様の魔法は初めて見た時からとても綺麗でしたよ!」
アルク様も花火を手に持って火を点けた。
その花火は一瞬で終わってしまうが、私達はとても楽しい時間を過ごした。




