第30話 最弱の勇者
俺は一睡もできなかった。
昨日ウォルは安静にしてたって事は、体調が悪いんだろう?そんな相手に本気で戦えない。
俺はやっぱり弱い勇者なんだ。
心も実力も。
ハナに会いたいだけなのに。
こんな俺が何故勇者に選ばれたんだろうか?
心が弱すぎてハナの気持ちを確かめる為に、好きでもない女の子と付き合った罰だろうか。
俺は、もうあの時みたいにハナの気持ちを確かめたりしない。まっすぐにハナに向き合いたいんだ。
コンコンコン
部屋の扉をノックされた。
俺は気力ない声で答えた。
「・・・・・どうぞ。」
バンッ!!!
扉が勢いよく開いた。
「ライト様!今日私と手合わせがしたいと伺っておりますが、いつまで経っても訓練場に来ませんが、何かあったのですか?」
は?凄く元気そうなウォルが部屋に入って来た。
「ウォルは体調が悪いんじゃないのか?」
「それは昨日でしょう?魔素が無くなっただけです!もう復活しましたので大丈夫です。」
「魔素・・・・ウォルに俺は負けるんだろうな。」
弱気な俺にウォルは、大きなため息をついた。
「・・・・・はぁ。はっきり言わせて頂きますが!今までは私の邸にハナがいたので、あなたが弱くてもいいと思っていました!あなたが弱ければ魔王は倒せない。その分私はハナとずっと一緒にいれたのですから!!」
「やはり、ウォルの家にいたんだな。ハナが好きなのか?」
「それが何か?でも、ハナがアロニーの村に行ってしまった以上、危険な場所にハナを置いてはおけません。早く魔王を倒して、元の安全な世界に帰ってもらいたい。」
「ウォル、元の世界に帰ったらハナに会えなくなるのにいいのか?」
その言葉を言った瞬間!ウォルは俺に近づいて来て俺の胸ぐらを掴んだ!!
「私の気持ちなど関係ない!ハナが元の世界にライト様と戻る事を望んでいるんだ!!ハナを危険な場所に置いとくぐらいなら弱い勇者と帰って欲しいね!!」
ウォルの瞳から怒りが伝わって来る。
「ハナは、俺と戻りたいと本当に言ったのか?」
ウォルは俺を離し、切なそうな顔した。
「ライト様も聞いたでしょう?一緒に帰ると!!」
「あぁ。でもハナは怒っていた。俺は嫌われてしまったんだ。」
「ハナに嫌われたら、もうハナの事は嫌いになるのですか?大事なのは相手の幸せであって、己の気持ちじゃない。両思いでなければ好きじゃないのならそれは本当の愛じゃないと私は思います。」
「ウォルは大人なんだな。確かにそうだよな。ハナに笑っていてほしい。でもその隣に俺はいたい。相手の幸せを願えないなら、隣にいる資格なんてないのに。」
「そうですね・・・・隣に立てるライト様が羨ましいです。私には一生叶いませんから。」
その言葉が凄く深く感じた。
「私は小さい時から、一人の女の子に会う事だけを夢見て来ました。それが叶ったのです!私はそれだけで幸せなのです。そして私はこれから次の夢を叶えます!」
「その女の子って・・・・・・まさかハナなのか?」
「私は予知夢が見れたようです。」
「次の夢ってなんだ?」
「それは秘密です。叶わない夢は見ません。」
「王女の婚約者になるんだろう?」
「それは違います!その話しはなくなりました。」
でも王女はウォルの事が好きだと思ったけど。
「もう話しは終わりです!ライト様、ハナの為に強くなって下さい!私が指南いたします!さあ手合わせを。」
気になる事があるが、ウォルが言う事が正しい!
「あぁ!頼む。俺は史上最弱の勇者のようだから!」
俺はウォルにニヤっと笑った。
ウォルは優しく笑い返してくれた
「史上最強の勇者にして差し上げましょう!」




