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7 敵のアジト②

 


  廊下らしき道を進んでいく。どうやらここは古びた屋敷の様だ。昼間なのにどこか薄暗く湿っぽい。途中何ヶ所かあった部屋を確認してみたがこれといった特徴は無し。そして屋敷の様だが何故か窓がない。


「窓がないのでここが何処なのか、何階なのかも分かりませんね。」


「ええ。外に出ようとも迂闊には出れないですね。お2人共、大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫ですわ。」


「わたしも、大丈夫ですっ。」


  引き続き慎重に進んで行くと灯りが漏れてる部屋があった。このままじゃ埒が明かないので少し大胆にいってもいいかもしれない。手前の部屋が空き部屋だったので、中の安全を確認してから2人に入ってもらう。


「様子を探って来ますのでここで待っていて下さい。」


  扉に近づくと声が聞こえてくる。3人、いや4人くらいか。もしかしたらまだ他に居るかもしれないので気を引き締める。扉は少し開いている状態なのでそこから中を覗く。中に居たのは髭面の男4人。どうやら誘拐が上手くいったので上機嫌でお酒を飲んでいる様だった。こいつらの依頼主はそんなに気前がいい奴なのか。油断している今がチャンス。

 

  指先を敵の背後にある本棚に向けて振る。そうすると本棚が倒れ酒を飲んでいた男達は倒れてきた本棚に頭を強打してそのまま倒れる。


「お、おいっ!!お前ら大丈夫か!!!なんだっていきなり倒れてきたんだ!?」


  残った1人が仲間の元へ行く。伸びている仲間を見て不思議そうにする。


「あの、なんかすごい音が聞こえましたけど大丈夫ですか?」


  コツコツ、とヒールを鳴らして近づく。びくっとして勢い良く振り返る男。わざと1人残したのはここの事を聞く為。


「なんだお前、どうやってここまで来た?」


  初めは警戒していた男も、ドレスの女と見て警戒を解いた。


「一緒の部屋に居た男の方にここを案内されたのです。相手してやれ、と言われて来たのですが…」


 このまま演技してみせようではないか。か弱い令嬢を演じて色々聞きだしてみよう。


「お相手ということですが、私は何をすればいいのでしょうか?」


「ふーん、あいつらも気がきくじゃねえか。丁度いい。他の奴らは伸びちまってるから俺が独り占めできるぜ。とりあえずこっちに来い。」


  男の近くに近寄ると腕を引かれソファの男の横に無理やり座らせられる。……我慢よルナ。


「お嬢ちゃん、綺麗な顔してるなぁ。俺好みだぜ。」


  そう言って毛だらけの手で顔を撫でられる。ぞわーっと背中に鳥肌が立つが手に力を入れ耐える。……我慢よ我慢。


「気に入って頂けて嬉しいです。さぁ、どうぞ。」


  ベタベタ触られるのも不快なのでお酒を注いで距離を取る。男は上機嫌でお酒を飲み干す。どうやら怪しまれてないみたい。


「いや〜お嬢ちゃんみたいな綺麗な子に注いでもらう酒はたまんねぇなぁ!」


「ありがとうございます。先程まで居た部屋は退屈でしたから。お話相手になって頂けると嬉しいです。」


  男の目を見てニコッと笑う。一緒に首を傾げる事も忘れずに。これは親友のヴィーナに教わった男を落とす方法とやらだ。ヴィーナはよく使う方法らしいけど確かにヴィーナみたいな美人にやられたらイチコロだよね。私は初めてやったけど私なんかで大丈夫かな。


「…お、おう。なんか照れちまうなぁ。」


  男の顔がほんのり赤くなって。どうやら変ではなかったみたい。私ってば演技派かも?今度リオンにでもやってみようかなーなんて思ったけどリオンに鼻で笑われて終わりそう。アホか、なんて言う光景が目に浮かぶ。他の女の子達にはニコニコとする癖に!……いやいや、考えが逸れてしまったが今は目の前の事に集中!


「そういえばここはやけに暗いんですね。私暗い所が少し苦手で…。明るい所があれば良いんですが…。」


「なんだお嬢ちゃんは暗い所が苦手なのか?お化けが怖いってか?がはは。」


「……そうなんです…。お化けが怖くて…。」


「……っお嬢ちゃん後ろっ!!」


「……っえ??」


  後ろ、と指を指され振り返るものの後ろには何も無い。…これはもしかしてだまされてる…?


「…………っきゃあ!!」


  それなら乗ってみせようと、がばっと男に抱きつき怖いです、なんてか細い声で言えば、男は嬉しそうな声を出す。


「がははは。冗談冗談!!」


「…もう!冗談なんて酷いです…。」


  なんだろうこの茶番は…何やってるんだろう私…。自分でやっといて今物凄く恥ずかしい。顔に熱が集まってきている。ある意味怖がって見えるのかな。でもこんな所誰にも見られたくない!特にリオンに見られたら弱味として一生バカにされるに違いない。この茶番劇は絶対墓場まで誰にも知られず持っていく。っていうかこの人ほんとお酒臭いよ!


  すると、どさくさに紛れて体を触られる。すーっと背中を通りお尻を触られた。驚いてびくっと肩を上げてしまう。その反応に気を良くししたのかそのまま撫でられてしまう。このセクハラ野郎………我慢我慢。


「…あの……。」


「……それで暗い所が怖いから明るい所に行きたい、だっけか?」


  さわさわ


「はい…。」


  我慢我慢。聞き出すまで我慢…。


「ここは地下だからなぁ。上に上がれば明るくなるぜ。」


「へぇ、地下だったんですね。どうりで窓もない訳ですね。」


「そうそう。あ、でも上の出口の所には俺たちの雇い主が居る部屋があるんだけどそこには近付いちゃダメだぜ。」


「近付いたらいけない事でも?」


「……死にたくなかったらここに居る方が賢明だぜ。がはははは!!」


  酔っ払っているおかげでいろいろ話してくれた。でも死にたくなかったらとはどういう事だろう?その男に殺されるとか?


「あぁ〜良い触り心地だ…ぐふぉっ!」


  あんまりお尻を撫で回すから一発ガツンとやってやった。聞きたい事は何となく聞けたし、それにこれ以上聞いても話しそうもなかったしね。

  男達が目を覚ました時動けない様にしてから部屋を出る。隣の部屋へと戻れば安堵した2人の顔。


「お待たせしました。大丈夫でしたか?」


「はい。あなたこそ大丈夫でしたか?何かすごい音が聞こえてきましたが…」


「大丈夫ですよ。変態男達には眠ってもらっていますから。」


  ニコっと笑う。その顔を見て2人は何故だか青褪めた。




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