第31話 最弱の勇者の誓い
俺の今までの訓練が無意味だったのかと思うほど、ウォルは強かった!
「業火を使うなら、水魔法属性には弱いので、相手をよく見て下さい!」
俺が火属性を使うと、すぐに水魔法に切り替える!氷属性で全てを凍らそうとすれば、結界で防御する!その氷魔法を利用して風魔法で氷を砕き、その氷を使って風魔法を使って氷で攻撃してくる!
魔法の切り替えや反応が早すぎる!
『トルネード!』
俺の手から金色の魔法が放たれるが、ウォルは風魔法で空高く飛んで避ける!
俺は全属性が使えても実践に慣れていない!
ウォルに全く攻撃が当たらない!
「詠唱をする時間が相手に、逃げる時間を与えてしまうでしょう!無詠唱で魔法を使えなければ、誰も倒せませんよ!」
「簡単に無詠唱とか言うなよ!切り替えが難しいんだ!」
「全属性が使えるからこその欠点です!ご自身の魔法能力を高めるのと同時に弱点をつかなければ倒せませんよ!」
それから何時間戦ってもウォルに勝てない!俺の魔素の方が先に限界が来た。
「ここまでですね。続きは明日です。机上の勉強も大事です。明日は奥義について、調べましょう。」
「はぁはぁ、奥義・・・・・ウォルも知らないのか?」
息切れがおさまらない。
本当に俺は弱いんだな。
ウォルは息切れ1つしていない。
「そうですね。私は勇者じゃありませんし、前回の勇者は500年前ですよ!文献が頼りですね。」
「ウォルは強いんだな。この国一番と聞いたが、今まで訓練してくれた人達とは雲泥の差があるが、ウォル以外に強い人はいないのか?」
「いますよ。」
ウォルはつらそうな顔になった。
「もしかして王女が言っていたが、今ハナがいる村のアルクって奴か?」
「そうですね。アルク様は、私の師匠です。ただ少しだけ私が魔法の種類が多く使えただけで、師匠は王都を出てしまったんです。」
「そうか、こんなに広い世界で、能力が高い人が少ないのは、大変だろうな。」
「魔王が誕生しなければ、何の問題もありません。隣国同士戦争もありません。条約をしっかり結んでありますので、ただ魔王はなぜか我が国にだけ誕生しています。戦いに行くときは他国の魔術師も集結します。精鋭達が集まるので、私ぐらいの魔術師もいるかもしれませんね。」
「他国も協力的なんだな。」
「魔王を倒せなければ、世界が滅亡しますので、他人事ではないのですよ。」
「いつも勇者を召喚してるのに、滅亡なんてしないだろ?」
「最初かどうか知りませんが、勇者召喚など考えてなかった時代は地獄だったようです。魔物に家族を奪われ、町や村は廃屋となり、世界中が屍で疫病が出たり、夢も希望もない時代が何年も続いたそうです。その時代を教訓に文献に記録し、2度と同じ過ちを犯さないようになったようです。魔王が定期的に誕生するのは、私達人間に、神が罰を与えているのかもしれませんね。」
「罰か・・・・・ウォル、俺は神に罰を与えられたのかもしれない。」
「ライト様が?」
「俺がいた世界も広い。その中で何で、俺なんだろう。俺が人の気持ちを確かめる為に、関係のない人達を巻き込んだ。自業自得なんだろう。」
「私は、そうは思いません。あなたは私にハナを会わせてくれた。この世界で想いは叶いませんが、異世界から来てくれた。それだけで、私にとってあなたは、救世主です!・・・・・私も不謹慎ですね。世の中は恐怖に包まれているのですから。」
「そうだな。俺はウォルに魔法も男としても勝てる気が今はしない。でもハナが元の世界に帰りたいと思う気持ちを守る!」
「はい!ライト様!ハナに・・・この世界に・・・明るい未来を願います。」
俺はウォルと拳と拳を当て自然とグータッチをした。
「あぁ!」
この瞬間、俺は改めて魔王を倒すと誓った。




