5 男子禁制お茶会②
※リオン視点
「ルナっ!!」
既に魔法陣は消え、ルナや令嬢達、侵入者の姿はもう居ない。くそ、と舌打ちをする。
叫び声が上がってから魔法陣が発動するまで約数十秒。すぐに突入したが奴らも中々のやり手らしく、最後に見えたのは消えてゆくルナの姿。不穏な動きがある事は予め分かってはいたが、まさかこんな大ごとになるとは。男の護衛の騎士団をこの場から遠ざけたのももしかしたら奴らの作戦の内だったのかもしれない。唯一の手がかりは水でびしょ濡れになっている男達、恐らくルナが吹っ飛ばしたであろう、気絶した2人。洗いざらい吐いてもらおうか。
苛立ちがおさまらず、こいつらを拷問でもかけてしまおうか、そう思った矢先に王女様がこちらにやって来た。
「リオンさん。」
「王女様。お怪我はございませんか。」
「え、ええ。ですが何人かが連れ去られてしまったみたいで。」
「奴らを侵入させてしまったこちらの落ち度でございます。申し訳ございません。ですが、ルナがあちらに居るというのが唯一の救いでしょうか。ただでやられる様な柔な奴ではありませんので。」
「ですが本当に大丈夫なのでしょうか。敵は沢山居たようですし…。」
「あいつはああ見えて強いですよ。特に魔法を使わせたら叶う奴なんてそうそう居ないですよ。」
「信頼されてるのですね。ですがだからといって完璧には安心出来ません。すぐに手を打たなければ。」
「ええ。先程ルナが吹っ飛ばした2人を捕まえています。あとはお任せください。」
ルナと一緒に護衛の為潜入した黒髪の女性が、王女様を本来の護衛の第1小隊の騎士に任せていた。
「リオンさん、でしたか。」
「はい。呼び捨てで構わないですよ。」
「ではリオン。わたしは第3小隊のエリと申します。この後は第1小隊が引き受けるという事ですが第3小隊をいつでも動かせる様手配しておきます。人手が必要であればすぐ要請して下さい。」
「それはありがとうございます。助かります。」
「それと、ルナの事ですけれど…」
「大丈夫ですよ。ルナは強い。それに僕が絶対に連れ戻しますから。」
「…うふふ。随分と大切にされてるのね。妬けちゃうわ。」
「……」
初対面のこの人に心の内を見透かされたようで思わず目を逸らしてしまう。初対面ですら察してしまわれるのに何故当の本人は何も気付かないのだろうか。あの馬鹿。
エリはんはルナの事が本当に心配な様だが、さすがは第3小隊の騎士。仕事が早くて頼りになる。
そうは言ったものの、連れ去られてしまったのがルナだから落ち着かない。確かにあいつは強い。幼馴染として長く過ごしてきた日々の中でそれはよく分かっていた。自分が魔法を一つ覚えればあいつも同じ様に覚え、強くなれば同じように強くなる。お互いが意識し合い成長してきたのだ。学生時代に厄介ごとに巻き込まれた時も、怪我一つなく問題を一緒に解決した事もある。なのであいつの強さは自分が1番良く理解している。
それでもいつだって心配なのは昔から変わらない。だから必ず俺が見つけ出す。
ルナが吹っ飛ばした2人組へと近づいて行く。先にケンカを吹っかけてきたのはそっちだ。容赦はしない。
ーーさて、拷問の時間だ。洗いざらい吐いてもらおうか。