第24話 アロニーの村Ⅲ
「ウォルト、気が済みましたか?」
アリス王女がアルク様の家の前まで来ていた。
アルク様は王女の前にひざまずいている。
「ルイス!」
王女は側近のルイス様を側に呼び、
「ハナの生活費をここへ。」
「え?生活費?」
「失礼ながら申し上げます!ハナの生活はオークレール公爵家が面倒みますので、王家からの援助は大丈夫です。」
ウォル〜ありがとう!
私も王家からのお世話になるのは嫌だ!!
「ハナとウォルトはもう無関係です!その必要はありません。オークレール公爵家がハナに関わる事をこの瞬間より禁じます!命令に背けば、オークレール公爵に代償を支払ってもらいます。」
それってウォルのお父さんが罰を受けるって事?
「え?何でそんなに、ウォルが私に親切にする事が嫌なのですか?そんな周りくどい事しないで、はっきり言えばいいのに!」
「はっきりとは?」
アリス王女のキリッとした綺麗な顔が一瞬動揺したように見えた。
「そういうのは、自分で気づかなくちゃダメです!!それにウォルのところも王家からも援助は入りません!
ただ1つだけお願いがあります。」
アリス王女の顔は少し動揺したままだったが
「何でしょう。」
「私が制作するものの販売許可とかってもらえますか?それと私に、この村の一部の土地を貸して下さい。」
ん?
「あれ?これも援助になるのかな?」
その言葉にアルク様が吹き出した。
「気持ちのいいお嬢さんですね。王女様!私がハナさんの保護責任者となりましょう。彼女の販売許可や土地使用は我が領地で全て行います。」
「ボワソン公爵家がか?」
え?アルク様も偉い人なの?
「はい。」
「ボワソン公爵家が動くなら、オークレール公爵家は手が出せませんので、ご安心を。王女様も初めからウォルト殿の手が届かないこの地に元からハナさんを連れて来るつもりだったのでしょう!?」
「アルク様!!」
ウォルは嫌そうな顔をした。
両家はあまり仲が良くないのかな?
「シェリーさんもオークレール公爵家のメイドなのでおかえり下さい。王女様よりハナさんが不快を買います。」
先ほどまで一緒にいると思ってたのにシェリーもうお別れなのね。
「ハナ様・・・・・・・・・。」
シェリーは悲しそうな顔をした。
次の瞬間
あの時と同じ耳鳴り音がした!!!!
キーーーーーーーンッ!
「この村の1キロ先の結界に魔物が現れたようです!ウォルト殿は魔素がありませんので、王女様はハナさんを残して皆さんを連れて王都にお戻り下さい!!ここは私一人で大丈夫ですので!」
「兄上・・・・」
王女の隣にいたルイス様が心配そうに声をかけた。
「お前は王女様を守れ!早く王都へ」
「嫌だ!私は帰らない!」
ウォルは抗うが、周りの騎士達に、抑えつけられた。
シェリーも騎士が腕を掴んで魔法陣の中に入った。
「ウォル!シェリー!ありがとう!二人とも大好きだよ!楽しい日々をありがとう。」
私は笑顔で二人に手を振った!!
この世界に来て、またバイバイを言うのね。
出会う分だけ別れがある事をこの世界で思い知らされる。
私はこの世界の人間じゃないから。




