第26話 アロニーの村Ⅴ アルクの過去
魔物の後は追ってはダメだと言われたので、仕方なく周りの警備をしながらアルク様の家に帰った。
アルク様の家のリビングルームで私はお茶を飲んでいた。
「美味しい!!アルク様は公爵家の方なのにお茶を入れれるのですか?」
「この村にいるから、できるようになったんだよ。」
「ふーん。でも、偉い方なんですよね?」
「公爵は父だよ。私は長男だから次期公爵なんだろうけど、辞退するつもりだ。」
「辞退・・・公爵様にならないと?」
「私は王宮魔術師の時に個人で男爵の爵位を頂いているんだ。もうすぐ弟に話して男爵を名乗るつもりだ。」
「あれ?それだと私ボワソン公爵様の保護じゃなくなりますね。困りました!」
私は真剣に答えたのだが
アルク様はケラケラ笑いだした!
「君はいつまで、この世界にいるつもりのかな?大丈夫!君が元の世界に帰れるまでは、男爵位は名乗らないし、魔王がいる今は何も出来ないんだよ。もし私がいなくなってもルイスがいるから、ハナさんは安心してこの村で暮らせるよ。」
「いなくなるって何だか辛い言葉ですね。アルク様はずっとこの村にいるのですか?魔王がいなくなれば王都に帰るのですか?」
「これから長い付き合いになるし、少しだけ昔の話しをしようか・・・・・・・・・」
そう言ったアルク様の瞳は、とても悲しそうだった。
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ボワソン公爵家長男として生まれた私は、5歳で火属性魔法を使い、そこからどんどん頭角を現し、気づいたら10歳で王宮魔術師になっていた。
王宮には何度か父に連れられて来た事はあったが、王族の方にお会いした事がなかった。初めて謁見の間で陛下や王妃にお会いしたんだ。そこでこの国唯一の後継者、次期女王にお会いした。齢5歳だった。ピンク色の髪の毛はとても可愛らしく、守ってあげたい妹のようだった。しかし金色の瞳は神々しく、私には高嶺の花のようだった。
王女様は城で私を見つけるといつも話しかけて来ては、魔法を見せてくれとせがんだ。
『王女様恐れ多くも私の魔法は主に火属性ですので、王女様が私の魔法でケガをされては大変です。』
『あら!アルクは結界魔法が使えるでしょう?』
私は魔法をあまり見せないようにしていた。いつ侵略者が現れ手の内を知られてはならないと思ったからだ。
『何故、王女様がご存知で?』
『えへへ!私は神眼って言われる透視ができるの!見ているものを鏡にも映し出す事もできるわ!だからアルクが結界を張ってる姿を見たわ。』
『王女様!今年でいくつになられますか?』
『6歳よ!アルクだって5歳で魔法は使えたんでしょ?私にだってできるのよ!』と言って笑った少女は、しっかりした瞳で妹とは思えない・・・・私にとって気になる存在に変わった1人の女の子。
それから祭司様に王女様と私の結界の事を話した。500年前に魔王がいた時代は魔法もいろんな種類をほとんどの人間が使えていたが500年の歴史で魔法は廃れていった。
二種以上の魔法属性が使えるだけで、国をあげて喜び、特別待遇となる。
次期女王として、問題ない存在。尊き存在となった。
私達は、それから4年間は仲良く過ごし、周りからは婚約者候補ではないかと噂されるようになった。
私は嬉しかった。こんなにも可愛くて尊き方の婚約者になれるなんて。
でも私の幸せは、私自身が壊してしまったんだ。
懇意にしていたオークレール公爵家の長男が、あまりいない風属性の魔法が使えるということで、私は魔術師として興味が湧いてしまったんだ。
それから私はオークレール公爵家長男のウォルト殿に会いに行った。王女と同じ私より5歳下の10歳だった。
金色の髪に緑色の瞳はどこか大人な雰囲気だった。私は彼と魔法を鍛錬する事が楽しくなっていった。
王女様も同じ年の友人が出来れば楽しいかと思って、今まで2人で過ごしていた時間もウォルト殿を連れて行くようになったんだ。
王女は、初めてウォルト殿にあった瞬間から彼に夢中になったのがわかったが、私は二種以上の魔法が使えるし、婚約者候補には私しかいないと傲慢な考えになっていたんだ。
ある日、ウォルト殿が私に夢の話しをしてきた
『ここ最近同じ夢を見るんだけど、僕はその子と違う服を着ている。』
内容は様々だったが出てくる子は必ず同じだと。
『それって異国の子なのかな?僕その子に会いたいんだ。でも僕は大きくて、今じゃないみたい。』
その話しを聞いて私はゾッとした。予知夢じゃないだろうか?
ウォルト殿は風属性以外にも魔法が使えるのでは、
そして何より・・・・・・異国の服が私には引っかかる
文献には、500年に1度、魔王が誕生する。魔王を倒すべく異世界より勇者を召喚する。
歴代の勇者は男性だった。ウォルト殿が見た夢は女の子だった。多分本当に異国なのかもしれないが、万が一を考えると、私はこの国を守りたい。王女がいつも笑っていられる世界であって欲しい。
私はウォルト殿を弟子として私の知識を全てウォルト殿に教えた。
ウォルト殿はやはりニ種以上の魔法属性が使えたんだ。珍しい風属性と別に水属性も。
そして・・・・・
ウォルト殿が13歳になったとき私が18歳、私達は王女様の婚約者候補となった。
『師匠!どうして、僕が選ばれたの?師匠が婚約者ではなかったのですか?僕は!僕は・・・・会いたい子がいるのです。』
『夢の中の子かな?』
『はい。絶対会えます!僕はわかります。』
『だとしても、王族の言葉に否はない。ウォルト殿も私も二種以上の属性が使えるから選ばれたんだ。これから先、私達に優越がつかなかった場合は王女様が選ぶだろう。でも私は、ウォルト殿が私より勝っているのなら王女様を守ってもらいたい』
私の大切な女の子を・・・・。




