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2 初日



 目を覚まして目に入ったのは見覚えのない天井だった。


 何回か瞬きした後騎士団の寮だったことを思い出す。ぐっと伸びをしてから起き上がる。昨日は横になってすぐに寝付いたみたいですっきりとしている。枕が変わると眠れなくなる人もいるみたいだけど私はむしろ寮の枕の方が調子がいいみたい。




  顔を洗ってきて簡単に朝食を済ませる。朝食用に、と買って置いたパンがすごくおいしくて今日も1日頑張れる。寮の近くにあるパン屋さんなのでまた違うパンを買いに行ってみよう。昔からパンが大好きなので騎士団に入ってなかったらパン屋さんにでもなってたかもしれない。パンは何でも好きだけど1番好きなのはメロンパンだ。異国のパンらしくて初めて食べた時は感動してしまった。まわりはサクサクなのに中はふわふわ。すごくおいしい。メロンが入ってるわけではないのにメロンパンという名前なのは今でも不思議。考えてたら食べたくなってきちゃった。


  そんなメロンパンを初めて私に食べさせてくれたのは幼馴染のリオンだった。リオンはパンの事まで詳しい。リオンよりも勝ってるものなんてあるのだろうか。いつかリオンを驚かせてみたい。


  それにしてもリオンが素っ気なくなったのはいつからだろう。昔は家が近い事もあってよく一緒に遊んでいた。当時は今とは真逆ですごく優しかった。メロンパンをくれた時だって満面の笑みを浮かべながらこれあげる、なんて言われたから正直天使かと思った。それが今では会う度にからかってくるから解せない。あの頃のリオンに戻ってくれないかなぁなんて考えながら身支度を整えた。



 ーーー



「俺は第3小隊の隊長やってるシヴァだ。よろしくなー。」


「ルナ・フリージアです。よろしくお願いします。」


「おーおー、固い固い。もっと気楽に行こうぜ。」


  初めての顔合わせ。1番初めに紹介を受けたのは第3小隊の隊長のシヴァさん。第一印象は頼りになる人って感じなのだがそれはすぐに変わった。だって見てしまった。今お酒飲んでたよ?慌てて隠したよ?勤務中にお酒いいの…?


「…隊長。とりあえずそのお酒は捨ててください。新人の前で一体何をやっているんですか。ったく。…申し遅れました。僕はソール。何か分からない事があれば遠慮なくどうぞ。」


  クイっと人差し指で眼鏡を上げながら隊長をひと睨みしするソールさん。だらしない隊長を正すのが僕の仕事だと言う。綺麗に整った黒髪にぴっしりと別れた前髪。見るからに几帳面そう。


「まぁだらしない隊長ですが、本日はお休みの為、更にだらしなくなってまして不本意ですが目を瞑って頂けると助かります。」


「そうそう。可愛い子が入ってくるって聞いて嬉しくて来ちゃったのよ。」


  ソールさんと話していると奥からすごくえろいお姉さん来た。親友のヴィーナもスタイル抜群だけどこのお姉さんはもっとすごい。ボンッキュッボン。抱きつきたい。綺麗なお姉さんは正直大好きだ。


「私はエリよ。貴女の教育係を担当するからこれからよろしくね。」


「ルナです。よろしくお願いします。エリさんすごい綺麗ですね!」


  話してるだけで色気がすごい。口元のほくろが更に色気を増加させている。綺麗すぎて思わずキラキラした目で見てるとふいに手をすくい取られて言われた。


「あら〜ありがとう。嬉しい!でもルナもすっごく可愛いわよ。うふふ。大きい目に薄く色付く頬、ぷっくりした唇。あぁ最高…」


  エリさんは、うっとりしながら私の手をすりすりする。思わずびくっとしてしまう。手も可愛いわね、と言われ更に固まってしまった。


「あはははっ!!ルナ気をつけた方がいいぞ。」


「…気をつけた方がいいって何にですか?」


  隊長から告げられた言葉に思わずきょとんとしてしまう。こんな綺麗な見た目に反してエリさんはとんでもない人なのだろうか。先程の行動でうすうす気付いてしまった様な気もしないでもない。


「あぁ♡その顔も可愛いわぁ。お姉さんが食べちゃいたい。」


「た、たべちゃう?エ、エリさん??」


「エリは可愛い女が好きだからなぁ。あはは。」


「あははじゃないですよ!助けてくださいー!」


  笑い続ける隊長に助けを求める間エリさんに体中をまさぐられる。恥ずかしいからやめてくださいと言ってもなんか余計に興奮したみたいで息遣いが荒くなるエリさん。でもエリさんは先輩なので強く出れない。


  無駄な抵抗をしながら上着をぬがされかけた所でソールさんにげんこつを食らってエリさんは悔しそうに離れていった。ほっと息をつく。あと少しだったのに、なんて怖い言葉が聞こえてきてゾワゾワした。私、この先やっていけるのか。


「ったく、うちの隊の人間はしょうもない。」


  眼鏡をクイっとあげため息をつくソールさん。まともな人がいてよかった。本当によかった。

  乱れた上着を整えていると隊長が言った。


「他の奴とはまた近い内に紹介するからな。グダグダな紹介になっちまったが、改めてルナ、よろしくな!」


「はいっ!よろしくお願いします!」


  人の良い笑顔が素敵な隊長。しっかり者のソールさん。綺麗な変態お姉さん(失礼)のエリさん。まだ3人にしか会えてないけどエリさんの奇行は置いといて、良い人達そうだ。早く一人前になれるように頑張ろう。



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