第17話 魔物
アリス王女の怒りも、私の怒りも収まりそうになかった。
「ハナは王都への立ち入りを禁じます!これより先は約束通り、アロニーの村での生活をなさい。アロニーであれば、生活の保障をいたしますが、他の地区での生活ならば保障いたしません。」
「待って下さい!王女様!ハナ様にまだ王都の外での暮らしは危険です。」
ウォルが必死に庇ってくれるけど、私の怒りも収まらない。
「わかりました!今これより、アロニーの村に向かいます!」
「ハナ?アリス王女どういう事なんだ?」
雷斗は全く意味がわからない状況だった。
「雷斗!私は雷斗の助け無しには元の世界に帰れない!だから、魔王が住む森の近くの村で雷斗が魔王を倒すのを待つしかない!でも、でも!魔物の中にも害がない魔物がいるんじゃない?むやみやたらに倒して、気持ちがいいの?そうしなければ強くなれないの?誰かの犠牲の上に成り立つ強さなんて、間違ってる!・・・・・・・・・でもその強さに頼るしかない私はもっと最低だ!」
「ハナ?」
雷斗が困惑している
「私はこの世界で生き残るためだけに、生きる。楽しさも喜びもいらない。」
私は生活魔法なら方角がわかると思った。
手のひらを上にむけて
『安全なる道標』と唱えた。
私の虹色の光りは森の奥へと向かって行った。私はその光りを頼りに森へと歩き出した。
「ハナ!魔法が使えるのか?」
雷斗が私を掴もうと声をかけたが、私は振り返らなかった。そのまま森の奥へと進んで行った。
ライトはわけがわからず、自分が何故私を怒らせたのか、今何をしたらいいのかわからず・・・ただ立ち尽くしていた。
ウォルが慌てて私を追いかけた!
「ウォルト!行ってはなりません。」
「王女様には勇者様がお側にいます。今ハナ様は私の管理下にいます。村への同行ぐらいで、約束を反故にしないで下さい。村での生活が確認できたらすぐに戻ります。」
ウォルが走って私を追いかけた。
「ハナ!ハナ!待って!」王女達が見えなくなったぐらいで、ウォルが私に追いついた。
「ウォル。」
私の瞳からは涙が溢れていた。
ウォルは私の涙を手で拭ってくれた。
「ハナ・・・・透視鏡で見えたけど、あの魔物に襲われたというか、ハナから近づいていたよね?」
私はうん、と頷いた。
「何があったの?」
私達は村へと歩きながら話した。
「共通言語、雷斗は授かっていない。」
「この世界で生きる為じゃないのか?」
「この世界の言葉や文字が何でわかるかわからない。でも雷斗は勇者だから特別なのかも。私は共通言語で、魔物の言葉がわかった。」
「え?」
ウォルが凄く驚いている。
「あの魔物は人間を襲うつもりなんてなかった。私はケガしてたから助けたかった。ただそれだけ。」
「魔物は全部が全部悪ではないと?」
「わからない。初めてみたし。でも、倒す前に私の声が雷斗には届かなかった。魔物ならなんでもいいの?誰も襲われてなかった!ただそこにいただけ。」
「ウォル・・・・・魔王が誕生したから魔物が生まれるんだよね?魔王も魔物も誰かを襲ったの?」
「魔王は誕生したばかりでまだ誰もその姿を見ていない。魔物に襲われた人間はいるよ・・・・。」
そっか。
「悪い魔物は、存在するんだ。魔物に襲われ亡くなった人の家族は魔物全てが憎いと思う。」
ウォルが言いづらそうに
「もし、あの魔物がハナを襲おうとしたら私は間違いなく魔物を瞬殺で殺したと思う。」
「だから・・・・・勇者様の気持ちはわかるんだ。私もハナに嫌われてしまったかもしれないね。」
「ううん。ウォルなら、私の声が聞こえた。いつもどんな言葉もウォルは拾ってくれるから。」
ウォルの顔は赤くなった。
赤くなった顔を手で、隠して
「私を信じてくれてありがとう。」
「私は、この何も知らない世界で1人じゃない。いつもウォルが味方だった。でもこれからは、1人で生きて行かなきゃね。」
「ハナ・・・・私もハナといたい。」
「ウォルにはウォルのやるべき事があるでしょう!私はいずれここからいなくなるのだから、私の事は気にしないで。・・・・でも雑貨を売って生きて行くつもりだから、そういう販売とか手伝ってね。」
私はウォルをなだめるように優しく笑った。
ウォルは黙ったまま何も答えなかった。
ウォルは自分の左手で、私の左手を取った。
そしてウォルの右手から青色の魔法の光りが放った。ウォルの右手には青色の綺麗な宝石のような直径1センチ位の物が出来た。
「ハナこれと同じ物作れる?手にこの丸い形を意識してみて!」
私はわけもわからず言われるがまま右手を広げ丸い宝石を意識してみた。
でも、手から虹色の光りは放つけど、形にならない。
すると、ウォルはもう一つ右手に同じ青色の宝石を出した。
「これは、私の魔力の結晶なんだ。」
すると、ウォルは自分が持っていた剣を地面に置いて
『風魔法』
と剣に向かって唱えた。
キーンッ
剣の刃先が少しかけた。
その剣のかけた部分と先程の結晶を私の手の中に握らせた。
「ハナ製造魔法でアクセサリーをイメージして。」
アクセサリー?
『製造魔法』
私はとなえると、手の中で虹色に光った。
そっと手を開けると、
青色の宝石がついたピアスが1セット出来ていた。
「ハナ、これは?どうやって身につけるのが正解?」
そうかピアスがない世界なんだ。
私は左耳をウォルに見せて
「耳に小さな穴を開けてこのピアスをつけるの。ほらここに穴が開いてるでしょう?」
学校からこの世界に来たから、私の耳にピアスは着いてなかった。
今作ったばかりのピアスを耳につけて見せた。
「なるほどね。」
そういうとウォルは
『水魔法』
と言ってウォルの傷のない左耳に、ウォル自身で穴を開けた。
「キャッ!!」
私はびっくりして声が出た。
ウォルの左耳から血が出ている。
「ウォル!!何をしてるの?」
「ハナとお揃いのアクセサリーを着けるためだよ。」
私は慌ててハンカチを取り出して、ウォルの耳に当てた!
「村についたら、お薬もらおう!とりあえず・・・・」
私が言い終わらないうちに、耳を押さえてる手の上からウォルは自分の手を乗せて言った。
「そのピアスをつけて!」
私はもう一つのピアスをウォルにつけた。するとウォルは
『回復魔法』
と唱えた。
ウォルの耳から血が止まった。
え?
回復魔法って
光属性じゃないの?
「私がこの魔法が使えるのも秘密だよ!」
ウォルは口にの前に人差し指を当ててシーっとした。
私は周りを見渡して
「結界は?結界してた?」
ウォルはクスクス笑いだして、
「もちろんしてるよ。私はもともと無詠唱で魔法を起こせるからね。」




